【特集】大塚竜太氏【外国人売り凌駕、日本株浮上のシナリオを読む】(1) <相場観特集>
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
―下期入り東京市場、上値メド・期待銘柄は?―
16年度下期相場入りとなった東京市場は、終始買い優勢で日経平均株価は反発に転じた。しかし、薄商いが際立つなか上値追いに自信の持てない展開が続く。最大の不安材料は外国人の日本株に対する売り姿勢だ。果たして秋から年末に向けた2016年相場の最終コーナーで日経平均は加速するのか失速するのか、第一線で活躍する市場関係者のプロの視点を紹介する。
●「日経平均は年末に向け強調大転換も」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
日銀のETF買いが外国人売りの受け皿になっているにもかかわらず、日経平均は上昇軌道に乗ることができていない。これを悲観的に話す市場関係者も多いが、実態はそれほど深刻な状態ではない。市場環境はこれから明るくなると考えている。
9月20~21日に開催された日銀の金融政策決定会合で新たに採用された手法は長期国債の買い入れを調整することでイールドカーブをコントロールし、長短金利差で利ザヤを稼ぐ金融機関に有利に働くように配慮された。また、「オーバーシュート型コミットメント」により、物価上昇率2%を安定的に超えるようになるまでは徹底的にマネタリーベースを拡大させる努力を続けるという方針を明示しており、株式市場にとっては強力な追い風となる。
9月に日銀は733億円のETF買いを連日のように発動させ外国人売りの受け皿となったが、これはヘッジファンドの売り仕掛け的な要素が大きく、恒常的に続くものではないとみている。10月は、外国人投資家は買い戻しに転じる可能性がある。時間軸に関係なくデフレ脱却まで金融緩和を続けるという日銀の不退転の構えは、外国人にも伝わっている。これでは喧嘩しても始まらない。ショートポジションをとるファンドはいかに日本株を買い戻すかに腐心しているところではないか。
今回の日銀短観は市場コンセンサスを若干下回ったが、これを特に悪材料視する動きはみられない。今年度の想定為替レートは1ドル=107円92銭まで修正された。実勢からはまだかなりの円安水準で前提が甘く下方修正リスクを気にする向きもあるが、今年4月、5月の月中平均は1ドル=109円台だったこともあり、為替予約なども考えると、それほどカイ離した円安水準とも言えない。9月以降、現在のドル円相場である1ドル=100円近辺の水準が続いたとしても全産業ベースの経常利益は9%程度の減益にとどまり、株式市場ではこれについては既に織り込んでいる。為替市場も下期は今より円安方向に振れるとみており、これによって経常減益幅が縮小するようなら、全体相場にはポジティブに働くだろう。
年末に向けた日経平均のレンジは、下値は下げても1万6000円程度まで。上値については米国株次第の面はあるものの1万9000円台をうかがう強調相場への大転換も十分にあり得るとみている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。1988年~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。 2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
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