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2017年05月17日19時00分

【市況】中村潤一の相場スクランブル 「中期上昇トレンドに乗る勝利の方程式“銘柄”」

minkabu PRSS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRSS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

●引き潮の逆目が勝ち目という黄金セオリー

 「引き潮の逆目に張れ」という古代ローマに伝わる格言があります。大帝国を築き上げるプロセスにおいて求められるのは、必ずしも力ずくの戦争ということではなく、むしろ合従連衡などの外交戦略のほうが重要な位置づけにありました。戦わずして勝つのが最も価値の高い勝利であることは言わずもがなです。しかし、そこに潜む陥穽、いわゆる落とし穴にも注意を払わなければなりません。

 引き潮の逆目がすなわち勝ち目であるとするこの格言は、目先の損得に目がくらみ本質を見失って弱い勢力と手を組んでしまえば、それは前進ではなく後退に等しいという戒めでもあります。古代ローマでは覇道を行く過程で「落ち目、負け癖のついている国とは、そこにいかなる利があろうとも決して組んではいけない」という鉄のルールが掲げられていたといいます。これは、中国春秋時代でもそのまま通じる政治におけるパワーゲームの原理原則かもしれませんが、誤って引き潮に乗って大局を失うことの怖さを、少なくとも百戦錬磨の帝国は熟知していたわけです。

 では、今のトランプ政権はどうでしょう。図らずもこの「引き潮の逆目に張る」作業を外交で進めているようにも思えます。議会との折り合いの悪いトランプ米大統領が、活路を外交に求めようとするのは自然な発想、しかしここでのパワーゲームは米国にとって急所であり、間違った選択肢を引くことは許されません。これまでトランプ氏はロシアのプーチン大統領を尊敬していると公言し、一方で対中国では強硬路線をとる姿勢を明示していました。いうまでもなく昨年の11月8日の大統領選の結果は、ロシアにすればこのうえなくラッキー、中国にすればアンラッキーな出来事で、この時のサプライズの残像が尾を引く形で現在の“ロシアゲート疑惑”にもつながっているのです。

●満ち潮の中国、引き潮のロシア

 ところが今、トランプ氏は中国との連携を強めようと融和的な姿勢を打ち出しています。金科玉条として掲げた「米国第一主義」を進めるうえで、感情よりも国益を取ることはトランプ氏にとって絶対の選択肢。4月の米中首脳会談を境に中国との距離を一気に縮めたのは、北朝鮮との調整を中国に丸投げできるのならばそれに越したことはないという思惑に加え、経済的な切り口で事業家としての本能が共鳴的にうごめいたことによるものと考えられます。通商問題改善に向けた進捗はそれを裏付けるものであり、「100日計画」に基づいて、米国が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に協調し、その対価として中国が米国産牛肉の輸入再開で合意するなど早くもその成果が形となっています。ここはトランプ氏の本領発揮というところでしょうか。

 一方、ロシアは、足もと原油市況が減産努力に伴い戻り歩調にあることはポジティブ材料ですが、かつてニューリッチが闊歩したような経済復権を想定するのは困難な状況です。プーチン大統領に対し個人的に尊敬の念を持とうとも、引き潮のロシアと米国が連携してもそこに果実は期待できそうにありません。

 眼前のロシアゲート疑惑を躱(かわ)せるのかどうかは当面の大きな課題として残りますが、いずれにしても米国がロシアと距離を置き中国との蜜月関係を築く方向に針路を取り始めた今、7月のG20首脳会議を一つのメルクマールとして、世界の株式市場においてもトランプ氏の外交戦略における一挙手一投足が一段と注目を浴びることは間違いないところ。中期的な観点で、中国の広域経済圏構想は東京市場でも物色テーマの底流に意識されそうです。

●相場の風向きは既に向かい風に変わっている!?

 ただし、目先的には全体相場の風向きは良好とはいえません。ついこの間までは日経平均2万円はすぐにでも通過して、大台固めから次のステージを窺うといったムードが市場関係者の間には広がっていました。直近は恐怖指数と称されるシカゴのボラティリティ・インデックス(VIX指数)が11前後と大底圏に位置、ここだけ見るとマーケットは引き続き温泉気分に浸っているようにも見えますが、「これはカバードコールなどのオプション売り需要の増加に伴う予想変動率の低下が、機械的に反映された要素も強い」(国内ネット証券マーケットアナリスト)との指摘があり、投資家心理の実態とは少なからぬカイ離があるようです。

 一方、前回4月19日の当コーナー「リバウンド前夜の“底値株”投資作戦」で、全体の環境を見る限り「とても株なんて買えない」と思われる局面であっても騰落レシオが陰の極にあれば、そこは買い場である可能性が高い、「騰落レシオは嘘をつかない」という経験則をご紹介しました。あの時は東証1部の騰落レシオは70%前後と売られ過ぎの水準にあったわけですが、そこからの戻り相場は見ての通りです。地政学リスクをハヤされ国内勢が見切り売りに動いたところを、外国人投資家にゴッソリ拾われた格好で、過去16年にわたる4月の外国人買い越しアノマリーはダテではないことを証明しました。

