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【特集】たばこ「追放」本格化、“禁煙・分煙関連”狙い目の株 <株探トップ特集>

日鉄鉱 <日足> 「株探」多機能チャートより

―東京五輪に向け受動喫煙の防止推進、関連銘柄の業績後押し―

 厚生労働省は10月に「受動喫煙防止対策の強化について(たたき台)」を発表した。その内容は、あくまで「たたき台」だが、施設管理者や喫煙者に対して「罰則を適用」し規制するという厳しいものだ。政府は、2020年の東京五輪 に向けて受動喫煙防止を強力に推し進める方針で、世の流れとはいえ、喫煙者は一段と肩身の狭い状況に追いやられる。また、同省が11月14日に発表した「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、現在習慣的に喫煙している人の割合は18.2%、そのうちたばこをやめたいと思う人の割合は27.9%だった。加速する禁煙・分煙社会、注目を集める関連銘柄の動向を追った。

●1箱1000円の衝撃!トランザクション、マルマンに商機

 「自民党の受動喫煙防止議員連盟会長の山東昭子氏が(10月)25日、菅義偉官房長官に、東京五輪に向けた受動喫煙防止対策として、たばこ税の増税で1箱の価格を1000円以上に引き上げるよう申し入れた」と一部報道で伝わり、翌26日には禁煙パイポを手掛けるマルマン <7834> [JQ]、電子たばこの専門ショップ「vape studio」を展開するトランザクション <7818> などの株価が急動意した。“1箱1000円時代”を見据えた思惑的な株価の動きとなったわけだが、この受動喫煙防止に向けた動きは、世界的な流れからみても拡大する一方だ。

 こうした状況下、電子たばこの愛煙家が増加しているが、トランザクションでは「(電子たばこには)たばこ税増税は関係ない。健康リスクも低いと考えており、東京五輪に向けた動きも追い風といえる」(経営企画部)としている。株価は、11月7日に公募増資と売り出しを発表、これを受けて1株当たり利益の希薄化や需給悪化を懸念し急落。ただ、調達資金は、VAPE(電子たばこ)事業の基盤強化を目的とした小売店舗出店にかかる設備資金などに充てる方針で、出店攻勢を強める構えだ。

 ここ数年の相次ぐ値上げで、禁煙を決意する愛煙家も増加している。三日坊主と言われようと、マルマンの「禁煙パイポ」の使用で禁煙を目指した人も少なくはないはずだ。同社は11月14日、「継続企業の前提に関する注記」の記載解消を発表。16年9月期連結決算で、売上高が前の期比1.8%増の65億600万円、営業利益が同38.3%増の1億9700万円、純利益は74.2%増の7400万円となり、2期連続で黒字を計上し、17年9月期業績も黒字幅拡大を見込んでいる。禁煙関連商品で電子パイポの高価格帯商品の発売を計画しており、これも寄与するという。

●義務違反者には罰則も

 たばこ値上げの背景には、政府の健康増進に向けた動きに加え、前述のような受動喫煙防止対策の強化がある。厚労省の「たたき台」では「官公庁や社会福祉施設等は建物内禁煙」、「学校や医療機関等は敷地内禁煙」、「娯楽施設のように嗜好性が強いものは原則建物内禁煙としたうえで、煙が外部に流出することを防ぐための措置を講じた『喫煙室』の設置を可能とする(飲食店等のサービス業等)」としている。義務違反者に対しては、「勧告、命令等を行い、それでもなお違反する場合には罰則を適用することとする」としており、その詳細については、引き続き検討するという。また、たたき台によると、飲食店、ホテル、旅館(ロビーほか共用部分)等のサービス施設は「原則建物内禁煙(喫煙室設置可)」としており、飲食店などでも禁煙に加え分煙が広がりそうな気配だ。

●分煙加速で三菱電、日鉄鉱業に出番

 分煙社会の進展に伴い、既に喫煙室の設置は多くのオフィスなどで進んでいる。しかし、飲食店などにおいては、「客足を鈍らせる」という意見も多く、分煙ムードはなかなか盛り上がらないのが実態だが、今後是正せざるを得なくなる可能性が高い。喫煙室設置の増加で必要になるのは、いわゆる「分煙機(空気清浄機)」で、大型システムからカウンター型のものまでさまざまある。

 三菱電機 <6503> は、この分煙で活躍が期待されている。同社の喫煙用集塵・脱臭機「スモークダッシュ」は、空気中に浮遊するタバコの粒子(塵)と臭いをパワフルに除去するという。職場の喫煙対策では換気扇との組み合わせで効果的な空間分煙を実現するとしている。

 また、日鉄鉱業 <1515> にも注目したい。同社は、資源分野を中核とする企業だが、実は分煙機でも脚光を浴びる存在だ。同社のプラズマ脱臭技術を搭載した「プラズマダッシュ」は、従来の分煙機では除去できなかった、たばこのにおいを大幅に低減。例えば、たばこ4本燃焼後の室内のにおい成分は、9分で99%除去されるという。「今までのものとは、まったく違う製品。ここ2、3年で、問い合わせに加え引き合いも右肩上がりだ。喫煙環境が厳しさを増せば増すほど好影響」(機械営業課)と、自信を表す。

 また、分煙機のレンタルや販売などを手掛ける、ダスキン <4665> 、イトーキ <7972> 、ユニマット リタイアメント・コミュニティ <9707> [JQ]などにも目を配っておきたい。

 禁煙・分煙が叫ばれる日本列島、「もはや、たばこは止めるしかない」と決意する喫煙者も多いが、そうはたやすく止められないという人も少なくないはず。ただし、受動喫煙については他人の健康被害につながるだけに、防止対策待ったなし。今後ますます、関連銘柄の活躍の舞台は広がりを見せそうだ。

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