【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 株価の値動きに重視を
株式評論家 植木靖男
「株価の値動きに重視を」
●不安材料織り込めば再び4月高値を目指す
東京株式市場が大きく揺れている。大きなフシであり、かつ昨年6月以降の調整を終了することの確認となる4月高値1万7572円を目前にして刀折れ矢尽きた格好だ。
その背景については、10月物静かだった日銀が10月31日~11月2日と3日間連日ETFを買い煽った反動もあるが、確信犯はやはり米国株の一層の調整、それに伴うドル安円高である。
米国株は今年8月に大天井を打ったあと、1万8000ドル台前半で長い保ち合いに入ったが、このもみ合いを下放れてきた。つまりこの保ち合いが下げの中段の保ち合いであったことが明白になった。
なぜ、この保ち合いが底もみとならず、いわゆる二段下げにつながったのか。
いうまでもなく、米大統領選の不透明感にある。劣勢が伝えられた共和党トランプ氏の支持率が民主党クリントン氏のそれに並ぶようになったからだ。
いずれが勝っても先行き大きな期待が持てないとされるなか、トランプ氏支持率上昇で株価が下がるのは、やはりウォールストリートはクリントン氏を歓迎していることが明らか。
このようにみると、選挙当日までは米国株は様子見に終始することになる公算が大きい。
問題は、そのあとである。仮にクリントン氏が勝っても米国株は当分、高値更新は望めず、レンジ相場に推移しそうだ。
逆にトランプ氏が当選すれば、一段安は免れないが、このケースでは株価の落ち着き処を探るのは難しい。多くのアナリストは株価の予想値を悲観的にみるのであろうが、材料を判断して、株価を推量するのは危うい。むしろ株価の値動きから、材料の軽重を問うのが正しいのである。
ところで、日本株であるが、4月高値を突破できずに崩れたが、6月安値からの日柄を考慮すれば、柿の実が熟し切って落下したわけではない。だとすれば、いったん不安材料を織り込めば再び4月高値を目指すことになろう。
熟しているか否かが日米株価の相違点である。
当面、日本株を左右するのはやはり為替とみられる。さいわい多くの主力輸出企業は下期の想定レートを105~110円から100円に見直している。過度の不安視は避けたい。
とはいえ、11月4日現在、事ここに至って多くの銘柄が“カラ売り歓迎”化現象をみせている。売りの回転が効かなくなる水準はどこか。
ここは誰がみても判断がつかない材料の分析よりも、相場の値動きを重視することの方が当面より大事であることはいうまでもない。
2016年11月4日 記
株探ニュース