【特集】「2016年の売れ筋、投資・ビジネス本は?」 丸善本店売り場担当者に聞く!<直撃Q&A>
松本直亮氏(丸善丸の内本店 一般書売り場担当)
Q1 金融マーケットでは大きな出来事がいくつもありましたが、今年全体の投資やビジネス本の売れ行きはいかがでしたか?
松本 Brexitなど経済不安が漂った2016年の前半は、投資する空気が乏しかったためかあまり投資本の動きはよくありませんでした。ただ、トランプ次期米大統領が決定してからは来年についての予想本が売れているほか、トランプ氏の政策への期待感からか「米国会社四季報」(東洋経済新報社)が昨年よりもずっと出ています。
Q2 やはり世界的な関心を集めたBrexitやトランプ次期米大統領の関連書籍の売れ行きが良かったのでしょうか?
松本 Brexitでは、日経ビジネスのムック本で「世界経済の新リスク」(日経BP社)が長く売れています。また、トランプ本は自身の過激な発言などをまとめた書籍が数多く出版されていますが、彼の自著である「トランプ自伝――不動産王にビジネスを学ぶ」(ドナルド・トランプ ちくま文庫)が1番売れています。来年の大統領就任式を控え、今後の発言を世界が注目するなか、続々と新刊が出版されますので、その売れ行きにも注目しています。
Q3 丸の内本店は周りに大手企業や金融機関の本社がありますが、今年の売れ筋ビジネス本の特徴などはありますか?
松本 今年は大きく分けて2つのテーマの書籍がよく売れました。1つ目は、子どもの能力を伸ばす目的の子育て本です。本来テーマとしては教育書ですが、ビジネスのコーナーに「一流の育て方――ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる」(ムーギー・キム、ミセス・パンプキン著 ダイヤモンド社)を置いたところ、販売が良好でした。これを受け「GRIT やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める『究極の能力』を身につける」(アンジェラ・ダックワース著 ダイヤモンド社)を大きく展開したところ年間上位のベストセラーとなりました。子育てに関心があり、ハイレベルな教育を求める父親が増えている傾向があるようで、周辺で働く30~40歳代の男性の方がよく買っていかれます。
2つ目ですが、IoT(モノのインターネット)やAI(人口知能)のテーマに関する書籍に引き続き動きがあります。ただ、当初のような基礎的な概要を解説した本よりは、「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」(ケヴィン・ケリー NHK出版)や「UXの時代 IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか」(松島聡 英治出版)といった新しいビジネスモデルの創造やユーザーが何を求めているのかに焦点をあてた書籍に関心がシフトしています。
(聞き手・吉野さくら)
<プロフィール>(まつもと・なおあき)
05年丸善丸の内本店入社。政治経済、業界・マーケティング、企業法務・人事労務、経営書などのビジネス書の棚を担当し、現在は新刊の仕入れ業務など、ビジネス書全般を担当。
●丸善 丸の内本店
東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1~4階
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)