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【特集】「トランプ減税」成立、そしてNYダウ“3万ドル”への道が見え始めた―― <株探トップ特集>

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

―米中間選挙視野に株高政策、インフラ投資への関心高まる―

 米株式市場のブル(強気)相場が続いている。NYダウ は上値追いを続け2万4800ドル近辺の史上最高値圏で推移。低金利のなか、企業収益の拡大が株価を押し上げる好循環状態にある。その米国市場に強力な追い風が吹き始めた。市場の期待を集めた米税制改革法案が20日、米議会で可決された。大型の「トランプ減税」を実現する米税制改革はニューヨーク市場の一段の株高を促し、新年も世界の株式市場の牽引役となりそうだ。

●トランプ政権初の大型成果、自社株買いや増配の活発化要因に

 米株式市場は強烈な上昇相場の真っ只中にいる。年初2万ドル割れの水準にあったNYダウは2万5000ドルに接近。年初からの上昇率は20%を超えている。ハイテク企業が多いナスダック総合指数も今月18日には一時、初の7000台を突破するなど、FAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの持ち株会社アルファベット)と呼ばれる大手IT企業を中心とする強気相場が続く。

 こうした状況下、市場の注目を一身に集めてきたのが、米税制改革法だ。同法案は、難産の末、上下両院で可決され成立する見通しとなった。米国では約30年ぶりとなる税制の抜本改革が実現し、トランプ政権の発足から1年近くがたち、ようやく初の大型公約が果たされる。

 税制改革法は10年間で1.5兆ドル(約170兆円)の大型減税を実現する。具体的には、法人税率は35%から21%に引き下げられ、個人所得税の減税も行われる。また、海外子会社からの配当課税も廃止となる。この米税制改革により「企業減税で1株当たり利益は引き上げられ、余剰資金は設備投資のほか自社株買いや増配に向かう」(市場関係者)との期待が強い。

●米国の銀行や小売りなど内需系企業へ恩恵大

 ただ一方で、大型減税は財政赤字を拡大させるとの警戒感も強い。実際、米10年債利回りは20日には一時2.5%と9ヵ月ぶりの水準に上昇した。これは、米国の財政赤字拡大を警戒したものとの観測がある。また、「トランプ減税」の実現で、当面の期待材料は出尽くしとの声も出ている。

 それだけに、今回の米税制改革をどう評価するかは重要だ。「米大手企業の業績は、18年は10%前後の増益も期待できるだろう。そこへ自社株買いや増配の活発化が見込める。新年も米国の株高は期待していいと思う」とフィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は指摘する。今回の米税制改革の恩恵を享受するとみられるのが、米国の内需型企業だ。大手IT企業などグローバル企業は、すでに実効税率の引き下げ方策を進めているが、小売りや消費関連などの企業は今回の減税がフルに寄与すると見られる。米ホームセンター大手のホーム・デポ、大手小売りのウォルマート・ストアーズのような消費関連企業やAT&Tのような通信株、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースのような銀行などへの追い風は強いと見られている。

●米インフラの老朽化は深刻、1兆ドル投資の公約に現実味

 では、米税制改革が実現した後のトランプ政権の次の焦点は何か。市場の関心は、トランプ政権が政権公約に掲げたインフラ投資に向かっている。10年間で官民合わせて総額1兆ドル(約113兆円)の投資が打ち出されており、新年1月の一般教書演説の前にインフラ投資計画が発表されるとの観測もある。

 第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「計画が1月に発表されるかは分からないが、少なくとも年前半には公表されるだろう。米国の道路・橋などインフラは老朽化が進んでおり3兆~4兆ドルの投資が必要とも言われている。1兆ドルという数字は、過大とは言えず計画には実現性はある」と評価する。もっとも、「インフラ投資のような公共投資は民主党が賛成し、小さい政府志向の共和党は反対することもあり得るだけに、ねじれが生じる可能性も」と言う。米インフラ関連では、キャタピラーなど建機関連株やUSスチールのような鉄鋼株、マーティン・マリエッタ・マテリアルズのような建築資材関連株が注目されている。

●日本のメガバンク、機械、素材株にも追い風

 さらに18年の米政治の最大の焦点は11月に実施される中間選挙だ。トランプ政権への支持率が低迷する米共和党は劣勢にあり、今後、今回の大型減税の実現などの実績を前面に押し出し、どこまで支持を回復できるかが焦点となる。米株式市場も中間選挙を視野に入れた展開が予想されるが、「米共和党は選挙を意識した株高政策を取ることが予想される。18年のNYダウは2万7000ドル前後までは上昇しておかしくない」と庵原氏は予想する。また、桂畑氏は「大型減税などによる景気拡大で、NYダウは3万ドルを意識するような展開も期待できるのではないか」という。

 18年も米株高が予想されるなか、東京株式市場では三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や三井住友フィナンシャルグループ <8316> のような大手銀行株、コマツ <6301> や日立建機 <6305> 、ファナック <6954> やSMC <6273> といった設備投資に絡む機械株、信越化学工業 <4063> 、新日鉄住金 <5401> 、三菱マテリアル <5711> のような化学、鉄鋼など素材株を中心に追い風が吹きそうだ。

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