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2016年12月26日20時00分

【特集】海外大ヒット「君の名は。」に続くには? アニメ輸出次の課題 <株探トップ特集>

東宝 <日足> 「株探」多機能チャートより

―2015年は輸出額過去最高、2016年も更新なるか―

 爆発的大ヒットを続ける新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」だが、国内のみならず海外でも絶好調だ。中国とタイで日本映画の歴代興行収入新記録を樹立するなど、まさに日の丸アニメの存在感を世界に見せつけている。自動車などに代表されてきた日本の輸出産業だが、いまやアニメもその一翼を担う存在へと進化してきている。巨大な世界市場に向けて攻勢をかける、輸出産業として飛躍するアニメ業界を探った。

●海外輸出は史上最高の売り上げ

 東宝 <9602> 「君の名は。」の快進撃が止まらない。国内では興行収入が200億円を突破、海外でもアジアで絶好調、中国では過去最高だった「STAND BY ME ドラえもん」を抜いて、12月2日の公開からおよそ2週間で日本円にして90億円を超えるという人気となっている。同作品は、既に世界92の国と地域で海外配給が決定しており、アジアのみならず世界的に人気が拡大しそうだ。

 ディズニーやピクサーが席巻する巨大な世界のアニメ市場だが、日本の海外輸出額も大きく伸びている。日本動画協会の「アニメ産業レポート2016」サマリーによると「2015年における海外販売は、契約数が前年度の4倍となり大幅な増加を見せた。過去3年間にわたって輸出額(業界海外売上)の横ばい状態が続いていたところが、突如195億円から349億円と1.79倍となり、過去最高だった2005年の313億円を超え、史上最高の売り上げとなった」としている。過去作品を含め一気に売却したという特殊要因も加わったことが数字が跳ねた背景のひとつとも言うが、2016年には「君の名は。」の大ヒットが加味されるだけに、その効果も期待されるところだ。また、同リポートでは、「アニメ産業が積極的に海外市場に対応を始めた年になったといってよいだろう」としている。

●「東宝だから“君の名は。”は中国で成功」

 株式市場でも、日本アジア投資 <8518> が「君の名は。」の有力関連銘柄として急動意。同社の投資先であるアクセスブライトが、「君の名は。」の中国配給における窓口となったことを受け、株価は11月下旬の350円近辺から急上昇、12月6日には899円をつけるという異彩高を見せた。

 東宝では中国展開について、「『君の名は。』は、アクセスブライトを契約の窓口として中国のエンライトという配給会社と契約している。興行収入の分配比率についてはお答えできない」(国際部)という。また、来年8月公開予定で既に話題となっているアニメ「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」について、「これらの作品も中国に配給する場合には、仲介企業を挟むのか」という問いに、「それは、どうなるか現時点では分からない。現在、当社は直接ルートもある」(同)と答える。

 アニメの海外展開に詳しい業界関係者は、「『君の名は。』だが、東宝というパワーがある企業だからこそ今回のような中国での大成功となった。中国での展開は、複雑な要因が絡んでくる」と、同国への市場進出の難しさを語る。

●「この世界の片隅に」は18の国と地域

 そのような状況下、東映 <9605> は7月に日本で公開された「ONE PIECE FILM GOLD」が、11月11日に中国全土でも公開され大ヒットとなった。また、連結子会社の東映アニメーション <4816> [JQ]の業績も大きく上振れている。国内外でアプリゲーム「ドラゴンボールZドッカンバトル」や「ワンピーストレジャークルーズ」、中国向けで「聖闘士星矢」のアプリゲームが好調に推移したことに加え、「ONE PIECE FILM GOLD」の劇場公開に向けたタイアップ・販促関連商品の販売が好調だったことが寄与している。

 東京テアトル <9633> は、11月12日に公開された同社配給の劇場アニメ「この世界の片隅に」が予想を超える観客動員数となっている。同社株は株式市場でも物色人気を誘導し11月24日には13年5月以来約3年半ぶりとなる200円台を回復した。現在、18の国と地域で公開が決定しており、今後の拡大にも期待がかかる。また、ハリウッドによる攻殻機動隊の実写版、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」公開を来年4月に控え、同作品のアニメを手掛けたIGポート <3791> [JQ]にも注目したい。

●求められる一気通貫のシステム

 前出の業界関係者は、アニメの海外輸出について、「日本製アニメは、完全に国内の基準に合わせて作られており、そのまま海外に持って行って交渉すると、莫大なローカライズ作業が発生し、当然費用もかかる。そもそもアニメというのは子どもが見るというのが海外の基本だ。日本製のアニメは、現在世界的に人気のように見えるが、大人を対象とした作品は、市場的にはまだニッチであることには変わりはない」と少々手厳しい。とは言え、「基本的には、各社ともに海外に売るということを念頭に入れはじめており、戦略を練っている状況」という。逆に考えれば、日本のアニメ産業については伸びしろが大きいともいえるわけだ。

 ビッグマネーが動く世界のアニメ市場、いま日の丸アニメは果敢に攻勢をかけようとしている。ただ、現在の日本勢には海外展開のためのルートが脆弱なのは事実。ディズニーなど海外の巨大なライバルに対抗すべく、制作から配給まで一気通貫のシステム構築が求められている。

株探ニュース

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