【特集】トヨタの本気が“EV新次元相場”の幕を上げる―特選関連株リストアップ <株探トップ特集>
カワタ <日足> 「株探」多機能チャートより
―パナソニックとの巨人連合が意味するもの、絶大インパクトに周辺銘柄が走り出す―
師走相場もあっという間に折り返し地点に到達し、年内残すところあとわずかとなった。日経平均株価の上値は重く2万3000円台へのチャレンジがなかなか通らない状況にあるが、日替わりとはいえ個別材料株物色意欲は旺盛であり、いったん下げても株価の復元力は強い。年末年始の物色テーマとして、改めて脚光を浴びているのが電気自動車(EV)とその基幹部品である車載用2次電池関連だ。特に、これまで材料株相場を牽引する華であったリチウムイオン電池関連だけでなく、次世代電池として注目される 全固体電池関連に対してもマーケットの視線が熱を帯びている。
●トヨタとパナソニックの異色提携で変わる世界
今週13日、トヨタ自動車 <7203> が動いた。パナソニック <6752> とEV向け電池事業において協業を進める方向にあることを正式に発表したのだ。両社社長が出席のもと都内で記者会見を開き、新型電池の共同開発に乗り出す包括的な協力関係を構築する旨を示し、株式市場もこれをポジティブに受け止めた。
EVの開発競争は世界的に激化しており、自動車メーカー単独ではたとえトヨタといえども勝ち名乗りを上げることは難しい状況にある。動力源としてクルマの性能を左右する電池分野で優位を築くために、高いノウハウと量産技術を有するパナソニックと連携するしかないとの結論をトヨタは出した。パナソニックは米テスラモーターズと早くから提携関係にあり、米ネバダ州に世界最大のリチウム電池工場「ギガファクトリー」を稼働させている。その実力は半端なものではないからだ。
トヨタが発売するプリウスは既に4代目となっているが、いずれもテスラのような円筒形ではない「角形」の電池を使用している。今後のEV開発でもこれまでのプリウスでの蓄積を生かすべく、角型電池をパナソニックと開発していく方針にある。パナソニックにしてもトヨタとの提携は業容拡大のチャンスとなる。今回の発表日以前からパナソニックの株価は強含んでいたが、記者会見後は一段と買いに厚みが増し、14日まで6日続伸と強さを発揮した。
●“オールジャパン”体制で世界と対峙する
トヨタは元来、自動車の環境規制強化を背景としたエコカーへの取り組みでは、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)など電動車の需要すべてに対応した全方位型の注力姿勢を明示してきた。会社側では「世界的視野でみた顧客の全ニーズに対応したすべての選択肢を残すことが前提」(広報部)としており、そのコンセプトは今も変わらない。
しかし、世界最大の自動車市場である中国では国家戦略としてEVに焦点を絞っているほか、欧州も独フォルクスワーゲンをはじめEVシフトの動きが鮮明であり、この流れを重視するよりないというのが本音であると思われる。同じ自動車業界のなかでライバルと手を結ぶことも厭わない。ホンダ <7267> などと協業体制を敷き“オールジャパン”で世界と対峙する構えだ。
トヨタは2030年に電動車の販売を550万台に引き上げると報じられているが、この数字自体は流動的で、会社側への取材では「世界の電動車販売台数の半分を当社が占めるという計画を立てている。30年の世界の販売台数が1100万台と試算しており、その半分のシェアをとれば550万台ということになる」(同)としている。つまり、電動車の普及が想定以上に早く、30年の世界販売台数が仮に1500万台であれば、そのうちの750万台をトヨタのエンブレムが入った電動車にするという考えだ。そこには業界の盟主トヨタの並々ならぬ“決意”が感じられる。
トヨタの電動車販売は今年1~12月で147万台となる見込みだが、このうちHVが142万台を占める。残りの5万台がPHVだ。つまり電動車とはいっても、EVはまだゼロの状態である。しかし、それだけに同社がEVシフトの動きを強めた場合の伸びしろは大きく、関連企業に与えるインパクトも膨大なものとなる。パナソニックにとどまらず、電池関連やその周辺企業の株価は強い刺激を受け、中には株価の居どころを大きく変えてくる銘柄も少なからず出てきそうだ。
●リチウム電池と全固体電池関連でひしめく有望株
