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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 株価の声なき声に耳を傾けるとき

株式評論家 植木靖男

「株価の声なき声に耳を傾けるとき」

●ここからは売り方がつくる上昇相場

 “トランプラリー”が続いている。日米株価は競い合うように上値を切り上げている。だが、その行路は決して平坦ばかりでない。ときに頓挫しかかるときがある。

 それでも首の皮一枚残して立ち直っている。皮肉なことに、頓挫しかかる度に、相場は新たなカラ売りを誘い込む結果となっている。いまやカラ売り水準は記録的という。新日鐵住金 <5401> 、商船三井 <9104> 、IHI <7013> など大手主力どころで売り残が買い残を上回っている。実質カラ売りとされる現物株を借りて売る分などを含めると膨大なものになろう。

 どうやらトランプ次期大統領の政策の影の部分を重視し過ぎたようだ。

 したがって、ここからの上昇は、もちろん海外の年金など長期資金の一部が買ってくるとみられるが、むしろ売り方がつくる相場ではないだろうか。

 ところで、なぜ日米株価は世界で群を抜いて高いのか。米国は先行き景気への絶大なる信頼感がある。実際、発表される米国の景気指標はこのところ目をみはるものがある。たとえばGDP、2年ぶりの高水準に達し、住宅の主要指数も最高値を更新している。個人消費も悪くない。

 トランプ次期大統領は財政支出と減税、規制緩和で経済成長率を年平均3.5%程度にまで高めるとしている。どうやら市場はインフレの匂いを嗅ぎつけたようだ。

 では、わが国はどうか。米国金利の上昇で円安は当たり前といった雰囲気だ。

 かくして、日米株価は急上昇をみせている。では今後の株価をどうみるか。

●日柄では天井圏に突入、相場は老境に

 相場には、材料・環境に関わりなく、そのときどきで寿命というのがある。人間と同じである。“騰がれば下がる、下がれば騰がる”という相場格言がある。これは水準に重点を置いている。だが、むしろ日柄の方が大事だと筆者は考える。

 経験則からいえば、ここまでの日柄からいえば12月に入って、いよいよ天井圏に突入したとの感を深くしている。つまり老境に入ったのである。

 こうした場合、多くは高値は延びても2~3週間後、最大で1ヵ月というケースもある。

 いずれにしても、天井圏に入ったとみれば、いつ高値をつけてもおかしくはない。それは今日かもしれないし、明日かもしれないのだ。

 ここからは、日々の値動きを丹念に追っていくことが望まれよう。ただ、はっきりしていることは、天井圏や底値圏では理屈で考えようとしても無意味なのである。天井圏では明るい材料ばかりが念仏のように唱えられるからである。株価の声なき声に耳を傾けるべきであろう。

2016年12月2日 記

株探ニュース

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