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【市況】S&P 500 月例レポート ― 米国マーケット、「大虐殺の10月」は免れたものの… (1) ―


 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●多くの投資家が(投資家以外も)11月8日におびえる中、
 「大虐殺の10月」は免れたものの相場は下落

 10月はウォール街にとって最も恐ろしい月とされていますが、それはお化けの仮装で菓子をねだるハロウィーンの風習のせいではなく、株価の実績の悪さと暴落の歴史が原因です。

 1987年10月19日、S&P500は20.47%下落しました(筆者は当時から市場にかかわっていました)。これは1日の下落率としては史上最も大きく、2番目は1929年10月28日の12.34%(筆者は生まれていませんでしたが)、さらにその翌日の1929年10月29日には3番目となる10.16%の下落を記録しています。そんな昔の相場のことは知らないという方々にとっては、2008年の10月(当時も筆者はここにいました)もまた楽しい月ではありませんでした。10月7日は5.74%、10月9日は7.62%、10月15日は9.04%、そして10月22日には6.10%の下落を記録したからです。

 このような過去を踏まえると、今年10月を1.94%の下落で乗り切るのは、前の編集長(この人物は引退したというのに、まだ時々筆者宛てに修正を入れた記事を送ってきます)の言い方を借りれば、ダック・スープ(楽なもの)です。

 問題があるのは月であって相場ではないという点に疑問の余地はほとんどありませんが、一部の専門家は、世界および国内経済、企業業績、政治、金利(関連する景気対策や利上げ速度)に関する問題を指摘します。「公正かつ正直」(最近よく耳にする言葉ですが実態が伴っていないようです)に言って、これらは目新しいものではありません。

 目新しいのは、コミュニケーションの速さ、「すぐに判断できる」ウェブに基づくアプローチ、そして、みんなにとって良くなければ駄目という考えです(元編集長なら、筆者がこのコメントに「社説」という単語を入れ忘れたとメモを寄こすでしょう)。

 2016年の10月は上記の事柄の全てが伴う月でした。米国経済は、住宅セクターに牽引され、ゆっくりとした成長が続きました。実際に企業の利益は予想を上回り(決算発表が終わった上場企業の73%が予想を上回りました。過去の平均は67%)、小売りセクターの業績はまだ発表されていないものの、売上高も増加し、55%が予想を上回りました。より重要なのは、業績がバリュエーションを支え、2016年第4四半期の業績予想も維持されていることです。注目すべきは、現時点での第4四半期の予想は過去最高になるだろう(「だろう」という部分が重要)という点です。

 一方で政治に関するニュースが続きました。大統領選は、55%対45%という従来の差、あるいはそれ以上の接戦が予想されているように、大差での勝利にはならない状況で、2016年11月8日に確定するのは、誰がホワイトハウスの住人になるか、今後2年間の議会(そして最高裁判事)の構成がどうなるか、翌日の11月9日に誰が「大統領再選委員会」のメンバーに登録されるか(今から楽しみだ)という3つの事柄だけでしょう。言葉遣い(法的措置の可能性も)、キャッチフレーズ、非難の応酬による政治的なバトルは、それぞれの党内および党の間の両方で続くとみられます。

 前向きな要素としては、議会構成やプレイヤーが明らかになることで、企業や市場参加者が余分な木の枝葉を落として決定(あるいはコミット)しやすくなる可能性があるということです。英国に関してはとてもそう言える状況ではありません。2019年(米国では大統領再選委員会の活動が最高潮となる時期)の欧州連合(EU)からの離脱を目指し、メイ首相が2017年3月までに離脱交渉を開始する予定となりましたが、英国における未知の状況はまだスタートもしていないのです。EU離脱決定後の最初の英国内総生産(GDP)の伸びは0.5%となり、0.4%だった予想を上回ったものの(2016年第2四半期の0.7%からは低下)、これから英国とEUに及ぶ影響は未知数で、しかもそうした未知数は、大西洋のこちら側の米国よりも対岸の方がはるかに大きいといえます。

※「米国マーケット、「大虐殺の10月」は免れたものの… (2) 」に続く。

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