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2017年02月08日19時00分

【市況】中村潤一の相場スクランブル 「マザーズ開眼! クラウド関連が全面開花へ」

株経ONLINE 副編集長 中村潤一

株経ONLINE 副編集長 中村潤一

 株式投資では全体の潮の流れに個別株の値動きも大きく左右されます。例えば最初の銘柄選択で誤っても、全体相場が上げ潮の時は地合いに助けられるということが往々にしてあります。結果としてキャピタルゲインを収め、勝った気分にはなっても、それより優れた銘柄を選択した場合よりはパフォーマンスは悪くなります。全体上昇相場における「利益の再分配」がその実態であり、表現は悪いですが“勝ち組銘柄のおこぼれ”によってもたらされたものだからです。

 しかし、この利益の再分配のメカニズムが働く期間は意外に短い。株価の変動はあっても、それは潮の流れではなく「波」であって、高安どちらにも流れが形成されていない水面を揺らしているような状況、これがむしろ通常モードといえます。この波間で上下に漂う時間帯が、年を通じた相場の大半を占めている、と考えていいでしょう。上げ潮環境の時と比べれば銘柄選択時のプレッシャーは明らかに増幅されます。また、相場は良い時もあれば悪い時もあるわけで全体のトレンドが下向きとなった場合には、逆に「損失の再分配」を被ることになりかねません。本来であれば有望な銘柄であっても、全体相場が引き潮の時は沖に流されてしまうようなケース(キャピタルロスを余儀なくされるケース)も出てくるわけです。

●トランプ相場の上げ潮局面はまだ続く

 では、今の相場環境はどうみるべきでしょう。昨年11月の米大統領選後に形成された鮮烈なトランプ上昇相場では、リターンリバーサルという名のもとに利益の再分配があちらこちらで見られました。しかし、足もとはその時の勢いが減速していることは否めません。既に理想買いの第一幕は終了したようです。ただし、引き潮の相場に変わってしまったのかと問われれば答えはノーでしょう。

 米国株市場は上値が重いとはいってもNYダウ平均ナスダック指数とも最高値圏で売り物をこなしており、なお“伸びしろ”を感じさせます。NYダウは年央までに2万1000ドルラインが視界に入りそうです。東京株式市場は、ドル安株高のシナリオに沿って走るニューヨークとは為替のベクトルが逆向きで、前途は楽観的と言い切れない部分もありますが、それでも米株が堅調を維持できれば、リスク回避の流れに晒される可能性は低そうです。仮に為替相場がドル売り・円買い基調となっても、円高にリンクさせた日本株のアルゴ売りプログラムは、資金の流れがリスクオフモードにあるからこそ作動するものであり、米株高が担保されるのであれば、円高による逆風の影響は以前と比べ限定的なものにとどまるとみています。

●米株高を支えるウォール街の神通力

 市場では今週10日にホワイトハウスで行われる日米首脳会談を一つの契機と捉える向きが多いようです。複数の関係者の声を聞いた限りでは、ここを境に東京市場でも再び株高の潮流が発生するとの見方が大勢です。希望的観測がバイアスをかけているとしても、来週以降、日本株売りのステージに変わるという根拠も希薄なのです。日米ともに企業業績が良好なことは株式市場に強力な追い風といえますが、それに加えて、トランプ大統領は大統領令連発で中産階級支持層に前大統領との違いを強烈にアピールする一方、以前当コーナーで触れたように、株式市場が上昇することによる資産効果に非常に重きを置いている印象が強い。政権に多数のウォール街人材を登用し、さらに政権中枢では財務長官のムニューチン氏を筆頭として複数のゴールドマン・サックス(GS)出身者で脇を固めていることはそれを示唆しています。

 2008年、米政府はリーマン・ブラザーズを救済せずにAIGを救済しましたが、当時のブッシュ政権における財務長官はやはりGS出身のポールソン氏でした。生保最大手でクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が起爆剤となるAIGの救済は世界的な金融崩壊につながる懸念から必然の選択肢であったかもしれませんが、リーマンの破綻についてはGSの意思が反映されたものと、まことしやかに兜町では伝わっていました。今回、メキシコ国境の壁建設や入国制限などが物議を醸すなか、その間隙を縫って金融規制の抜本的見直し指示の大統領令に署名する抜かりのなさ。トランプ大統領オンリーワンの裁量とは思えない部分もあります。NYダウへの寄与度の大きいGSの株価動向と合わせ、当面は米国株の足腰の強さをみせつける展開となりそうです。

