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【特集】金、下落局面“瀬戸際”に―米税制改革進展など圧迫要因に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―北朝鮮ミサイル発射をマーケット無視、1300ドル突破できず地合い軟化―

 金は1,300ドルを突破できずに地合いを緩めると、米税制改革の協議進展などが圧迫要因となって調整局面を迎えた。米上院で2日、税制改革法案が可決され、今後は下院が承認した法案との一本化作業が進められる。法人税減税の実施時期が異なるなど相違点が多く、調整が難航する可能性があるが、先行き期待が高まるようなら金の圧迫要因になる。

 一方、北朝鮮が11月29日にミサイルを発射し、大陸間弾道弾(ICBM)火星15で米全体を射程に入れたと発表したが、金市場の反応は限られた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しも下げ要因であり、金は来年にかけ、このまま下落局面に転じるのかどうか、今後のポイントを確認したい。

●米FRBの利上げ見通しも長短金利差は縮小

 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長候補であるパウエル理事は上院銀行委員会で開かれた承認公聴会で、FRBは12月に利上げに踏み切る公算が大きいとの見方を示した。2月3日に任期を迎えるイエレン米FRB議長も議会証言で緩やかな利上げが適切との見方を示しており、ドル高が進むと、金の圧迫要因となる。

 ただ、米債券市場で長短金利差が縮小し、米10年債と2年債の利回り差は9年ぶりの低水準となった。米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、長短金利差の縮小は成長が鈍化するとの見通しが出ていることを示し、利上げペースに影響を及ぼす可能性があるとした。今回は米FRBの利上げ見通しを受けて短期金利の上昇が目立っており、米税制改革の協議進展にもかかわらず、長期金利が上昇しなければドルの上値が抑えられ、金は底堅く推移する可能性が出てくる。

●ロシア疑惑や北朝鮮攻撃の可能性などが波乱要因

 フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の報道を受けてロシアが米大統領選に干渉した疑惑に対する懸念が再燃した。フリン氏はトランプ氏自身が大統領に就任する前にロシア側と接触するよう指示したと証言する意向を持っているとされた。今後の捜査が大統領側近に及ぶとドル安に振れ、金にヘッジ買いが入る可能性が出てくる。

 一方、北朝鮮の核ミサイル問題で、一部の米議員からミサイルが完成する前に軍事行動に出るべきとの声が上がっている。米上院軍事委員会のメンバーである共和党のリンゼー・グラム上院議員は、米国防総省に対し、配偶者や子供など在韓米軍の扶養家族を退避させるよう求めており、クリスマス休暇に向けて大量に帰国者が出ると攻撃に対する懸念が高まる。

 目先は国連のフェルトマン事務次長(政治局長)が8日まで北朝鮮を訪問し、平壌で政府高官と会談することが焦点である。今回の訪朝は北朝鮮からの提案であり、核ミサイル問題で対話に向けた動きが出るようなら金の圧迫要因になるとみられる。

 また、他の波乱要因として、英国の欧州連合(EU)離脱交渉や、ドイツの連立交渉などがある。特に英国のEU離脱交渉ではアイルランド国境問題の協議でつまずき、合意が先送りされており、14~15日のEU首脳会議で通商協議開始に向け準備する時間がなくなるとの懸念が出ている。離脱まではあと1年3ヵ月しかなく、新しい通商協定や移行期間についての合意のないままの離脱となれば金融市場の混乱につながる可能性がある。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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