リチウムイオン電池関連銘柄として、2次電池メーカーではジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> が本命だが、自動車用電池で実績の高い古河電池 <6937> の値動きに魅力がある。
正極材では田中化学研究所 <4080> [JQ]や新日本電工 <5563> 、戸田工業 <4100> 、負極材では日本カーボン <5302> や昭和電工 <4004> などが注目される。セパレーターではWSCOPE <6619> や旭化成 <3407> のほかニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]などが商機を捉えている。リチウム電池の寿命を大幅に向上させる技術を持つ安永 <7271> も折に触れ人気化する常連銘柄だ。このほかでは、振動試験装置や計測器を手掛けるIMV <7760> [JQ]も注目度が高い。
また、次世代のEV向け2次電池として注目される全固体電池 は、現行のリチウムイオン電池では液体である電解質(電解液)を固体材料に変え、部材すべてを固体で構成するものだ。液漏れや発熱に伴う発火の危険性を固体化することで解決し、航続距離の大幅な延長やフル充電時間の短縮も実現する。トヨタも東京工業大学と連携して学術研究を進捗させている段階にある。
同関連銘柄としては、全固体電池実用化の前段階でリチウムイオン電池の性能向上に効果があるガラスセラミック素材活用の添加剤を開発しているオハラ <5218> や、固体電解質分野での研究開発に注力しているカーリットホールディングス <4275> 、全固体電池を構成する層構造体の製造方法に絡む特許を取得している新東工業 <6339> などもマークされよう。
●EV関連とっておきニューフェース5銘柄
さらに、年末年始相場でEV関連として改めてリストアップしたい銘柄として以下の5つを挙げる。
【カワタは“EV大国中国”がバックに】
まず、カワタ <6292> [東証2]が調整一巡から1000円近辺をターニングポイントに出直る動きをみせており、要注目といえそうだ。15日の相場でも全般地合い悪のなか約7%高で着地する強さをみせた。同社はプラスチック成形機の周辺機器を手掛け、自動車や電子部品関連の需要が高水準で18年3月期は営業54%増益見通しと業績回復色が強い。EV大国を目指す中国のメーカーからEV向け電装品の受注が増勢一途にある。
【シライ電子は隠れトヨタ関連で変身余地】
シライ電子工業 <6658> [JQ]も売り物がこなれており、再浮上のタイミングが近い。同社は任天堂 <7974> 関連に位置づけられているが、実はトヨタ関連でもある。トヨタはマツダ <7261> やデンソー <6902> と共同でEV開発会社を設立する計画にある。EVは電子部品の塊が走っているようなもので、シライ電子はデンソーを主要販売先としていることから、プリント配線板メーカーとして強力なフォローの風を受けることになる。
【ワイヤレス給電で期待高まるOKAYA】
また、岡谷電機産業 <6926> にも意外性がある。同社は電子機器のノイズ対策コンデンサーや表示機器を製造するが、競争力の高さは世界的にも屈指。急速充電器やEV向けワイヤレス給電用共振コンデンサーに期待が高まっている。業績は17年3月期の営業35%増益に続き、18年3月期も34%増の6億5000万円を予想するなど利益拡大基調が鮮明だ。
【EV軽量化で商機到来のオーネックス】
オーネックス <5987> [JQ]は自動車向けや産業機械部品の金属熱処理加工を展開するが、その技術力はEV普及時にも生かされそうだ。EVはその航続距離の短さがネックとなっており、これまでトヨタが消極的だった理由のひとつもそこにある。航続距離にダイレクトに影響を与える“車体軽量化”は今後大きな課題となっていく。そのなか、同社が確立しているガス軟窒化処理法は部品の軽量化、小型化に対応した技術で注目されている。
【A&Dは次世代電池の評価試験で飛躍】
電子天秤のトップメーカーであるエー・アンド・デイ <7745> も高度な技術力を有し、EV関連の穴株としてマークしたい。次世代電池の評価試験装置を手掛け、特にコーティング材料の特性評価で強みを持つ。業績上方修正を受け11月9日にマドを開けて買われたが、その後も強い展開で売り物を吸収している。700円近辺にある25日移動平均に接近してきたタイミングで、ここは買い場とみられる。
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