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【特集】「整形外科を中心とする医療機器の将来展望は?」日本エム・ディ・エム、弘中俊行取締役に聞く!<直撃Q&A>

痛みを取り除き、機能を回復させる人工膝関節
 先進国を中心に世界規模で高齢者人口が増加するなか、医療現場での患者のQOL(生活の質)の向上実現が大きな課題となっている。そのなかで、整形外科分野を中心とした医療機器の果たす役割が重要度を増している。この分野に特化した医療機器の開発、製造、販売を事業領域とする日本エム・ディ・エム<7600>の弘中俊行取締役に、「医療に貢献する」企業としての将来展望について聞いた。

Q1 18年3月期の売上高が15年ぶりに過去最高を更新しますが、その背景は?

弘中 当社は、整形外科分野に特化した医療機器の会社で、扱っている商品は大きく分けて「 人工関節」、「骨接合材料」、「脊椎固定器具」の3分野があります。12年3月期を底に売上高が順調に回復しているのは、自社開発製品のラインアップを順次拡大してきたことで、北米や日本国内での販売が好調に推移しているためです。また、当社の特長として、米国のユタ州にOrtho Development Corp.(ODEV社)というMDMグループのメーカー機能を担う整形外科分野の医療機器の開発、製造、販売を行う子会社を保有していることが優位性発揮につながっています。

 主要品目別では、人工関節の北米や国内での高い伸びが牽引しています。さらに、国内では、昨年11月から新発売したセラミック人工骨の骨補填材「セラリボーン」も寄与します。

Q2 主力部門の人工関節分野の将来展望をお教えください

弘中 人工関節は、何らかの疾患によって、関節の機能が損傷を受け、その機能を回復するために人工の素材を使って置き換える製品です。この分野の市場は非常に大きく、日本で年1000億円、米国で同7000億円とされています。これに対して、伸び率は高いとはいえ、当社の現在のこの分野の売上高は日米合わせて100億円弱程度で、成長余地が極めて大きいのが特長です。今後も人工関節を注力分野と位置付けて成長を図っていきます。

Q3 骨接合材料の新製品導入を含めた今後の市場開拓・販売戦略は?

弘中 骨接合材料には、骨折した骨の固定を行うための体内に埋め込むスクリュー、プレート、髄内釘などがあります。既存の骨接合材料のプレートの長さや幅のバリエーションを増やすことによって、医師にとっての治療のオプションを広げるなどの付加価値を高める方向を中心に新製品開発を積極化しています。国内のこの分野の市場規模は500億円程度ですが、当社は40年を超え骨接合材料のビジネスを継続しているので、国内で約3000カ所の医療機関との接点をもっているなど顧客ベースは確立されています。人工関節の需要は大規模な病院に限定される面がありますが、骨折治療はそれに比べると患者数も多く、高齢化が進展するなかで骨接合材料の需要が増大する可能性があります。

Q4 脊椎固定器具の今後の展開についてお聞かせください

弘中 脊椎固定器具は、脊髄や神経を圧迫している椎間板や靭帯を取り除く手術を行うことにより不安定になった脊椎を矯正・固定するために使用する器具です。現在進行中の中期経営計画のなかで、注力製品分野として脊椎固定器具を位置付けて「IBIS スパイナル システム」という患者の負担が軽減される低侵襲で済む手術に対応した新製品を導入するなどして、約450億円とされる国内市場への浸透を図っていきます。

Q5 人工骨急拡大の牽引役が想定される骨補填材の新製品「セラリボーン」ですが、その特徴は?

弘中 昨年11月からセラミック人工骨の骨補填材「セラリボーン」を新発売しています。この商品は、日本特殊陶業<5334>の独自製造技術により良好な連通気孔構造を実現し、高い圧縮強度を持ちながら、移植母床に対してバランスの良い吸収性と置換性を併せ持つ骨吸収型の特徴があります。まだ、売上規模は小さいものの、人工骨事業の18年3月期の売上高については、2億2000万円(前期比91.7%増)と2倍近い急拡大を見込んでいます。

Q6 米国を中心とした海外での今後の展開についてお教えください

弘中 海外展開については、基本的に北米を中心に伸ばしていく方針です。中国などアジア地域も視野に入れていますが、足もとで大きな市場規模があり既にビジネスを展開しているわけで、成長の中心としては北米を考えています。米国での17年3月期の人工関節の売上高は、ドルベースで前期比17%増と高い成長実績となっており、人工股関節の成長が牽引役を担っています。今後も米国市場では、2ケタ成長率を目指していきます。

Q7 18年3月期の業績見通しの背景をお願いします

弘中 18年3月期の連結業績は、売上高148億円(前期比8.6%増)、営業利益22億円(同15.2%増)、純利益13億円(同15.0%増)を見込んでいます。成長を牽引するのは、製品別では人工関節や人工骨、市場別では米国が成長を牽引する見通しです。これにより、比較的高採算の自社ブランド製品の売上高比率が前期の87.5%から89.5%に上昇します。売上総利益の伸び率は10.2%を想定していますが、販管費の伸び率を9.0%とすることで、営業利益率は前期の14.0%から14.9%に改善されます。

Q8 中期的な経営計画、会社の将来像についてはいかがでしょうか

弘中 16年5月に、それまでの伊藤忠商事<8001>に代わって、日本特殊陶業との間で資本・業務提携を締結したことで、セラミック関連技術や金属の表面加工技術など、これまでと異なった分野での製品のアプローチができるようになりました。こうした技術は、手術後の完治までの期間や、リハビリ期間の短縮など治療成績の改善につながり、医療費の削減にも貢献できます。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(ひろなか・としゆき)
1986年4月、伊藤忠商事入社。2001年8月、デル社ビジネスセールス本部本部長。03年8月、同社エンタープライズ営業本部本部長。06年4月、米Dell社コーポレートディレクター。06年12月、レノボ・ジャパン社常務執行役員。09年8月、日本エム・ディ・エム取締役社長付営業担当。10年8月、同社取締役営業本部・ODEV担当。14年4月、日本エム・ディ・エム取締役営業管掌・経営企画・管理本部担当兼経営企画部長兼Ortho Development Corporation取締役(現任)。16年6月、同社取締役経営企画担当兼経営企画部長(現任)。

出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)

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