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【特集】「ドローンの用途広がり需要拡大に拍車、今後の事業戦略は?(1)」ヤマハ発動機・長谷営業部長に聞く!<直撃Q&A>

長谷吉博氏(ヤマハ発動機・UMS事業推進部 営業部長)
 ドローン(無人航空機)を活用したビジネスが広がりをみせている。高機能化と用途拡大を背景に、今後も飛躍的な市場拡大が予想される。そこで、既に30年以上前から無人へリコプターの開発を手掛け、農業用をはじめとして数多く実績を積み重ねてきたヤマハ発動機<7272>のUMS(無人システム)事業推進部の長谷吉博営業部長に現状と将来の展望を聞いた。

Q1 無人ヘリコプターのトップ企業として30年超の実績をお持ちですね

長谷 1983年に農林水産省外郭団体の一般社団法人農林水産航空協会の開発委託を受け、無人ヘリの開発に着手し農薬散布を開始しました。さらに、87年には世界初の産業用無人ヘリ「R50」を開発し、翌88年から本格販売をスタートしました。97年には、新開発の姿勢制御システムを搭載して基本性能を大幅に向上した「RMAX」を発売、その後GPSによる速度制御機能を付加し一層の操縦の安定性を実現した「RMAX Type2G」を2003年に販売しました。

 そして、13年に「FAZER」という積載重量24キログラムの機種を開発。今回16年10月から市場投入した積載重量32キログラムの「FAZER R」を実現しました。この間に非農業分野で活躍する自動航行型機も実用化し、既に33年間の実績を積み重ねています。

Q2 無人ヘリ普及の背景には農業を巡る環境変化があるようですが…

長谷 農業従事者の高齢化や後継者不足、さらに環太平洋経済連携協定(TPP)を見据えた効率化など、農業を取り巻く環境は大きく変化しています。まず政治面では、農業基盤の改革ということで、効率化、省力化、低コスト化を中心に、安倍内閣の推進する攻めの農業を含めて大きな改革を迫られています。また、経済面では、異業種からの農業への参入、技術の変化としてはマルチローター(3つ以上のローターを搭載した回転翼機)が一気に市場投入されたことなどにより、いままで経験したことのないスピードで大きく様変わりしています。こうした変革の時期を迎えているなかで、当社としては、商品力、営業力、サービス力を強化していきます。

Q3 農薬散布に用いられる無人ヘリのカバー率が拡大していますね

長谷 水稲防除の防除機器別で、無人ヘリのカバー率は既に40%以上を超えています。つまり、食卓に上がるご飯の3杯に1杯以上は無人ヘリが防除したことになる計算です。産業用無人ヘリの普及は急速に進んでおり、ヘリコプターを使った防除の場合、03年に有人と無人の比率が逆転し、現在では、無人ヘリ防除が主流となっています。

Q4 米国で農業用無人ヘリについて画期的な使用認可を受けたそうですが

長谷 15年に米連邦航空局(FAA)が、当社が開発した農薬散布用小型無人飛行機「RMAX」に対し、機体の安全性や性能など非常に厳しい審査をクリアしたとして、米国で無人機を農薬散布など商用利用して良いという正式な認可を与えました。

 今年から一部で散布をスタートしており、17年からは本格的に商業散布をスタートします。例えば、斜面の多いブドウ畑では、日当たりが良く高級ワインの原料となるブドウが収穫できるので、散布業として請け負った場合に利益率が高くなります。国内は機体のセールスビジネスが中心ですが、海外ではセールスにプラスしてノウハウなどのサービスビジネスが有効です。

 農薬散布用小型無人飛行機としての適用が決まったのは、今回がはじめてです。これは、ヤマハ発動機製の機体が、世界一厳しいとされる農薬散布の審査をパスし、世界のドローンに先駆けて、農業分野における小型無人飛行機の実用化の道を開いたことを意味します。

「ドローンの用途広がり需要拡大に拍車、今後の事業戦略は?(2)」へ続く

出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)

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