【市況】S&P 500 月例レポート ― 踊るトランプ氏、宴を謳歌した米投資家 (7) ―
※(6)から続く。
●投資家が押さえておくべきポイント(4)
→トランプ氏とダンスを踊る。
○トランプ氏は米国企業による雇用の海外移転にさらに警告を発し、海外移転を行う企業は高関税による「報復」を受けることになると発言しました。
○トランプ氏とソフトバンク(SFTBY)の孫正義社長が会談し、ソフトバンクが米国で総額500億ドルの投資を行い、5万人の新規雇用を創出することを発表しました。また、Apple(AAPL)のサプライヤーである台湾企業のFoxconnは、米国事業の拡大に向けた協議の初期段階にあることを明らかにしました。トランプ氏による米国の雇用重視に関する当初の見通しは、空調大手Carrierとの合意で守られたのち、これらの動きによってさらに裏付けられています。
○トランプ氏による次期政権の閣僚人事(議会承認が必要)とアドバイザーの任命(議会承認は不要)が進んでいますが、国務長官に石油大手Exxon Mobil(XOM)のレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)が指名されるなど、企業関係者が多数名を連ねています。
○トランプ氏は、政府プロジェクトでのコスト管理に関して、防衛機器メーカーのBoeing(BA)とlockheed Martin(LMT)を批判したのち、両社のCEOと個別に会談を行いました。会談後の発言からは、両社がコストの改善に取り組むことが示唆されています。しかし、トランプ氏は、LockheedのF-35戦闘機の高コストを考慮し、BoeingにF-18戦闘機の「コスト算定」を要請したことを会談後にツィッターで明らかにしています。こうした結果、市場では「トランプ氏とのダンス」という新たな言葉が生まれています。
○トランプ氏一色となったメディアの報道は、米タイム誌が同氏を2016年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に選んだことでさらに盛り上がりました。タイム誌はトランプ氏をアメリカ合衆国ならぬ「アメリカ分断国(The Divided States of America)の大統領」と評しています。
○極めて対称的に、オバマ政権は全長1,200マイル(1,931キロメートル)、建設費用38億ドルのダコタ・アクセス・パイプラインの建設に関して、パイプラインの完成に必要な土地の利用権を認めない判断を下しました。政府のエンジニアによると、今後代替ルートが検討される見通しです。
→S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、医療サービスのAmSurg(合併に伴う社名変更でEVHC)と不動産のMid-American Apartment Communities(MAA)をS&P500指数に組み入れた一方、資産運用のLegg Mason(LM)と金属・ガラスのOwens Illinois(OI)を同指数から除外しました。
○2016年は27銘柄が新たに組み入れられた一方、26銘柄が除外されました。2015年は組み入れ銘柄が27銘柄、除外銘柄が25銘柄でした(同一企業の複数のクラス株式は個別にカウントされるため、構成企業数が500社であることに変わりはありません)。
→その他の注目材料は以下の通りです。
○Boeing(BA)は、イランとの間で総額166億ドルの航空機売却契約を締結した一方、Delta Air Lines(DAL)からドリームライナー18機、総額40億ドルの購入契約の取り消しを受けました。
○イランはAirbus(EADSY)との間で、旅客機の購入契約で最終合意しました。購入機数は従来合意の118機から100機に縮小され、契約額も従来の250億ドルから180億ドルに修正されました。
○トランプ次期大統領は政府のコストをめぐる発言を続け、航空・防衛システム大手Lockheed Martin(LMT)が米軍から受注しているF-35戦闘機のコストは高すぎると批判しました。
○米金融当局は、大手銀行Wells Fargo(WFC)が「生前遺言」のテスト(銀行に対する公的支援なしに景気の悪化を乗り切るためのプランの一つ)で基準を満たさなかったと発表し、同行の事業活動に制限を課しました。Wells Fargoは2017年3月までに計画を再修正する必要があります。
○ゲームメーカー任天堂(NTDOY)が新発売した「スーパーマリオラン」に対する評価は、(良く言っても)あまり盛り上がっていません。
○大手電機メーカー東芝(TOSYY)の株価は、同社が米国の原子力事業で数十億ドル規模の減損が発生する見通しであると発表したことや、ムーディーズとスタンダード&プアーズがともに信用格付けを引き下げたことを受けて、12月に34.2%下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
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