【特集】注目再び「子育て支援」関連株、“宝くじ”きっかけ関心高まる? <株探トップ特集>
JPHD <日足> 「株探」多機能チャートより
―待ったなし待機児童問題、3年後解消へ本腰―
少子化が進んでいるにも関わらず、一向に改善の兆しがみえない待機児童問題。社会全体で子育てを支援するという機運がさらに広がることが求められるなか、収益金の使い道を子育て支援に限定した宝くじが来春にも発売される見通しとなった。子育て支援および待機児童の解消は、政府が目指す「一億総活躍社会」の実現には不可欠な課題といえ、国策テーマに乗る子育て支援関連銘柄に再び関心が集まりそうだ。
●16年度末時点の待機児童数は2万3553人
高市早苗前総務相は7月28日の閣議後の会見で、「子育て支援くじ(仮称)」を来年4月中旬~5月上旬にも全国で発売すると発表した。各自治体が取り組む子育て支援策の拡充につなげることが目的で、売上金総額は40億円程度、当選金などを差し引いた収益金は16億円程度になる見込み。収益金は保育所や児童館の整備、子どもの医療費助成などの財源に充てるとされている。
待機児童の問題を巡っては、政府もさまざまな施策を進めているが、依然として深刻な状況が続いている。厚生労働省の調査によると、保育所に申し込みをしても入れない待機児童数は16年度末時点で2万3553人と2期連続で増加し、東京都など都市部を中心に受け皿の供給不足が目立っている。保育利用率は42.2%(前年は38.1%)と年々上昇してはいるものの、一方で産休や育休が終わり子どもを保育所に預けようと申し込みをする保護者も増えており、1~2歳児の待機児童数は全体の71.1%を占めている。
こうした状況を受けて安倍首相は5月31日、新たなプランに取り組むことを表明。「待機児童の解消に必要な約22万人分の予算を2年間で確保し、遅くとも3年間で全国の待機児童を解消する。さらに22年度末までの5年間で、女性就業率80%に対応できる約32万人分の保育の受け皿を整備する」と述べ、都市部における高騰した保育所の賃借料補助や大規模マンションでの保育所の設置促進などが掲げられた。「子育て支援くじ」が保育所増設などの呼び水となる可能性もあり、関連銘柄の動向からは目が離せない。
●JPHDは270施設を運営する大手
子育て支援施設を積極展開しているのがJPホールディングス <2749> で、6月末時点の運営数は計270施設(保育所182、学童クラブ71、児童館12、民間学童クラブ5)。また、新規開設・運営に関するコンサルティングなども手掛けている。足もと業績は18年3月期第1四半期の連結営業利益が2億3600万円(前年同期比3.4倍)と好調だが、当面の課題は他社と同様に保育士確保の問題。これに対応するため7月には、ネオキャリア(東京都新宿区)の保育関連転職サービス「保育ひろば」と業務提携した。
グローバルグループ <6189> [東証M]は6月1日時点で、計118施設(保育所106、学童クラブ・児童館12)を展開。中長期的に安定的な利用者が見込まれる首都圏を中心に年間15~20施設の新規開設を続ける方針であるほか、5月にはベトナムでの保育関連事業の本格進出を目指し同国に事業企画室を新設している。
●フィルカンパニーは空中保育施設を開設へ
これ以外では、パーソルホールディングス <2181> 、東海染工 <3577> 、ソラスト <6197> 、千趣会 <8165> 、ベネッセホールディングス <9783> なども保育所を運営。保育所の施工実績がある美樹工業 <1718> [JQ]や三井ホーム <1868> 、幼稚園や保育所で体育授業を指導する講師を派遣する幼児活動研究会 <2152> [JQ]、幼稚園や保育所の口コミサイトなどを手掛けるイトクロ <6049> [東証M]も関連銘柄として挙げられる。
また、保育所建設用地が不足するなか、フィル・カンパニー <3267> [東証M]は既存のコインパーキング上部を活用した空中保育施設の開設に乗り出している。
●ライクキッズネクスト、ニチイ学館にも注目
女性の就業率上昇で事業所内保育所のニーズが高まるなか、運営受託を展開しているのがライクキッズネクスト <6065> だ。企業・病院・大学などから受託している拠点は17年4月期末時点で165ヵ所、このほか認可保育園や学童クラブといった公的保育も151ヵ所で運営している。
今年に入って運営受託に乗り出す企業も増えており、JPホールディングスと資生堂 <4911> は2月に合弁会社「KODOMOLOGY」を設立したほか、ヒューマンホールディングス <2415> [JQ]は東京工業大学大岡山キャンパス内の学内保育所の運営を受託したのをきっかけに本格参入。ニチイ学館 <9792> は日本生命保険と保育利用基本契約を締結したことにより、18年度中に100ヵ所の開設を目指し準備を進めている。
株探ニュース