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【特集】「AI活用本格化の将来展望は?」FRONTEO池上成朝取締役副社長に聞く!<直撃Q&A>

青山ブックセンターで、AIブックコンシェルジュとして設置されたKibiro
 IoT(モノのインターネット)、自動運転、遠隔医療、ロボットなど、今後の成長産業を支えると同時に牽引役を担うのが人工知能(AI)だ。また、AIを導入することで、従来にない飛躍的な成長を探る動きも幅広い分野で活発化している。そこで、AIを活用したデータ分析など実用化の最前線に立つ企業FRONTEO<2158>の池上成朝取締役副社長に将来展望を聞いた。

Q1 FRONTEOについて、その概要を分かりやすくお教えください

池上 FRONTEOは、独自開発の国産人工知能エンジン「KIBIT(キビット)」を用いたデータ解析により、ビジネスの効率化やチャンスやリスク、予兆の発見など企業の課題解決をAIによって支援します。2003年8月に国際訴訟に必要となる情報の収集や調査・分析を行うeディスカバリ(電子証拠開示)や、デジタルフォレンジック(電子鑑識)を行う企業として設立し、現在、これらのリーガル分野でだけなく、ヘルスケア、ビジネスインテリジェンス、デジタルコミュニケーションとサービスの提供領域を広げています。2007年に東証マザーズ、2013年にアメリカのNASDAQに上場しています。

Q2 eディスカバリ事業の具体的な内容と、飛躍的成長が期待できる背景は?

池上 eディスカバリは、主にアメリカにおいて、企業が訴訟の当事者となった場合、争点となっている事柄に関わる資料の提示を互いに要求し、開示しあうことで、裁判の前に訴訟の勝ち負けがほぼ決まってしまうに等しい、重要かつ必要不可欠なプロセスです。FRONTEOは、このeディスカバリにおいて、企業が持つ電子メールや各種ファイルなど膨大なデジタルデータの中から、必要と思われる情報の収集・保全を行い、証拠情報の有無などを調査・分析することで、企業の訴訟を支援しています。

 今後、企業のグローバル化がさらに進展していくことは言うまでも無く、また海外では、自らの事業が有利に進められるよう、例えば、特許侵害訴訟による販売の差し止めなど、訴訟を戦略的に行うケースも見られています。アメリカでの訴訟の場合、日本企業やアジア企業は、言語の違いというハンディキャップを抱えています。FRONTEOは豊富なノウハウと日本語、中国語、韓国語、英語に対応できる「KIBIT」で国際訴訟を支援しています。eディスカバリの市場は、2015年に全世界で約72億ドルといわれており、2022年には210億ドルに達すると予測されています。FRONTEOは、国際訴訟支援と不正調査の分野において、世界中で6000件もの実績があり、今後もさらに業容を拡大していく予定です。

Q3  人工知能「KIBIT」の特徴について分かりやすくご説明ください

池上 「KIBIT」は、独特のアルゴリズムを持つ機械学習の手法である「Landscaping」と、リーガル分野で蓄積してきた「行動情報科学」を組み合わせて、 FRONTEOが独自に開発した日本発の人工知能エンジンです。その名前は、人間の心の「機微」(KIBI)と、情報量の単位である「ビット」(BIT)に由来し、「人間の機微を理解する人工知能」を意味しています。

 今日言われている「人工知能=膨大なデータを学習しなければいけない」とは異なり、少量の教師データで解析を行うことができるため、導入や実用が容易であることが大きな特徴です。例えば、わずか30件から100件の電子メールを教師データとして学習させるだけで、何万件もの電子メールから、見つけ出したい内容のメールを浮かび上がらせることができます。重要な文書かどうか、テキストを見て判断する人の暗黙知や感覚をKIBITが学ぶことで、人に代わって、判断や情報の選び方を再現することができます。解析の速度は最大で人の4000倍にも達し、疲れや判断のブレが無い、高いクオリティーで結果を出していきます。

