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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆バブルの旋回◆

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇中国発局所バブルが錯乱要因〇

週明けの市場は、東京市場でのドル円反落を皮切りに、海外市場でもトランプ相場の一服感が広がった。ただ、その中で商品相場のCRB指数は1.09%上伸した。商品相場のなかで、原油相場は30日のOPEC総会を睨む攻防、金価格はドル高圧迫で下落基調と冴えない。異常とも見える活況を呈しているのが非鉄市況。LME亜鉛は9年ぶり高値、鉛は5年ぶり高値、銅やアルミも先行して上昇している。日本株でも前月比で鉄鋼18.19%、非鉄9.50%の上昇が目立つ。

中国の買いとの見方は共通する。断片的だが、25日上海先物取引所で鉄筋先物が大幅上昇、2年半ぶりの高値と報じられた。ドイツを訪問した劉延東副首相が「中国の大手製鉄会社は9月までに4075万トンの生産能力削減を行った。中小と合わせると8800万トン、年間削減目標4500万トンを上回り、向こう3-5年間で1億?1.5億トン削減する」と表明したことを受けたもの。今年、減産で高騰した石炭に続き、鉄鋼市況などに反転上昇の動きが目立つ。

この背景は、中国風「爆買い」のモグラ叩きがある。景気対策のため、資金を余剰気味に供給しているが、10月頃から大都市の不動産バブル抑制の引き締め策を相次ぎ導入、昨年暴落した株式市場も規制は厳しく、行き場を失ったあるいは高利前提のシャドーバンキング資金(主に地方政府系の理財商品)が流れ込んでいるためと見られている。「1カ所を抑えれば、別の場所が膨らむ」資金の動きは「バブルの旋回」と呼ばれている。また、当局は人民元安を必死に管理しようとしているが、ドル建て商品を購入することで、投資家は人民元下落をヘッジする動きとの見方がある。米大統領選前から動きがあり、SDR採用後の人民元安思惑辺りから強まった。

皮肉にもインフラ投資では中国が先行している。あちこちでトラブルも発生、滞りがちだが、先般、パキスタン・グアイダール港の完成が伝えられた。ここから中国へ3000kmの鉄道、道路、パイプラインの建設(総額460億ドル)の建設が進められている。インドがピリピリする要因で、代理摩擦も発生している。中国人労働者7千人、これを守るパキスタン兵1.4万人とされ、現地でも雇用を生まないプロジェクトに反感が出ていると伝えられる。先週、上海で開催された中国建設見本市は建設機械業界を中心に久し振りに活況を呈したようだ。国家発展改革委は1?10月に承認したインフラ整備プロジェクトの総額が2兆9700万元(約4293億ドル)としている。一方、国家資産管理委員会が発表したゾンビ企業は2041社、資産総額3兆元に達する言う。構造改革自体の道は遠い。

トランプ相場と中国の事情がたまたま重なったのか、増長されたのかは分からないが、中国事情も目が離せない展開となっている。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/11/29号)

《WA》

 提供:フィスコ

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