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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「2017年の“大トリ爆進株”を探せ」

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

●依然として打たれ強いトランプ政権

 米アラバマ州の上院補選は民主党候補が勝利し、これによって米上院は共和党が51議席、民主党が49議席とその差2議席となりました。しかし、もともと議席数が僅差の情勢には変化がなく、これで法案通過に不透明感が強まったから相場は下げるという論理も、取ってつけたような話。基本的にトランプ政権は打たれ強いのです。日米株式市場への影響は軽微でしょう。

 また、今週は欧米の金融政策に世界の耳目が集まるところですが、今回のFOMCでの利上げはほぼ100%織り込み済み。会合後のイエレン議長の会見や声明文、ドットチャートなどを通じて来年の利上げペースをどう読むかに市場関係者の神経が注がれることになります。いずれにしても東京市場では明日(14日)の地合いに反映されることになりますが、来年の利上げペースについての思惑で今のトレンドそのものが崩れるようなことはないはずです。仮に為替を絡め全体株価が下に振られるようなことがあったとしても、短期的で尾を引くようなことはないと考えます。

 FOMCに半日遅れてのECB理事会とドラギ総裁の会見にもマーケットの視線が向けられています。ただし、既に来年1月から資産買い入れ規模を月額600億ユーロから300億ユーロに半減することが決定されていることから、その意味で今回はマーケットへの影響力もそれほど高くないといえそうです。

●メガバンク主導相場、その先に見えるもの

 では日本はどうでしょうか。現在も黒田日銀総裁はCPI目標2%の命題達成に向け金融緩和環境に肯定的な姿勢を変えていません。国債買い入れの継続に支障が生じる懸念は小さいとの見方を強調しており、当面このスタンスが変わることはないと思われます。来年4月に任期満了を迎えますが、先の総選挙を経て安倍1強体制が構築されている現状では、アベノミクスの立役者である黒田氏再選の可能性は高い。そうなれば株式市場にとって、来年もフレンドリーな環境が続く公算が大きいとみてよいでしょう。

 ただ、イールドカーブ・コントロールの10年債利回り0%誘導を若干引き上げるのではないかという思惑が海外筋から出ており、これが米金融株上昇に追随する格好でメガバンク株の物色人気の手掛かりとして今の相場に反映されています。これまでの地合いとはっきりとした変化が出たのは前日(12日)のことで、東証1部上場銘柄のなかで売買代金の1位と2位を三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> と三井住友フィナンシャルグループ <8316> が占めるという久々のメガバンク主導相場の様相を呈しました。

 メガバンクが上昇するのは海外投資家の資金の誘導先として良質であり、株式需給面でも個人投資家の信用余力が高まるなどプラス材料は多いのですが、その一方で、これまで相場浮揚の原動力であった東京エレクトロン <8035> など半導体関連からの資金シフトの動きを誘発し、日経平均株価の上値を重くしています。メガバンクと半導体セクターの値がさ株は一種のトレードオフの関係にあるのです。しかし前回も述べたように、目先はともかく半導体関連の戻り足は遅かれ早かれ期待できるとみています。その時がすなわち日経平均が2万3000円台を駆け上がる場面と言い換えてもいいでしょう。

●中小型材料株は波動をとらえる概念も必要

 12月初旬の主力株が波乱含みに推移するのを横目に、東証1部の小型株指数は11月中旬以降、新値圏に切り返すなど相対的に強い動きを示していました。東証2部指数は新値街道、ジャスダック、マザーズ市場も高値圏で売り物をこなす状況にあり、今年も材料株の回転商いが年末特有の風景となる可能性があります。また、12日から始まったIPOラッシュも中小型株にスポットが当たりやすい地合い演出に一役買いそうです。13日は佐川急便を傘下におくSGホールディングス <9143> が上場、これについては今年最大のIPOでしたが好調な滑り出しとなり、投資家心理に好影響を与える形となっています。

 ここからは実戦論になりますが、中小型株相場の心得としては機動的な売買を優先するということが挙げられます。中長期投資を行う場合でも、波動を捉えるという戦略を意識して加えることで勝利はより大きなものとなります。

 短期で値幅を出す銘柄については、時価総額の小さいものほど上ヒゲを形成しやすく、仮に需給相場に発展しても、実態の変化が誰にも見えるような材料が出ない限り必ず株価は調整局面に遭遇します。これは摂理です。ただし、株価を急騰させた実績は消えることはなく、その時にみせた瞬発力は当該銘柄に宿るDNAとして相場に記憶され、再び日の目を見るタイミングがどこかで訪れる。これについては、ほとんどのケースで当てはまります。

●IoT・AI時代到来で輝きを放った栄電子

 その観点から注目したいのが、10月4日配信の相場スクランブル「加速する材料株相場 秋高特選7銘柄」で再度出番のタイミングとした栄電子 <7567> [JQ]。同社株は翌10月5日から5営業日連続ストップ高の急騰劇を演じました。これには目に見えない力が働いたとしか言いようがありませんが、その時に上ヒゲでつけた1220円を頂点に株価は漸次水準を切り下げてきました。しかし、時価600円台はPER14~15倍で指標面でも自然体の水準であり、“再々度”株価に浮揚力が働きそうな場面といえます。IoT AI 時代の到来で電子部品商社にも光が当たり始めたのが2017年相場。同社株はその象徴となった銘柄として記憶に刻まれています。

