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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆催促相場の様相◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇28日のトランプ議会演説に耳目が集まる〇

今週は本来なら、米雇用統計の週だが、スッカリ陰が薄くなり、28日夜の上下両院合同本会議でのトランプ大統領演説に関心が集まる。例年1月末の一般教書演説に該当するものだが、何故、そう呼ばれないのかは分からない。停滞感のある国内政策、あるいは対北朝鮮、中東問題などで踏み込んだ発言があるか、注目される。

先週末の米債市場で、30年物国債利回りが3%割れ(一時2.955%)、10年物利回りは2.3152%に低下した。10年債は5週間ぶりの低水準。トランプ大統領が9日に税制改革案を「2,3週間」内に発表すると発言して上昇していた分が剥落した。ムニューシン財務長官が、就任後、具体策に言及せず、為替政策などでも従来枠組み内と見られる発言に終始していることに苛立ち感が出ている印象だ。大統領は23日、ロイターのインタビューで、「法人減税は15~20%の間」と発言しているが、市場の受け止め方は、「今年は財政面の刺激策は事実上ゼロ」。例年、2月上旬の予算教書もずれ込み、3月13日議会提出が予定されている。

ポジション調整の動きが主流と見られるが、背景には欧州国債の利回り低下もある。独2年物国債利回りは再び過去最低を更新、-0.95%、5年物-0.689%。10年物は+0.186%だが、約2ヵ月ぶり低水準。仏10年物国債は0.92%と1カ月ぶりの低水準となっているので、仏大統領選などの政治不安からのリスク回避とも言い切れない。欧州株式市場は、エネルギー関連、金融株などが売られ、3週間ぶり安値。米株はNYダウが崩れていないが(11日連続最高値更新)、金融株などが売られ、総じて値動きが重くなっている。

大きな転換点では、行き過ぎた評価と調整場面が交錯する局面がある。とくにトランプ相場では、将来の絵図面が描き難い。演説で大統領が項目を並べても、市場は手順、具体策を求めているので、ミスマッチ・リスクは残ろう。株高がトランプ大統領の勢いの象徴的存在だとすると、調整は政策催促の側面を持つ。市場は減税など国内政策ばかりを材料にしているが、急遽、27-28日に中国外交トップの楊国務委員の訪米が伝えられ、朝鮮半島情勢の急変に備えている面も考えられる。

一方、国内政治も過渡的局面と思われる。詳細は知らないが、国会を揺るがしている森友学園問題は、結果的に、天下り問題の鎮火、財政出動を求めたシムズ理論への対抗などで、財務省リーク説が出ているほどだ。背景に、本日、予算案が衆院を通過(年度内に自動成立)、次のステップとして、衆院解散とセットになると見られる補正予算案編成思惑などに焦点が移り始めたことがあると見られている。4月に日米対話が始まる予定だが、それまで円高圧力を凌げるか、為替攻防が株価に跳ね返る構図が続くと考えられる。

反面、産業界の事業改革の動きが活発化している印象だ。地方で、地銀再編、ローソンが仕掛ける地方食品スーパー連携、ヤマト運輸で表面化した宅配網の限界(業界再編につながる公算がある)、東芝やANA、森永など個別の事業再編の動きなど、連日のようにニュースが出ている。通例、2-3月は来年度計画、設備投資計画をまとめる時期だが、その枠を超えたウネリが起こっている印象だ。海外情勢を睨みつつ、個別物色地合いが続くと考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/2/27号)

《WA》

 提供:フィスコ

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