サイバーセキュリティー関連は引き続き注目

 ここからの東京市場で投資のポイントとして、企業業績をベースとする買いが一巡した後は、期末にかけて再び中小型の値動きの速いものが好まれると思います。市場を取り巻く流動性は十分確保されていると思われ、個別株物色の流れは健在でしょう。前回に引き続きサイバーセキュリティー関連のテーマ買いの流れを重視したいところです。FFRI <3692> [東証M]、ラック <3857> [JQ]、テリロジー <3356> [JQ]のほか、デジタルアーツ <2326> 、チェンジ <3962> [東証M]などは要マークです。日米首脳会談では安倍首相がトランプ大統領に提案する経済協力の原案「日米成長雇用イニシアチブ」の中にも「サイバー攻撃への対処・宇宙空間での共同対処」が掲げられており、既にサイバー攻撃への対処はトランプ相場にも乗るグローバルなテーマといえます。

●出遅れマザーズ市場に春一番

 また、投資テーマとは別に注目したいのはマザーズ市場に上場する銘柄群であり、久々に風が吹き始めています。

 ここまでトランプ相場の潮流に乗れていなかった市場がマザーズです。今から「3年程度」さかのぼって、東証1部(日経平均もしくはTOPIX)、東証2部(2部指数)、ジャスダック(日経JQ平均)、マザーズ(マザーズ指数)の4市場の週足トレンドを比較していただくと一目瞭然。東証1部、東証2部、ジャスダック3市場のチャートはほぼ相似形で、波動の強い順に序列をつけるならば、東証2部が最強、ジャスダックが2番手、東証1部が3番手になります。しかし、マザーズ市場だけは上記3市場とは軌道を異にしており、蚊帳の外に置かれている感が強いのです。よく「東証1・2部と新興市場」というような区切り方をされますが、ひと括りにするのであれば、本質的には東証2部とジャスダックが同類で、良くも悪くもマザーズは異質です。

 このマザーズ指数が8日、終値で1000ポイントを回復し、昨年7月初旬以来の高値圏に浮上してきました。これは新たな投資のチャンスを暗示する動きと捉えられます。

●そして開花するクラウド関連株の一群

 そうしたなか、新たなテーマとして注目したいのはクラウド関連。シャノン <3976> [東証M]、ホットリンク <3680> [東証M]、クラウドワークス <3900> [東証M]、イノベーション <3970> [東証M]、リアルワールド <3691> [東証M]などが動意づいています。IoT時代の到来、ビッグデータの普及に伴い、企業のクラウド活用が急速に促進されつつあります。クラウド市場は、米国では圧倒的な経営資源を注ぎ込み先駆するアマゾンやマイクロソフトを中心に急拡大途上にあり、日本でも早晩この流れが意識されるでしょう。

 クラウド関連として有望な銘柄はマザーズ市場に多いように思えます。上記以外の銘柄でチャート妙味抜群なのがITbook <3742> [東証M]です。また、昨年7月に上場したセラク <6199> [東証M]、直近IPO銘柄のエイトレッド <3969> [東証M]なども関連銘柄として面白い。

 ITbookはシステム開発やITコンサルティングを展開、官公庁や自治体向けに強みを持っています。同社はマイナンバーなど自治体のコンサルティングを手掛け、地方自治体のクラウド化に際しては総務省から実証試験を受託し実施しています。セラクはITシステムの人材を派遣して運用支援する企業。IoTを成長分野に位置づけ業績飛躍を狙っています。農業向けIoTとして提供する温室内環境遠隔監視システム「みどりクラウド」などに期待がかかっています。2月末現在の株主を対象に1株を4株にする株式分割を発表しており、今後権利取りの動きが再燃する可能性が高いと思われます。また、クラウドを活用して社内書類の電子化による業務効率化を担うエイトレッドは昨年12月22日に新規上場したばかり。公開価格の2.3倍の初値をつけ、さらに一段高に買われる鮮烈デビューを飾りましたが、その後は調整。成長期待は大きく時価は初値近辺まで切り返しており、仕切り直し相場が期待されます。

(2月8日記、隔週水曜日掲載)

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