Q4 「KIBIT」のヘルスケア分野での具体的な活用例と将来展望をお願いします

池上 FRONTEOは、ヘルスケア分野においてKIBITを活用し、1.患者の様態変化を逃さない「気づき」、2.患者の疾患の状態を客観的に見る「判断」、3.医師の診断をサポートするデータを提示する「診断支援」の3つのジャンルでの開発が進んでいます。1.では、NTT東日本関東病院において「転倒転落予測システム」、2.では、AMED(日本医療研究開発機構)の公募事業に決定し、慶応大学や複数の企業と推進するPROMPT(未来医療機器開発プロジェクト)、3.では、がん研究会と進める「がん個別化医療AIシステム」や、愛知医科大学との「疼痛診断支援AIシステム」など、医療の現場で多大な実績を持つパートナーとの共同開発を進めています。ヘルスケア分野は実用化までに様々なプロセスが必要となりますが、疾患や患者と向き合いながら効率的かつ効果のある治療に辿りつこうとする大きな潮流の中で、KIBITが活用される沢山の可能性が見出されています。

Q5 「KIBIT」のビジネスインテリジェンス事業での展開をお教えください

池上 KIBITは、ビジネスデータ分析支援システム「KIBIT Knowledge Probe」のエンジンとして活用され、幅広いビジネス領域、特に「ホワイトカラーの業務の効率化」に役立っています。例えば、営業スタッフがつける「営業日報」やコールセンターやお問い合わせメールに寄せられる「お客さまの声」、または人事担当者が記録している「面談記録」、これらの膨大な記録の中には沢山のビジネスのチャンスやリスク、ピンチが込められていますが、いわゆる「目利き」の人が記録を判断し、然るべき部署の担当者の手に渡ることで初めて活かされます。しかし現実には、その多くが活かされずに埋もれたままか、サンプルとして抽出された少ない記録で判断されているケースがほとんどです。

 KIBITは、これらの記録から「目利き」の人が選んだ文書を学習することで、全く同じような判断や情報の選び方を再現することができます。最近では、特に、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の実現に注目が集まっている金融機関や、HRTech(人事+テクノロジー)、RegTech(規制+テクノロジー)と言われる分野での活用機会が増え、早期かつ容易に導入ができ、簡単なトレーニングで運用が可能なうえ、コストも手頃な人工知能として、注目が高まっています。また、企業の製品開発の基盤となる知的財産の分野においても、特許調査に役立つ「KIBIT Patent Explorer」が化学や機械、電子部品などのメーカーで活用が広がっています。

Q6 「Kibiro」の特徴と現状の使用例、将来の展望についてお聞かせください

池上  人工知能搭載ロボット「Kibiro(キビロ)」の特徴は、直接の対話やスマートフォンによるチャットなどのやりとりによって得られたテキスト情報からユーザーの趣味・嗜好を学習し、人工知能「KIBIT」を通じて、ユーザーにぴったりのおすすめ情報を提供できる点です。

 ビジネス向けでは、利用される場面・場所に応じて接客や案内などを覚え、利用者を和ませるデザインと音声や身振り手振りのコミュニケーションにより、感情豊かな応対が可能です。個人向けでは、様々なやりとりを楽しめる他、コミュニケーションを通じた学習を重ねることにより、ユーザー自身も気づかなかった意外性のある答えを探してきてくれる頼れるパートナーに成長していきます。

 Kibiroの導入例として、書店に来店されるお客様に本のおすすめを行う「AIブックコンシェルジュ」としての利用があります(青山ブックセンター:2016年10~11月)。小説・ビジネス書の100冊の中からKIBITの解析技術を使い、お客様の嗜好に合った本を紹介しました。Kibiroにより、集客や本の購買につながる結果が出ております。また、岡山県のジャパンブルーでは本社での受付役を担当したり、Office24と共に受付用ロボットとしての展開も始まっています。

Q7 AI関連事業(全体)の中期的な売上高、営業利益の見通しはいかがでしょうか

池上 2019年度には、AI関連事業で約100億円を超える売上高と数十億円程度の営業利益の見通しを立てています。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(いけうえ・なりとも)
2003年にFRONTEOの前身であるUBIC入社。デジタルデータの不正調査を行うデジタルフォレンジックと訴訟における証拠開示を支援するディスカバリサービスの企画・営業を統括する。2007年、取締役副社長に就任(現任)。同年には米国法人の設立と米国におけるディスカバリサービスの提供を指揮。また、FRONTEOが独自開発した人工知能KIBITの活用分野の拡大を手がける。2015年設立の医療データ解析ソリューションを提供する子会社、FRONTEOヘルスケア取締役も兼任し、KIBITによる医療現場の環境改善、精神疾患診断の補助、がん個別化医療AIシステムの開発などを推進する。

出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)

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