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【特集】年の瀬“IPO”祭り、押し寄せる投機マネー「大相場」演出へ <株探トップ特集>

年末恒例の直近上場株フィーバーが開幕、2016年相場「ラストスパート」の行方は?

―ZMP上場中止で待機資金流入も後押し、切り上がる初値と高まる注目―

 東京株式市場は暮れが押し詰まっても、来年1月のトランプ相場本番をにらんで先高期待に変化がない。買い気は依然旺盛であり、21日は反落したものの押し幅は浅く、日経平均株価は頑強さを印象づける。ただ、海外投資家のクリスマス休暇入りに伴い一時的に主力株は上値の重さが意識され、個人投資家の視線は値動きの軽い小型株に向いている。とりわけ新興市場では年末特有の直近IPO銘柄フィーバーが繰り広げられている。

 直近IPO銘柄は文字通り新規株式公開したばかりの企業で、上値にシコリ玉がなく、戻り売り圧力から解放されていることが大きい。また、時価総額が小さく株式需給面での品薄感を背景に、折に触れ“玉争奪戦”の様相を呈することも少なくない。特に国内外の機関投資家の動きが止まる年末は、幕間つなぎ的にボラティリティが高まる傾向があり、腕に覚えのある個人投資家にすれば、技の見せ所ともなっている。

●幻のZMP上場日、直近IPO人気に点火

 今月マザーズに上場予定だったZMP <7316> が土壇場でまさかの上場延期となったことが、その他の直近IPO銘柄の人気を助長したとの見方も出ている。「上場後にZMPの時価総額は1000億円近くにまで膨らむとの見方も出ていただけに、その潜在的な待機資金がその他の人気候補株に一気に振り向けられるかたちとなった」(市場関係者)という。

 その皮切りとなったのが、前週末16日に東証マザーズに上場したコンタクトレンズの製造・販売を手掛けるシンシア <7782> [東証M]。上場初日こそ公開価格2100円を下回る1950円で初値を形成したものの、同日の引け値は初値比で14%高の2228円で着地するしぶとさをみせた。そして、4日間で8社が上場するというIPOラッシュの今週(19日~22日)は、IPO銘柄として“一日の長”を発揮して週明け19日に500円高はストップ高と気を吐いた。翌20日も一時連続で値幅制限上限に買われ、引けは257円高まで伸び悩んだものの、21日は再びストップ高カイ気配で3485円まで上値を伸ばした。後場後半値を崩したが、上場後4日間で高値まで公開価格比66%高という大立ち回りを演じている。

 19日は住宅ローンの貸付や仲介業務を行う日本モーゲージサービス <7192> [JQ]がジャスダックに、大型商業施設の企画設計を手掛ける船場 <6540> [東証2]が東証2部に上場したが、このうち日本モーゲージは集中人気となり、公開価格2010円に対し2810円で初値をつけ、結局、終値は高値引けで3310円と公開価格比65%高で着地している。ちなみに19日はZMPの幻の上場日であったが、シンシアと日本モーゲージがその代役を担うに十分なパフォーマンスを演じる格好となった。

●投機モードの連鎖で加速する株高、寄り後は波乱も

 そして、これは直近IPOフィーバーの入り口に過ぎなかった。20日にマザーズに上場したリネットジャパングループ <3556> [東証M]は、ウェブサイトを利用した中古品の買い取り・販売と小型家電のリサイクル事業を手掛けるが、公開価格1830円に対し93%高の3530円で初値を形成、上場前に新規公開株を手にした投資家は寄りで1株売却して、約2株分のキャッシュを手にすることができた勘定となる。同日に高値3990円まで買われたが、その後はさすがに伸び悩み、終値は3150円と初値を下回った。しかし、この瞬発力の高さこそが直近IPO銘柄の真骨頂でもある。

 21日はこの流れがさらに加速することになる。産業機械など製品マニュアル作成や電子化、クラウドサービス支援などを展開するグレイステクノロジー <6541> [東証M]と、法人向けにインターネットを活用したマーケティング支援を行うイノベーション <3970> [東証M]がそれぞれマザーズに、さらにルーターなどIT分野のインフラやネットワークセキュリティー製品などを販売するセグエグループ <3968> [JQ]がジャスダックに上場した。そして、3銘柄ともカイ気配のまま水準を切り上げ、気配値上限の2.3倍水準まで買われる異彩人気となった。

 ただ、グレイステクノロジーは後場後半に気配値上限となる7130円で初値をつけたが、寄った後は波乱含みの値動きとなり一時5630円とストップ安に売られる展開。引け値も5650円とほぼ安値圏だった。このように売り急ぎの動きも顕在化している。なお、イノベーションは公開価格2770円に対し気配値上限2.3倍の6380円で、セグエグループは公開価格1700円に対し2.3倍の3910円でいずれもカイ気配のまま初日の取引を終えている。

●直近IPO人気の対処法、市場関係者の見方に共通項

 今週はあす22日に業務効率化を図るためのワークフローパッケージを販売するエイトレッド <3969> [東証M]、分譲住宅や注文住宅事業を手掛けるフォーライフ <3477> [東証M]の2社がそれぞれマザーズに上場する。足もとのIPOフィーバーの流れをそのまま引き継げるのかは未知数だが、12月中旬以降、直近IPO銘柄にこれだけのパフォーマンスの高さを見せつけられては、注目が集まることは必至だ。

 準大手証券ストラテジストは「業態としてIT系やネット系に人気が高いのは成長力への期待値が高いから。ただ、PERやPBRなどのバリュエーション面での評価は直近IPO銘柄のセカンダリー相場では参考にならない。あくまで需給相場と割り切ったスタンスが必要であるし、その点個人投資家も手馴れており、長期保有を念頭に参戦している向きは極めて少ないと思う。したがって、ニューフェース企業の成長性を否定するわけではないが、資金の逃げ足も速いということは十分に認識したうえで、機動的な対応が求められる」という見解を示す。

 一方、大手ネット証券アナリストは「この時期はお決まりの値幅取りコースで、リスク承知で年内最後の書き入れ時と参戦する投資家は多い。店内を見る限りそのほとんどが信用取引を存分に活用した売買だ。個人投資家健在をアピールする事例だが、年内限定といってもよいのではないか。年が明ければ、前週からフェードアウトしている海外をはじめとする機関投資家が戻ってくる。東証1部の主力株中心に方向感が出てくるため、今人気化しているIPO銘柄はいったんハシゴを外される可能性も高い」と警鐘を鳴らす。

 複数の市場関係者の意見で共通項として浮かび上がるのは「期間限定」、「需給相場と割り切る」、「機動的な売買」というところ。これ以外にもう一つ挙げるとするならば、初値が公開価格を大きく上回った銘柄は深追いしないということ。前出のシンシアは初値が公開価格を下回ったからこそ、セカンダリーで人気化したという面も強い。その逆のパターンとなったのが、きょうのグレイステクノロジーだ。いずれにしても、板の状況をみながらパソコン画面に張り付いての売買が可能な投資家であることが、参戦の条件といえそうだ。

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