【特集】輸出関連株に強烈「追い風」、円安加速で採算改善の“注目株”リスト <株探トップ特集>
三菱電 <日足> 「株探」多機能チャートより
―1ドル110円台の円安復帰で高まる期待、主力輸出株の下期想定為替レートは?―
米大統領選の結果、大方の予想に反してドナルド・トランプ氏が当選。日本経済への影響が注目されたが、次期大統領の減税や投資拡大の方針を受けて米長期金利が上昇。日米金利差の拡大を手掛かりに、外国為替市場で急速な円安・ドル高が進行している。自動車、電機、機械といった輸出関連の主力企業にとって加速する円安進行が強烈な採算改善の追い風となりそうだ。
●日米金利差拡大を映し円安・ドル高進行に拍車
9日の米大統領選の開票途中でトランプ氏の優勢が伝えられると、東京外国為替市場で一時、1ドル=101円台まで円が急上昇した。しかし、その後は一転して連日のように円安・ドル高が進行し、直近ではやや一服感が出ているものの1ドル=112円台での推移と、輸出企業の採算改善期待が高まっている。
トランプ氏は景気テコ入れのために、法人税の大幅減税をはじめ、最高税率の引き下げや税率の簡素化などの所得税減税、さらに相続税の軽減も掲げている。また、道路や橋などの整備を含め5500億ドルともいわれる積極的なインフラ投資拡大方針を打ち出している。そのため、米国は国債を発行して市場からの資金調達を迫られることになり、これが金利上昇を招くという思惑が広がっている。一方で、日本や欧州の金利はゼロやマイナスのため、米国との金利差拡大を見越して、円やユーロを売ってドルを買う動きが活発化しているわけだ。
市場関係者からは「トランプ氏が大統領に就任する来年1月まで、米長期金利はジリジリ上昇する可能性がある」との見方が出ている。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、17日の議会証言で12月13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを示唆しており、金融市場は既に12月米利上げをほぼ織り込み、ドル高と金利上昇に拍車がかかる展開となっている。
●富士重は新型「インプレッサ」の受注好発進
個別銘柄では、自動車メーカーのなかでも米国での売り上げ比率の高い富士重工業 <7270> に注目。同社は2日、17年3月期通期の連結業績予想修正を発表。営業利益見通しを従来の4000億円から3730億円(前期比34.1%減)に引き下げた。売上高予想も3兆1900億円から3兆1800億円(同1.6%減)にわずかながら減額修正。この業績下方修正の背景には、通期業績予想の前提となる為替レートを1ドル=104円(従来は106円)、下期の為替レートを1ドル=100円へとより保守的に変更したことがあった。ところが、最近の円安進行により、輸出採算が急速に改善する可能性が浮上している。また、同社は15日、10月13日に発表した新型「インプレッサ」の受注台数が、発表後約1ヵ月(9月1日の先行予約開始~11月14日)で月販目標2500台に対し、4倍超の1万1050台に達したと発表しており、業績への寄与が期待されている。
●三菱電は、産業メカトロニクス中心に円安享受
三菱電機 <6503> は10月31日、17年3月期の利益予想を上方修正した。営業利益予想を従来予想の2350億円から2500億円(前期比17%減)に増額した。ただ、売上高は円高の影響もあり、従来予想4兆1800億円から4兆1500億円(前年比5.6%減)に下方修正した。最近の円安進行で、営業利益の再上方修正の可能性が高まっている。さらに、ドイツ証券は17日、同社株のレーティング「バイ」を継続し、目標株価を1550円から1750円に引き上げている。円安進行などを評価し、「産業メカトロニクスを中心に円安が利益創出の下支えとなっている」と指摘している。
●日本電産はVRシステム関連製品拡大へ
日本電産 <6594> は10月24日、17年3月期の連結業績予想の修正を発表。売上高を1兆2500億円から1兆2000億円(前期比1.8%増)へ小幅減額したものの、営業利益は1300億円から1350億円(同14.7%増)へ上方修正した。自動車向けモーターなど好採算の商品群が好調で、為替デメリットを吸収して収益を牽引している。前提となる為替レートを1ドル=105円から100円に大きく見直しており、足もとの円安進行はさらなる上方修正の追い風として作用しそうだ。VR(仮想現実)システム(ライトハウス)用FDB(流体動圧軸受)モーターなどVR関連製品の売り上げ拡大も期待材料だ。
●アルプスはiPhone新モデル向けに期待
アルプス電気 <6770> は10月28日、17年3月期の連結業績予想で売上高を7570億円から7190億円(前期比7.1%減)へ、営業利益465億円を380億円(同27.4%減)へそれぞれ下方修正した。円高の影響で電子部品、車載情報機器事業のいずれも売上高と営業利益が従来予想を下振れる見通しとなった。円安進行で、この下振れ予想が逆に上振れに転じる可能性が浮上している。同社は米アップル社のiPhone向け電子部品供給で高い実績を持ち、今下期から新モデル向けで需要回復局面が見込まれている。また、自動車の電装化進展で車載用電子部品点数の増加が同社の収益機会を広げており、12月19日のZMP <7316> [東証M]上場を契機に自動運転分野の開発が加速する方向にあることも期待材料だ。
●サンケンは車載向けパワー半導体が堅調
サンケン電気 <6707> は7日、17年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結決算を発表。売上高は760億5500万円(前年同期比1.6%減)、営業利益は21億6100万円(同26.4%減)となった。事前の第2四半期累計の会社側計画は、営業利益段階で18億円であり、約20%も上回って着地した。通期営業利益の70億円(前期比2.9%増)は据え置かれた。同社は、車載向けなどの パワー半導体を手掛け実力は国内屈指、IoT時代の到来で車載向けにとどまらず次世代家電向け需要開拓に対する期待感もあるようだ。
◆主な円安メリット関連銘柄◆
下期
銘柄 <コード> 為替想定 感応額 株価 PER
コマツ <6301> 105 30 2633.5 27.0
日立 <6501> 100 20 609.3 14.7
三菱電 <6503> 100 30 1576.5 18.3
日本電産 <6594> 100 11 1万0240 30.4
サンケン <6707> 105 10 485 23.5
アルプス <6770> 100 9.6 2873 22.1
TDK <6762> 100 12 7690 18.7
デンソー <6902> 105 25 4980 19.2
ファナック <6954> 100 10 1万9305 36.0
村田製 <6981> 100 35 1万5425 21.0
三菱重 <7011> 100 30 506.8 17.0
日産自 <7201> 105 110 1056.5 7.9
トヨタ <7203> 100 400 6649 12.9
ホンダ <7267> 100 120 3332.0 14.5
富士重 <7270> 100 100 4645 12.8
※株価は30日終値、単位:円、億円、倍
感応額は、1円の円安による通期営業利益増益額。会社発表などから本編集部推計。
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