●「騰落レシオは嘘をつかない」復路バージョン

 当然ながら騰落レシオは往路ではなく、復路でも“嘘はつかない”わけで、足もとは調整の機が近いことを暗示しています。今回、この東証1部の騰落レシオは前日(16日)時点で145.7%と買われ過ぎの水準にあります。140%超えの水準に達することは年間を通じても比較的珍しく、ちなみに2016年は10月25日に146.5%をつけるまで一度も140%以上に跳ね上がったことはありませんでした。

 もちろん、騰落レシオは値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の偏りを数値化したものであり、反動高もしくは反動安局面における全体相場の調整値幅の絶対値にはリンクしていません。トランプ政権がロシア問題で想定以上の大打撃を被るか、北朝鮮リスクが再び看過できないレベルで極大化しない限り、下値はそう深くないと思いますが、当面は調整局面に備え、個別材料株の短期売買に特化するか、資金をマーケットに寝かせるのであればポジションを軽くしておく、といった知恵が求められそうです。

●強力なファンダメンタルズが上昇相場を支える

 株式市場は目先的には下方圧力が働いていますが、中期トレンドとして上値追い基調は変わらないと考えています。したがって、5月下旬から6月にかけて総論弱気ではなく、押し目買い好機というのが個人的なイメージです。それは、好調な企業業績というファンダメンタルズ面からの強力な礎があるからです。ここ弱い経済指標が続いた米国では低リスク資産である債券に資金が流れ込み、米長期金利が低下基調にありますが、基本的に米国経済は強靭であり冷静に見ればこの流れが続くとは考えにくいところでしょう。

 6月のFRBによる利上げは既定路線で、債券の再投資を停止するという量的な引き締めも俎上に載っている現在、日米金利差縮小のシナリオが継続するようなことはなさそうです。結果、円高が進行する可能性も薄いでしょう。今18年3月期業績見通しについては、日本企業が想定した為替レートよりも円安での推移が常態化し、業績増額期待を織り込みに行く過程は、これからの楽しみとなります。今期は主要企業の7~8割が増益予想にあるなか、PER面でも水準訂正余地が意識されそうです。

●個別テーマ株ではサイバーセキュリティー

 個別にはどういった銘柄に注目していけばよいでしょう。掛け算で株価を伸ばす(倍化する)可能性を秘めた銘柄を、相場がいったん引き算された局面で、ディスカウントされた状態で仕込めればそれがベストシナリオ、「勝利の方程式」といえるでしょう。前回は相場が陰の極近辺にあったことから底値買いを提唱し、候補銘柄はいずれも結果的に好パフォーマンスを収めました。今回は全体相場が過熱ゾーンにあることで慎重さは必要ですが、短期売買のスタンスに対応できる有望セクターは、やはりサイバーセキュリティー関連ではないかと考えます。

 これは1月25日の「トランプ相場第2ステージで開花する株」、2月8日の「マザーズ開眼! クラウド関連が全面開花へ」でも連続して取り上げましたが、中長期的にも要注目であることはいうまでもありません。サイバー攻撃が世界的に深刻化するなか、その対応は国家レベルでも喫緊の課題となっており、足もとは「ランサムウエア」による被害報告が小康状態にあるとはいえ全く油断はできないのです。

 個別にはヒューリスティックエンジンにより未知のウイルスを検知する技術で先駆するFFRI <3692> [東証M]は標的型サイバー攻撃対応で本命格。金融システム分野に強く、内部情報漏洩対策関連への対応に注力するインテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]はセブン銀行 <8410> のATM設置台数増加に際しての恩恵も期待されており、目先動意含みです。このほかサイバーセキュリティー技術に強く、ネットを通じたウイルス感染やサイバー攻撃への対応ビジネスで業績を伸ばすラック <3857> [JQ]は、PER面でも相対的に割安で上値余力がありそうです。

●半導体関連は株価もスーパーサイクル相場へ

 構造的な収益追い風環境に突入している半導体関連も継続マーク。基本的に関連銘柄は総花的な上昇が期待できますが、その代表格である東京エレクトロン <8035> の株価の強さは、足もとは円高も関係ない勢いをみせるなど象徴的な動きです。100株単位とはいえ、値がさ株で個人投資家は躊躇せざるを得ない銘柄ではありますが、最高値圏を舞い上がるフィラデルフィア半導体株指数の動向を考慮すれば、世界屈指の製造装置メーカーでありながら、上場来高値まであと5000円近くある同社株は依然として評価不足歴然であるといえます。

 後工程のアドバンテスト <6857> なども長期波動(月足)では出遅れ感が強く、18年3月期はメモリー市場の拡大加速が強力な追い風となりそうです。こちらは中長期なら掛け算で株価の居どころを変える可能性がありそうです。このほか、半導体向け特殊ガスを手掛ける関東電化工業 <4047> は、18年3月期は保守的な見通しで株価の上値が重くなっていますが、今後は上方修正期待が膨らみそうであり、1000円近辺は拾い場でしょう。

(5月17日記、隔週水曜日掲載)

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