●次第に本領発揮したレーザーテック、森組

 一方、最初は地味な動きでもファンドなどの特定筋の実需買いニーズがある銘柄は、次第にその本領を発揮します。良い例としては偶然に栄電子と同じ10月4日の当コーナーで取り上げたレーザーテック <6920> 。同社株は同日の終値が2271円で、ここから11月27日に3180円の高値まで大きく居どころを変えています。時価総額を考えれば急騰妙味はある程度限定される銘柄でしたが、その分だけ地に足の着いた上昇トレンドを構築する形となりました。

 レーザーテックは旺盛な半導体需要に支えられたトップラインの伸びが輝きを放っています。研究開発部門への資金投下に極めて積極的で、利益面では18年6月期は強含み横ばいを予想していますが、これは成長への布石として捉えられ、19年6月期以降の利益成長に期待がかかるところ。目先は上昇一服感がありますが、中長期的にみればここは踊り場で買いのタイミングを探る場面。レーザー技術は量子コンピューターに極めて関係の深い分野でもあり、近い将来は同テーマでの活躍も視野に入ってくる可能性があります。

 一方、内需株にも意外なところに変身株が潜んでいるものです。その好例として、11月1日配信の「“逆バブル崩壊”で走り出す『中小型株精選』」でエントリーした森組 <1853> [東証2]が建設株としては中長期ならぬ異例の“短中期”大化けを果たしました。

 森組は11月1日の終値が232円でしたが、直近で高値537円まで買われ、2.3倍強のパフォーマンスを実現しました。業績面では11月10日に、売上高は据え置きながら営業・経常・最終利益を増額修正しています。これは正直、推奨した側としては棚ボタ材料でしたが、仮に利益上乗せがなくても同社は国土強靭化に絡む優良工事会社で、低PER・高ROEが光を放っていた銘柄であり、見直し余地は十分だったと思います。株式需給面も枯れ切っていたことが、燎原の火のごとき上昇相場につながりました。

●大トリ候補として急浮上のSシャワー

 さて、2017年も大詰めを迎えていますが、大トリを担う新鮮な材料株候補は新興市場を含めた東京市場にまだ相当数眠っていると思われます。

 まず、スペースシャワーネットワーク <4838> [JQ]に上値の可能性が感じられます。同社は伊藤忠傘下の音楽チャンネル運営会社でCS放送やケーブルテレビに番組を提供しており、デジタル音楽配信が好調なほかライブイベントにも展開しています。17年4-9月期営業利益は前期比53%増の4億9000万円と絶好調、通期5億3500万円に対する進捗率は実に9割を超えています。また、同社に所属する横浜や茅ヶ崎出身者を中心に結成された6人編成のバンド「Suchmos(サチモス)」の人気がうなぎ上りで、株価も意外高の旋律に乗る可能性十分とみています。888円の高値抜けとなれば4ケタ大台を意識する展開へとチャンネルが切り替わりそうです。

●ナラサキ、グランディ、テクノHRも要注目

 また、中低位株人気も相変わらず健在であり、そのなか注目しておきたいのはナラサキ産業 <8085> [東証2]、グランディハウス <8999> 、テクノホライゾン・ホールディングス <6629> [JQ]の3銘柄。

 ナラサキは北海道を地盤とする三菱系の産業機械商社。需要拡大の続く半導体やFA関連機器など設備投資関連ニーズを取り込んでいます。北海道カジノ関連として注目され、新千歳空港周辺「臨空ゾーン」の開発推進も追い風です。また厳冬が予想されるなか除雪車を手掛けていることで、“大雪関連”として人気素地を持っています。

 グランディハウスは栃木県を中心とする北関東を地盤に戸建て住宅販売を行い、土地取得から造成・分譲まで一貫して展開するのが特長です。首都圏で展開する中古住宅販売も在庫拡充が進み収益に反映させています。PERはわずか8倍で18年3月期は年間配当を前期実績に2円上乗せ16円とし、配当利回り2.7%と高水準です。

 テクノホライゾンは光学機器を製造し監視カメラの開発・販売でも実績を重ねています。米国株市場ではエヌビディアが人工知能(AI)関連の申し子のような存在ですが、同社はエヌビディアのAIスーパーコンピューターモジュールに対応する組み込みプラットフォームの販売など、同関連株として存在感を高めています。

●全固体電池関連で再チャージのニッカトー

 テーマ株では自動車業界の盟主トヨタ自動車 <7203> の電気自動車(EV)への注力姿勢が明らかになるにつれ、改めてリチウムイオン電池や全固体電池などの車載用2次電池関連に光が当たりそうです。トヨタはエコカーについては燃料電池車も含め全方位的な構えをみせていましたが、ここにきてホンダ <7267> やパナソニック <6752> などと連携を強めるなど、EV普及に本腰を入れる姿勢に変化しています。

 関連銘柄として、既に動意しているニッカトー <5367> に注目。TDK <6762> がオールセラミック固体電池「セラチャージ」を開発したと発表して話題を集めましたが、同社は工業用セラミックス事業を主力とし電子部品向けなどで高水準の需要を確保しており、全固体電池関連株としてマーケットで強く認知された経緯があります。業績も2ケタ利益成長路線を走り、特筆に値する好内容。18年3月期は営業利益段階で前期比16.8%増の7億8000万円を計画しています。

 このほかでは、車載用電池を主力に展開する古河電池 <6937> やマグネシウム電池関連に位置づけられる藤倉ゴム工業 <5121> などは瞬発力の高い銘柄であり、いずれも調整十分の時価近辺は狙い目といえるかもしれません。

(12月13日記、隔週水曜日掲載)

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