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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆酉は朝を告げ、市が立ち、タマゴを生む◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇トランプ次第の様相、懸念材料も絞り難く〇

今年を振り返ると、昨年末の懸念材料は具体的だった。例えば、「トランプで騒がしく」、「中東でプーチン勝利」、「EUが難民問題で崩壊の危機」、「英国のEU離脱」、「米銀などへのサイバー攻撃激化」、「中国経済弱体化」、「気候変動の悪化」、「ラテンアメリカの無秩序」などはかなり近い線となった。一つ「イスラエルのイラン軍施設攻撃」は無かったが、「申年の騒がしさ」の要因になった。相場格言は「申酉騒ぐ」なので、来年も同じ傾向になる可能性があるが、具体的な項目を挙げられていないことが特徴だ。それだけ、「トランプ次第」の見方が強い。大統領になってもツイッターで呟くかどうか分からないが、現状は何か呟けば大騒ぎになり、的は絞り難い。

ただ、申と酉には大きな違いがある。申は「猿真似」とか、「猿も木から落ちる」とか、あまり良い表現は無いが、酉は朝を告げ、市が立ち、タマゴを生む。十干十二支の60年サイクルで、前回は昭和32年。この年は、ソニー(東京通信工業)のトランジスタラジオ、トヨタのコロナ、日産のダットサンが発売された。コカ・コーラが日本に上陸、名古屋駅に初の地下街、スプートニクが打ち上げられ、東海村に原子の火が灯った。120年前の明治30年は、大学(京大など)・図書館・博物館が作られ、金本位制、ストライキが始まり労働組合設立、映画のシネマトグラフ(スクリーン式)上映、無線通信実験に成功した。来年生まれる新製品・新制度は新しい時代を形作る可能性がある。

西洋式では「数秘術」がある。1~9の数字(0は含まない)には特別な意味があるとの考えで、「数の法則」で万物は秩序付け、支配されていると看做す。数字は全て一桁に集約され、2016年は2+0+1+6=9、2017年は2+0+1+7=10=1+0=1になる。9年サイクルで、(9)は終わりとか、変容を意味し、(1)は始まり、革新を意味するとされるが、必ずしも良い意味ばかりではない。

前回9→1の移行は、2007年=9から2008年=1。中国・四川大地震、リーマン・ショック、オバマ大統領選出の年。その前は1999年、通貨ユーロ導入、ネットバブル、NYダウ1万ドル乗せの年。さらに、1990年でクウェート侵攻、東西ドイツ統一、今上天皇即位の礼、日本のバブル崩壊始まりなど。「終わり」の年に選ばれたトランプ大統領は新しいものを生むと言うより、既存の制度や慣習を破壊的に終わらせる意味合いが強くなる可能性がある。

今年の残り日数は少ないが、このパターンで行くと、NYダウの2万ドル乗せは今年より年明け後が望ましいことになるが果たしてどうか。また、直近では欧州情勢への関心が薄れているようだが、「1ユーロ=1ドルのパリティ時代」との予測もあり、各国が選挙の年を迎え、ブレグジット交渉が始まるので、目が離せない展開となりそうだ。先週末は中国海軍の米無人機略奪で緊張が走った(この件は返還で決着見込み)。米中関係も大きな緊張要因と考えられ、リーマン・ショックや日本のバブル崩壊のような展開に、中国経済が陥るかどうもリスク要因と考えられる。先の読み難い、強弱感対立で上げ下げの激しい展開が想定されるが、新しい時代に向かっている可能性を念頭に置きたい。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/12/19号)

《WA》

 提供:フィスコ

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