市場ニュース

戻る
 

【特集】2017年“最も値上がりした商品”は? マーケットの1年を振り返る <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―金5.7%、原油3.7%上昇、今後の展望と解説―

 2017年の東京市場の商品先物価格はパラジウムが前年比43.2%上昇し、大幅高となった。独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受けて欧州市場でディーゼル車からガソリン車へのシフトが進み、自動車触媒需要が増加したことに加え、世界最大の生産国であるロシアの供給伸び悩みで大幅な供給不足となっていることが支援要因になった。利食い売りに対する警戒感もあるが、供給不足が続く見通しであり、高値圏での推移が見込まれる。

 一方、欧州のガソリン車へのシフトで自動車触媒需要が伸び悩んだプラチナは、中国の宝飾需要の伸び悩みも弱材料となって2.6%下落した。ただ、南アフリカのプラチナ鉱山会社の再編が伝えられており、今後のリストラが供給減少につながると下支えになる。

 今回は2017年の商品市場を振り返るとともに、今後のポイントを解説する。

◆(表1)-2017年の商品相場 騰落率 (12月20日現在)
東京商品(先限)
       2016年末   12月20日(夜間終値)  前年比
金       4,330       4,577        +5.7 %
銀       60.9       59.3        -2.6 %
プラチナ    3,388       3,325        -1.9 %
パラジウム   2,513       3,599       +43.2 %
原油     40,610      42,130        +3.7 %
ガソリン   55,040      58,730        +6.7 %
灯油     49,810      57,100       +14.6 %
ゴム      263.9       208.0       -21.2 %
コーン    21,700      21,620        -0.4 %
大豆     51,630      46,650        -9.6 %
小豆     11,890      13,950       +17.3 %
コメ     12,850      14,900       +16.0 %


●2017年の工業品はゴムが乱高下

 工業品で貴金属は東京金が5.7%上昇、銀が2.6%下落した。金は北朝鮮情勢に対する懸念などを受けて投資資金が流入したことが支援要因となったが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しを受けて年末にかけて上げ一服となった。2018年は米FRBの3回利上げが予想されており、ドル高が進むと、金の圧迫要因になる。ただ、米国の長短金利のフラット化で数年後の景気後退が懸念されている。また、北朝鮮情勢や米大統領選にロシアが干渉したとの疑惑、英国の欧州連合(EU)離脱交渉などでリスク回避の動きが出ると、下支えとなる。

 一方、銀は米FRBの利上げ見通しに加え、中国経済の減速に対する懸念が出たことが圧迫要因になった。ただ、米税制改革の成立が見込まれており、来年の米経済が好調に推移すると、工業用需要の増加が下支えになろう。

 原油・石油製品は軒並み上昇した。石油輸出国機構(OPEC)など産油国の協調減産を受けて需給均衡化が見込まれることが支援要因になった。米シェール企業の生産増加が上値を抑える要因だが、需給改善が続くと、上値を伸ばすとみられる。

 ゴムは21.2%下落と大幅安となった。中国の新車販売増加や産地の天候不順を背景に投資資金が流入し、年初に急騰し、2011年9月以来の高値366.7円をつけた。しかし、高値が荷を呼び、供給過剰に転じたことから178.8円まで下落した。ただ、上海期貨取引所のゴム在庫の増加が一服しており、需給が改善すると底入れし、もみ合いに転じることになろう。

●農産品は国内商品が堅調

 農産品はコーン、大豆がシカゴ市場の上値の重さや円安一服を受けて下落する一方、小豆、コメの国内商品が堅調となった。コーン、大豆は米農務省(USDA)報告で在庫が安定していることが上値を抑える要因である。一方、小豆は17.3%上昇し、2016年の安値7,560円からほぼ2倍となる1万4,050円まで上昇した。2016年は台風被害、2017年は生育の遅れなどが支援要因となって上値を伸ばした。

 また、コメも16.0%上昇し、2014年の安値7,230円から1万4,920円と2倍となった。東日本の日照不足で生育が悪化したことや、飼料用米への転作推進が価格を押し上げた。転作推進が続くと来年の支援要因になる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均