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【特集】トランプかヒラリーか、9日決着「米大統領選」世界の運命 <株探トップ特集>

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

―投票結果は東京市場取引中に判明、情勢次第で英EU離脱ショック再現も―

 米大統領選はサプライズ続出で8日の投開票を前に、大混戦の様相を呈している。10月下旬には、共和党・トランプ氏が女性蔑視発言でクリントン氏側に一時楽勝ムードが漂った。その後、米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏のメール問題捜査に再着手したことから、トランプ氏が逆襲に転じ支持率は一時急接近した。しかし、7日にメール問題に進展がみられクリントン氏に追い風が吹いた。稀にみる激戦となった米大統領選は、日本時間9日についに決着する。

●フロリダ州などの結果次第で相場乱高下も

 米大統領選は8日の投票を経て、日本時間の9日午前8時頃から投票結果が順次、判明する見通し。日本時間の午後1~2時頃にはある程度の情勢が明らかになりそうだ。

 9日の東京市場は激戦州のフロリダの開票が始まる午前10時以降、市場の関心はピークを迎え、オハイオ州やアリゾナ州など情勢が不透明な「スイングステート」の結果次第で相場は乱高下する可能性がある。

 米大統領選は10月以降「サプライズ」が続出した。トランプ氏の女性蔑視発言でいったんクリントン氏優位に大きく傾いたが、FBIによるクリントン氏のメール疑惑への再着手でトランプ氏が巻き返し、両者の支持率は拮抗した。

 しかし、さらに7日早朝にFBIのコミー長官がクリントン候補のメール問題に関して、犯罪に相当しないという結論に変更はない、と議会に対して伝えた。メール問題の行方が懸念視されていたクリントン氏には追い風となり、7日は大幅な株高・円安が進んだ。「もしクリントン氏が当選したとしても選挙後もメール問題が懸念材料となるとみられていただけに、その警戒感が薄らいだことの意味は大きい」(市場関係者)という。

●トランプ氏勝利なら日経平均1000円安に急落!?

 アイオワ大学内にある電子市場(IEM)の米大統領選挙の先物市場では、直近で7対3でクリントン氏勝利とみている。一時は9割超の確率でクリントン氏勝利とみていたが、メール問題の再燃で6対4前後へ急接近。ただ、足もとで再度、クリントン氏の巻き直しが進んでいる様子だ。

 もっとも、クリントン氏が有利とみられ楽観論が出てきているだけに、逆にトランプ氏が逆転勝利した場合、「6月のBrexit(英国のEU離脱)の再現」となる懸念が指摘される。外為オンラインの佐藤正和シニアアナリストは「クリントン氏が勝利しても、為替は1ドル=105円前後へ円安が進む程度だろう。逆にトランプ氏なら100円割れへ急落する事態もあり得る」という。6月のBrexitでは日経平均株価は1300円安を記録した。それだけに、トランプ・リスクの織り込みが緩んだなかでの同氏の逆転勝利となれば、「日経平均1000円超のショック安も」と指摘する見方が市場には出ている。

●「クリントン・リスク」の浮上も、獲得選挙人数が焦点に

 いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員も「クリントン氏が勝っても株価の上昇は限定的だろう」という。むしろ「クリントン・リスクを織り込むかもしれない」とも指摘する。焦点は、上下両院の議会選挙の行方で、上院は民主党が勝つ可能性があるが、下院は共和党の過半数確保が固いとみられる。このため、議会運営が難しくなり「クリントン氏は政権発足と同時にレームダック状態となる」ことを危惧する。またクリントン氏は、移民規制や民主党の大統領候補選で善戦したバーニー・サンダース氏やトランプ氏の支持勢力のような反グローバル化勢力に気を使う必要も出てくる。特に、「トランプ氏は、本音での対立を政治の場に持ち込んだ。利害の対立の収拾は難しいだろう」とも秋野氏は言う。

 第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「今後の相場の織り込み次第だが、クリントン氏が勝利した場合、材料出尽くし感で売りが優勢となることもあり得る」とみている。また、大手証券のアナリストは「本格的なリスクオン相場に至るにはクリントン氏が300を超える選挙人数を獲得する必要があるだろう」とも予想する。

 もちろん、クリントン氏優位とは言え、依然、「声なき声が前面に出てトランプ氏が勝利する可能性」(アナリスト)はある。いずれにせよ、日本時間の9日には、よほどのことがない限り選挙結果は判明する。市場では「クリントン勝利なら、電気自動車のような環境関連やIT・ハイテク関連が評価され、トランプ勝利なら米国の不動産、金融、国防、エネルギー銘柄が買われる」と見られている。

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