【市況】国内株式市場見通し:FBI前長官証言とアップル開発者会議で潮目が変わるか、勢いづくか
先週の日経平均は大幅上昇。週末には2015年12月以来、約1年半ぶりに2万円の大台を回復した。週初は、米国、英国、中国が祝日による休場から海外勢のフローが限られるなか、こう着感の強い相場展開が続いた。また、北朝鮮の地政学リスクも手掛けづらくさせたほか、メイ英首相は欧州連合(EU)離脱交渉について、「必要ならば合意なしに離脱する用意がある」と表明したことをマイナス材料として捉える動きもあった。これにより、日経平均は25日線までの調整をみせた。
しかし、6月に入ると機関投資家とみられる資金流入が活発となり、1日の日経平均は209円の上昇をみせて、直近4日間の下落部分を吸収。さらに週末の2日は、300円を超える上昇で2万円を回復した。米5月ADP雇用統計が予想を上回る内容だったことを受けて、週末の米雇用統計への期待も高まる格好となった。
日経平均は、意外とあっさり2万円を回復した印象である。米雇用統計への期待から先回り的な動きもあったとみられるが、もち合いレンジを超えてきたことから、ショートカバーを誘う流れにもなったようだ。また、1日を通じて上昇が続いており、機関投資家による債券から株式への資産シフトといった流れが強まったようにみられる。
今週は雇用統計の結果を受けた市場反応から始まるが、雇用統計については非農業部門雇用者数が13.8万人増(市場予想18.5万人増)とコンセンサスを下回った。しかし、2日の米国市場は、失業率が16年ぶりの低水準に改善したことが好感されている。NYダウ、ナスダック、S&P500いずれも史上最高値を更新するなか、この流れを受けた日本株市場も底堅い展開が意識されそうだ。
もっとも、円相場は雇用統計発表後に1ドル110円台半ばと円高に振れているほか、米国が地球温暖化防止対策の取り組みである「パリ協定」からの離脱を発表したことから、原油先物相場が調整含みであることが重しになりそうだ。その他にもロシアゲート問題に揺れるトランプ政権だが、FBIのコミー前長官に圧力をかけたとされる問題で、コミー氏が早ければ8日にも上院情報特別委員会で証言する意向である。政治混乱リスクが高まりやすいなか、強弱感が対立しやすいところでもある。
また、FRB長官の証言に対してホワイトハウスは2日、トランプ大統領が証言を阻止するための法的な選択肢を検討していることを明らかにしている。証言が実施された場合の市場への影響がより警戒されやすい。一方、これを無難に通過するようだと、一段とトレンドが強まりやすいだろう。
その他、英国では8日に総選挙が実施される。先週はメイ首相率いる与党保守党が過半数の議席を確保できない可能性があるとの、調査結果が伝えられ、いったんは欧州不安が和らいでいた。ただ、結果がネガティブされたとしても、直近の上昇による短期的な過熱警戒感が高まりやすいなかでは、過熱を冷ます一服として捉えられよう。反対に、良好な需給状況のなか、日経平均の2万円以下での押し目買い意欲は強いと考えられ、調整局面が押し目買いの好機とみる向きもありそうだ。
その他、今週は米アップルの年次開発会議が開幕する。報道では音声AIアシスタントSiriを搭載したスマートスピーカーの発表が予想されている。世界のハイテク株の上昇をけん引してきた米アップルのトレンドが一段と強まるかが注目されるところ。反対に、トランプ政権への不透明感と、アップルの材料出尽くしといった動きが重なるようだと、先週のリバウンドが帳消しになるリスクはありそう。とは言え、機関投資家の本格的な資金流入が意識されるなか、押し目買い意欲は相当強いと考えられ、需給状況はしばらく悪化しそうにない。
その他、主な経済指標・イベントでは、5日に5月の米ISM非製造業景況指数、4月の米製造業受注、8日に1-3月期の国内総生産(GDP)改定値、4月の国際収支、5月の中国貿易統計、ECBが金融政策を決定、9日に5月の中国消費者物価指数・生産者物価指数、11日にフランス国民議会(下院)選挙第1回投票が行われる。
《FA》
提供:フィスコ