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【特集】「経験」の価値、体現型消費時代の企業の取り組み <株探トップ特集>

エイベGHD <日足> 「株探」多機能チャートより

―増える「コト消費」、ライブ市場規模は4年連続過去最高に―

 今の若者は“経験”を重視する。テレビ、アルコール、クルマなど「若者の○○離れ」が言われて久しく、「モノが売れない」との企業の悲鳴が聞こえてくる。一方で、その場の雰囲気を感じ、それを共有することができるライブイベントやスポーツ観戦を代表とする「コト消費」市場は拡大中だ。最近では、写真を撮って、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上にアップしたいために話題の場所などに足を運ぶ若者も少なくない。消費の潮流が急速に変化している今、企業側のシェアとネットを絡めた取り組みに注目したい。

●音楽フェスの市場規模は上昇トレンド続く

 ぴあ <4337> の調査機関であるぴあ総研が発表したライブ・エンタテインメント白書によると、音楽ライブやミュージカルをはじめとするステージなどの2015年の市場規模は5119億円と前年比20.2%増で、統計を取り始めた2000年以降の過去最高記録を4年連続で更新している。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの野外音楽フェスティバルの動員数が軒並み増えたことに加え、ダンスミュージックを中心にしたEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の種類も広がったことなどが要因としている。

 そして、東京五輪・パラリンピック開催に伴う競技場などの改修工事が立て続けに行われるなか、首都圏を中心にライブ会場不足が懸念されていたが、それほど影響は受けていないようだ。ライブマネジメント事業も手掛けているエイベックス・グループ・ホールディングス <7860> は、「大きなアリーナの改修時期は事前に知っており、その状況を前提としたライブの企画を組んで対応できた。また、平日での公演を企画し、PRに力を入れて動員数を確保して複数日の公演を実現している」(コーポレート広報課)としている。また、今後の会場不足を補う取り組みについては「自治体、商業施設などのライブ・エンタテインメントに利用されていない施設が数多くあるので、そういった会場の発掘が今後の課題」とも話している。

 前述のぴあ総研によると、音楽フェス市場は飽和状態と言われながらもライブ内容や開催場所などの新陳代謝と多様化を進めながら拡大を続けていくとし、16年もこの上昇トレンドが続くとしている。そうなると、大物アーティストを有し、大規模なライブを手掛けるアミューズ <4301> の動きも見逃せない。また、ミュージカルなどの観劇市場も拡大しており、歌舞伎座を運営する松竹 <9601> も関連銘柄として注目されそうだ。

●スポーツ観戦市場も拡大中

 スポーツ分野でも「観戦」といったコト消費の需要は拡大している。日本野球機構(NPB)が発表した16年の公式戦入場者数はセ・パ両リーグとも過去最高を記録した。大型のライブ会場にもなっている東京ドーム <9681> はそのどちらからの恩恵も受けそうだ。また、スポーツ庁と経済産業省は、20年の東京五輪・パラリンピックを機に、スポーツ関連産業の市場規模を15年の5兆5000億円から25年までに15兆円に拡大するという目標を掲げている。政策の中で収益の上がるスタジアムの改修を挙げているため、国策の追い風も期待できそうだ。

●日本の若者はSNS映えを意識した消費行動に

 さて、コト消費の定番といえば旅行だが、最近旅の目的に変化があるという。エイチ・アイ・エス <9603> の広報担当者は、「SNSの発展により、○○でこういう写真を撮りたい!などの目的で行き先を決める方もいる」と話す。最近では、無料の画像共有アプリ「インスタグラム」に写真を投稿して「いいね!」をたくさん得ることがステータスという傾向があり、写真映えしそうな風景、食べ物という観点から選ばれることも多い。

 一方、訪日外国人観光客がこれからの季節に求める「コト消費」は、河口湖で富士山を眺めながらのワカザギ釣りやスノーモービルに乗ることだという。「雪の降らない国の方は、日本の四季としての冬を楽しんでいる」と話す。鉄道・バスの運営に加え、富士山麓周辺で富士急ハイランドなどのリゾート施設を展開する富士急行 <9010> に注目。他にも自国にはない日本独自のふくろうカフェや、ラーメンの湯切り体験などは相変わらず人気であり、アクティビティの裾野は広がっていきそうだ。

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