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【特集】我が道行く産油大国ロシア、OPEC協調減産延長は早くも形骸化の兆し <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

―原油価格回復と過剰在庫解消道半ばも不協和音は止まらず―

●来年6月総会で協調減産は見直しの公算

 11月末に注目の石油輸出国機構(OPEC)総会が終了した。日量で約180万バレルの協調減産を2018年末まで延長することで合意に至った。減産を除外されていたナイジェリアとリビアについて、原油生産量の上限を合計で日量280万バレルとすることも決まった。内戦の影響で生産量が落ち着かなかった両国だが、最近では回復しつつある。11月に発表されたOPECの月報で、リビアの生産量は日量96万2,000バレル、ナイジェリアは同173万8,000バレルとなっている。リビアとナイジェリアが合意に加わったことで、協調減産は強化されたといえる。

 OPEC総会後の声明文で、協調減産の枠組みとなっている協力宣言(Declaration of Cooperation)の制度化に関する部分はあったものの、踏み込んだ内容はなく、OPECの将来像は具体化されていない。出口戦略に関する記述もなかった。目を引く部分はあまりなかったと言えよう。

 ただ、次回2018年6月のOPEC総会で、現行の協調減産の見直しが行われる可能性は高い。10日にクウェートのマルズーク石油相が発言しており、原油市場が均衡化を果たせば、OPEC加盟国や協調減産の協力国は前倒しで協調減産を終了する可能性があると述べた。同石油相は「できるだけ早期の合意終了を求める圧力がロシアからある」とも語っている。今回のOPEC総会でロシアは合意形成を遅らせており、来年末までの協調減産延長に無条件で合意していなかったと言える。OPEC総会の合意内容はすでに形骸化している。

●あらわになった産油国間の不協和音

 各国の認識に違いはあるとしても、原油価格の回復や世界的な過剰在庫の解消は道半ばである。それにも関わらず、ロシアができる限り早急に協調減産から抜けたがっているとクウェート石油相が明言したことに素直に驚く。協調減産を続ける以上は産油国の連携を強くアピールして、原油価格の回復を推し進めていくのが理想であると思われるが、OPEC総会が終わったばかりの段階で産油国間の溝があらわになった。マルズーク石油相のこれまでの発言からすると、おそらくクウェートも早期終了を支持しており、ロシアとクウェートの立場は比較的近いと思われる。

 本格化しつつある原油高基調に冷水を浴びせるロシアやクウェートの動きは理解しがたい。ロシア国内の石油企業から増産要請が強まっている可能性や、現状の価格帯に満足している可能性が連想されるものの、腑に落ちるような背景は見当たらない。協調減産の枠組みがよほど窮屈なのだろうか。

 サウジアラムコの上場成功を目指すサウジアラビアにとって、原油価格のさらなる上昇は必要不可欠だと思われるが、ロシアにとっては不要のようだ。サウジとロシアは経済的な結びつきを強めている反面、相容れない部分も残している。

 例年、1-3月期は石油製品の需要が落ち込む。北半球の暖房需要が伸びる反面、それ以上に自動車などの燃料需要が減少するためである。北海油田の主要なパイプラインが一部停止していることが供給不安を煽り、原油価格を押し上げているものの、季節的な要因と早期の減産終了観測は原油価格の上値を抑えると思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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