【特集】東京パラリンピックへ、「バリアフリー化」で活躍する企業 <株探トップ特集>
新明和 <日足> 「株探」多機能チャートより
―“音声誘導”点字ブロックやホームドアなど加速する普及―
いまだ興奮冷めやらぬリオデジャネイロ五輪の熱気だが、2020年の東京大会に向けてカウントダウンが始まったいま、もはや感動に酔いしれている暇はない。会場建設に絡み多くの問題が発生しており暗雲漂うといった感もあるが、もはや待ったなし。オリンピックはもちろんのこと、パラリンピック開催に向けてバリアフリー化も加速させて行かなければならない。活躍期待が高まる関連銘柄を探った。
●設置加速するホームドア
東京パラリンピックは、オリンピック終了後の20年8月25日(火)~9月6日(日)に開催される予定だ。特に、パラリンピックでは世界各国からさまざまな障がいをもった多くの選手、大会関係者、そして観客が訪れることになる。もちろん、バリアフリー化はパラリンピックに向けてだけではなく、高齢化が加速する日本にとって、最重要ともいえる課題であることを忘れてはならない。
株式市場で、まず注目を集めるのが乗客の転落、列車との接触防止などを目的とする駅のホームドアの設置に関連する銘柄だ。巨額投資でホームドア設置を加速するJR東日本 <9020> はもちろん、私鉄各社も安全対策に多くの資金を投じている。特にJR東日本は、9月6日に「従来のホームドアより開口部が広く、低コストで工期短縮可能な『新たな形式のホームドア』(JR東日本メカトロニクスが開発)を横浜線町田駅に設置し、検証を進めていく」と発表しており注目が集まっている。
ホームドアの中核銘柄としては東鉄工業 <1835> 、ナブテスコ <6268> 、京三製作所 <6742> 、日本信号 <6741> 、高見沢サイバネティックス <6424> [JQ]などが挙げられる。折に触れて株価も動意しており今後も目が離せない存在だが、多少食傷気味の嫌いがあるのは事実。見逃されているバリアフリー関連銘柄はほかにも数多くあり、今後スポットライトを浴びる可能性があるだけに目を配っておきたいところだ。
●点字ブロックに需要拡大も
バリアフリー化は、建物だけにとどまるものではない。歩道、ホームなどに設置されている黄色い視覚障がい者誘導用ブロック(通称点字ブロック)もそのひとつだ。最近では、ICタグを利用した位置情報音声誘導システム搭載のブロック(ことばの道案内ブロック)も見かけるようになった。太平洋セメント <5233> の子会社で、視覚障がい者誘導用ブロックの大手・太平洋プレコン工業では「点字ブロックは、パラリンピックに向けて歩道などの整備が進むなか、売り上げの拡大に繋がると予想している。ことばの道案内についても、今後の需要拡大に期待したい」(営業本部)と言う。
●立体駐車場、エレベーター関連にも活躍期待
06年、バリアフリー新法(高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が制定されたことを背景に、ジワリ進んでいるのが機械式駐車場(立体駐車場)のバリアフリー化だ。車いすの運転者にも乗降しやすいスペースの確保、段差などのフラット化、車いすに乗ったままでの操作、非常停止スイッチ増設など課題は多い。この分野では新明和工業 <7224> や日成ビルド工業 <1916> などに注目が集まるが、これら設備については、まだまだオプションによる設置の導入が多いようだ。ただ、障がいを持つ人との共生実現や高齢化社会の進展を背景に今後の需要拡大が予想される。
また、忘れてはならないのが、エレベーター 、エスカレーターの設置。東京都内においては普及が加速度的に進んでいるが、国内全体となるといまだ不足している状況だ。日立製作所 <6501> 、東芝 <6502> 、三菱電機 <6503> のビッグ企業を中心に、国内4位で動く歩道でも注目したいフジテック <6406> 、エレベーター用センサーの東洋電機 <6655> [名証2]にも注目が集まる。
あるバリアフリー化に関連する企業の担当者は、「言い方は好ましくないかもしれないが、東京五輪で予算がとりやすくなったのは事実」と話す。この発言の良し悪しはともかく、少なくともパラリンピックに向けたさまざな動きは関連企業にとって追い風なのは確かだ。都民ファースト、アスリートファーストが叫ばれるなか、バリアフリー化の推進は間違いなく東京五輪のレガシーにふさわしいものになる。
株探ニュース