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【特集】イグニス Research Memo(4):17年9期は市場が拡大しているオンライン恋愛・婚活サービス「with」が伸張

イグニス <日足> 「株探」多機能チャートより

 

■決算動向

1. 2017年9月期決算の概要
イグニス<3689>の2017年9月期の業績は、売上高が前期比0.1%減の5,577百万円、営業利益が同94.3%減の83百万円、経常利益が同95.1%減の71百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が35百万円(前期は1,087百万円の利益)と売上高はほぼ横ばいで推移する一方、利益面では積極的な事業投資により大幅な減益となった(税金費用の影響により最終損失を計上)。また、期初の売上高予想(利益予想は開示なし)に対しては下回る着地となっている。

売上高は、市場が拡大しているオンライン恋愛・婚活サービス「with」(コミュニティ)が大きく伸びたものの、「ぼくとドラゴン」(ネイティブゲーム)が、消費税にかかる特殊要因の影響※もあり、前期比で縮小したことから売上高全体ではほぼ横ばいの水準にとどまった。なお、「ぼくとドラゴン」については、特殊要因の影響を除いても、前期比で若干落ち込んでおり、期初予想を下振れる原因にもなっている。もっとも、リリースから3年目を迎えたことを勘案すれば、高い業績水準(安定運営)を維持していると評価するのが妥当だろう。また、「メディア(その他)」が伸びているのは、主に「U-NOTE」の伸びによるものである。

※ネイティブゲーム運営の子会社が消費税の免税事業者から課税事業者に変更(消費税分が売上高に影響)したことが約373百万円(試算ベース)の減収要因となった。したがって、その影響を除けば、売上高全体では実質増収と言える。


利益面では、積極的な事業投資を実施したことにより大幅な営業減益になるとともに、税金費用の影響で最終損失を計上した。特に、「with」を中心とした広告宣伝費の増加(前期比445百万円増)、新プロダクトや新規事業の開発・立ち上げに向けた研究開発費(同363百万円増)、体制強化に伴うオフィス増床関連費用の発生などが利益水準を引き下げた。もっとも、期初時点において新規投資に合計15億円(目安)を予定していたことから、意欲的な事業投資計画をやり切ったという見方ができる。

財政状態については、総資産が「営業貸付金」の増加により前期末比45.2%増の6,291百万円に増加したが、自己資本も新株予約権が行使された(約18億円の資金調達)ことにより同66.4%増の4,046百万円に拡大したことから、自己資本比率は64.3%(前期末は56.1%)に改善した。したがって、資本増強を図りながら、将来に対する事業投資を実施したものと評価できる。なお、「営業貸付金」が大きく増加(前期比1,216百万円増)したのは、事業投資としての側面が強いもののようだ(現時点での開示は控えている)。

2. 事業別の業績及び活動実績
「コミュニティ」の売上高は、前期比約6.2倍の848百万円と大きく拡大した。2016年9月期の第4四半期から本格的に立ち上がってきたオンライン恋愛・婚活サービス「with」が、外部要因(市場全体が拡大傾向にあること)や内部要因(心理学を活用して最適な男女のマッチングを目指した新機能「超性格分析」による差別化や継続的なイベントの実施等)により順調に伸びてきた。また、国内SNSランキング(for iphone)でも10位台に定着しており、累計ダウンロード数は50万DLを超えている。同社は、市場の拡大とともに、上位収斂の傾向がみられるなかで、まずは他社との差別化や積極的なプロモーションにより、会員を囲い込む戦略を描いているようだ。

「ネイティブゲーム」の売上高は、前期比15.9%減の4,247百万円と縮小した。前述のとおり、消費税にかかる特殊要因を除いても、前期比で若干落ち込んでいる。ただ、リリースから3年目を迎えたことや、広告宣伝費の配分を「with」中心に振り向けたことによる影響を勘案すれば、高い業績水準(安定運営)を維持しているとの見方が妥当だろう(特に、利益貢献の面では、想定どおりの役割を果たしたものとみられる)。累計ダウンロード数も350万DLを超えてきた。一方、新タイトル「GK(コードネーム)」改め「メガスマッシュ」については、研究開発費をかけて開発を進めてきており、2017年12月18日に事前登録を開始し、リリースに向けて最終段階を迎えている。最終的な詰めに時間を要しているのは、より成功確率を高めるための最終調整を図っていることが理由と考えられる。

「メディア(その他)」の売上高は、前期比8.6%増の481百万円と小規模ながら伸長した。ビジネスパーソン向けメディア「U-NOTE」に加え、新たに立ち上げた転職メディア「U-NOTE.CAREER」との相互送客等により着実に伸びている。また、中長期的な成長ジャンルとして、IoT(ライフハック事業)並びにVR事業等への積極的な投資を行っており、新規プロジェクトの開発(複数のプロジェクト)を進めている。その中でも、フード関連の「TLUNCH」サービス(ライフハック事業)やVRアイドルプロジェクト(VR事業)が先陣を切って立ち上がってきた。

以上から、「中期経営計画の実現を目指した事業投資の年度(事業ポートフォリオの創造元年)」と位置付けた2017年9月期の業績を総括すると、利益水準は一旦大きく後退したものの、新規事業の立ち上げを含め、幅広い分野への事業投資を実施し、今後の成長に向けた事業基盤(成長の種まき)が形になってきたことについては一定の成果を残したものと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《TN》

 提供:フィスコ

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