【通貨】為替週間見通し:ドルはもみあいか、米利上げ期待も国内政局流動化の懸念残る
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■主要中銀による早期利上げ観測で円売り強まる
先週のドル・円は上昇。主要国の中央銀行による早期利上げ観測が台頭し、リスク選好のドル買い・円売りが広がった。ドル・円は6月29日の欧米市場で一時112円93銭まで上昇した。ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁が「中立のFF金利水準(政策金利)は3%をやや下回る水準と認識」と述べたことや、米国の6月消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことなどがドル買いを促した。一部経済指標の改善を受けて米長期金利は上昇したことや、NY原油先物が堅調に推移したこともドル買い材料となった。
また、欧州中央銀行は資産購入規模の減額を近く検討する可能性があることや、英中央銀行、カナダ中央銀行による早期利上げの可能性が浮上しており、ユーロ、英ポンド、カナダドルに対する円売りが観測された。この動きがドル・円の取引にも波及したようだ。
6月30日のニューヨーク市場では、6月のシカゴ購買部協会景気指数が市場予想の58.0を上回る65.7に上昇し、3年ぶりの高水準に達したことや5月の米個人所得が予想を上回ったことから、ドルは111円台後半から112円60銭まで反発。112円43銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:111円13銭-112円93銭。
■ドルはもみあいか、米利上げ期待も国内政局流動化の懸念残る
今週のドル・円はもみあいか。7月2日投開票の東京都議会選の選挙結果や米金利見通しが、有力な手掛かり材料となりそうだ。東京都議選では小池百合子都知事率いる「都民ファーストの会」は過半数の64議席獲得の勢いと伝えられており、自民党(東京都議会自由民主党)は選挙前勢力の57議席を大幅に下回る40議席前後になる可能性があるとみられている。
加計学園問題や一部議員の問題ある行動・発言などに加え、防衛相が応援演説で自衛隊を政治利用した疑いがあることから、安倍政権への批判が一段と強まっていることが自民党苦戦の要因とされる。都議選で自民党が惨敗した場合、党内の不満が噴出し、政局流動化への懸念は高まるとみられており、都議選の結果次第でリスク回避的な円買いが広がる可能性は否定できない。
ただし、米国の金融政策を考慮すると、ドルは底堅い動きとなる展開も予想される。米連邦準備制度理事会(FRB)は6月13-14日の連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派寄りの方針を示しており、年内追加利上げ期待は後退していない。また、欧州中央銀行(ECB)、英中央銀行、カナダ中央銀行などの主要国の中央銀行は金利正常化(利上げ)に前向きな姿勢をみせており、日本との金利差拡大を意識した取引が増える可能性があることから、クロス円レートは円安方向に振れやすく、ドル高・円安の進行を促す可能性もある。
なお、米下院で可決された医療保険制度改革(オバマケア)の代替法案の上院採決の行方も注目される。減税などを柱としたトランプ政策に遅れが生じるとの懸念が強まれば、株安・ドル安の相場展開となる可能性がある。
【米6月雇用統計】(7月7日発表予定)
7月7日発表の6月雇用統計は、失業率4.3%(前回4.3%)、非農業部門雇用者数は前月比+17.9万人(同+13.8万人)、平均時給は前月比+0.3%(同+0.2%)と予想される。平均時給の伸びが鈍化するとインフレ進行の思惑は後退し、ドル売りが広がりやすい。
予想レンジ:110円50銭-113円50銭
《FA》
提供:フィスコ