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【特集】立ち上がる 有機EL “4兆円”メガマーケット、「王道」関連株を今 <株探トップ特集>

平田機工 <週足> 「株探」多機能チャートより

―素材・製造装置で飛躍する日本企業、マーケット動揺でバーゲンハントの好機に―

 10月は順調に日経平均株価が切り上がり、秋晴れの相場環境を満喫した東京株式市場だったが、11月相場入りとなるや空模様が急変し、リスク回避売りの暴風雨にさらされる格好となっている。しかし、投資家の不安心理先行で大きく下押す場面が、得てして絶好の買い場提供となっているのは相場の常だ。ここは、中期的に色褪せることのない有力テーマに乗る株を、安い株価で存分に仕込むバーゲンハントのチャンスととらえたい。

●4兆数千億円のメガマーケットが待つ

 その物色テーマとして改めて注目したいのは、ずばり有機EL関連株だ。有機ELは、「有機エレクトロルミネッセンス」の略で、特定の有機物に電圧をかけると発光する特性を有し、ポスト液晶を担う次世代ディスプレーとして注目されている。液晶では必須だったバックライトが不要になり、スペースに余裕が生まれて一段の薄型化も可能となる。低消費電力かつ動画の応答速度も液晶との比較でケタ違いに速く、折り曲げて加工することも可能という優れモノ。また、黒の発色で優位性があるのも特長である。大型テレビのほかスマートフォンなどモバイル端末向けで急速に需要が高まっており、2030年には年間4兆数千億円規模の市場が試算される折り紙付きの成長マーケットだ。

  有機ELパネルの量産技術で世界に先駆するのは韓国のサムスンとLG。ここ最近はこの二大巨頭に中国が猛追する格好で怒涛の設備投資増強に動いており、韓国との競合によってこれまでの業界地図が変わる可能性が出ている。3日付の日本経済新聞では、京東方科技集団(BOE)など中国パネルメーカー主要6社が新工場を相次ぎ建設し、2020年ごろまでに投資総額が2兆円を超える見通しにあることを伝えている。BOEはスマホに換算して月産1000万枚規模を供給できる有機ELパネル工場を建設中であると報じられているほか、華星光電(CSOT)もBOEと同規模の生産設備建設に動いているという。

●iPhone次期モデルで有機EL解禁へ

 この背景にあるのはいうまでもなく米アップルの存在だ。アップルは来年投入するiPhone次期モデルに有機ELパネルを採用する方針にあり、これが業界を色めき立たせている。 有機ELパネルの市場は現状1兆6000億~7000億円規模、そのうちの8割強がスマートフォン向けという状況で、iPhoneの“有機EL解禁”は絶大なインパクトがある。

 こうした環境下、有機EL材料の開発力で日本の実力は群を抜いており、 製造装置分野でも半導体や液晶で培った高技術力が生かされることで、時流に乗って業績を飛躍させる日本企業が今後相次ぐ可能性が高い。

 国内のパネルメーカー大手は鴻海精密工業傘下で経営再建を図るシャープ <6753> [東証2]と中小型液晶パネルで世界屈指のジャパンディスプレイ <6740> 。シャープは次期iPhoneに有機ELが採用される方向にあることなどを受け有機EL生産強化を進めているほか、ジャパンディスプレイも昨年、共同出資で有機ELディスプレー専業のJOLED(ジェーオーレッド)を発足させ、有機ELに経営資源を傾注する構えを明示している。

●有機EL製造装置分野で活躍する銘柄群

 製造装置メーカーとして東京市場で存在感を漂わせるのは、ファブレスメーカーとして業績を飛躍させるブイ・テクノロジー <7717> だ。同社株は4日の全般波乱含みの相場の地合いにも流されず、まとまった買いに6%高近い逆行高を演じた。同社は有機EL蒸着プロセスで必須となるファイン・ハイブリッド・マスク(FHM)を手掛け、活躍が期待されている。

 また、11月相場で急速な調整を余儀なくされてはいるが、昨年11月を起点に大化けトレンドを形成している平田機工 <6258> [JQ]は有機EL関連株の出世頭といってよいかもしれない。同社は発注先メーカーの設計図を基に生産する、特定有機ELディスプレー製造装置メーカー向け真空チャンバーの受託製造を手掛けており、成長期待が強い。株価は10月末時点で8630円の上場来高値を形成している。ちなみに昨年の10月末の株価は1074円であり、1年でほぼ8倍となった。

 このほか、有機EL向けイオン注入装置で需要をとらえる日新電機 <6641> や、真空技術に強みを有し、薄型ディスプレー製造装置メーカーとして中国向けで高い実績を持つアルバック <6728> にもマーケットの視線は熱い。また、タツモ <6266> [JQ]は半導体装置が主力ながら有機EL分野も深耕、有機ELディスプレー開発の国家プロジェクトに参画するほか、高効率・高演色の有機EL照明の開発なども進捗させている。さらに、ワイエイシイ <6298> は半導体や液晶向け分野での技術力を生かし、有機EL向けにプラズマ・ドライエッチング装置などで特需獲得への期待がある。

●素材関連メーカーにも商機拡大の恩恵

 一方、有機EL材料分野については日本企業のテリトリーであり、マーケットの裾野の広がりも大きい。正孔輸送材のほか、韓国子会社を通じて発光体を手掛ける保土谷化学工業 <4112> は、サムスンやLGによる目の色を変えた積極投資を背景に業績変貌への期待が膨らんでいる。一方、石油元売り大手の出光興産 <5019> の有機EL材料分野での実力の高さは広く知られるところで、蛍光材料のトップメーカーであるとともに、発光体、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材など一括供給する力を備え、その展開力は一頭地を抜いている。このほか素材では住友化学 <4005> や三井化学 <4183> 、東ソー <4042> などの大手化学メーカーも、売り上げへの寄与度は小さいとはいえ注目だ。

 有機EL用水分除去シートのダイニック <3551> やフレキシブル有機ELディスプレー量産技術開発を進捗させるリンテック <7966> 、有機EL用有機薄膜素子を手掛けるジオマテック <6907> [JQ]、ファインケミカル専業で有機ELを含めた新たな有機材料の開発に注力するスガイ化学工業 <4120> [東証2]、精密部品加工を手掛けるマルマエ <6264> [東証M]なども有機EL製造装置用の高精度部品で今後収益機会に恵まれる可能性がある。

 マーケットの関心が高く投機筋の注目の的となりやすいのが、有機EL用ITO膜を手掛ける倉元製作所 <5216> [JQ]。有機EL関連特許の多数出願で注目されるケミプロ化成 <4960> [東証2]、ファインケミカル分野に強く有機EL材料も手掛けるマナック <4364> [東証2]なども折に触れ派手な値動きをみせるだけに目が離せない。


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