【特集】田部井美彦氏【外国人売り凌駕、日本株浮上のシナリオを読む】(3) <相場観特集>
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
―下期入り東京市場、上値メド・期待銘柄は?―
16年度下期相場入りとなった東京市場は、終始買い優勢で日経平均株価は反発に転じた。しかし、薄商いが際立つなか上値追いに自信の持てない展開が続く。最大の不安材料は外国人の日本株に対する売り姿勢だ。果たして秋から年末に向けた2016年相場の最終コーナーで日経平均は加速するのか失速するのか、第一線で活躍する市場関係者のプロの視点を紹介する。
●「米大統領選と12月利上げの有無が焦点に」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
10月相場を左右する大きな要因として米大統領選挙がある。現状、クリントン候補が優勢との見方が多いが、市場はこれを完全に織り込んでいるわけではない。クリントン大統領誕生となれば、これまで売り込まれていた新興国を中心とした債券の価格や通貨が10%程度上昇することが予想される。
次の焦点は、米国が12月に利上げに踏み切るかどうかだ。これまで、米国では比較的弱めの経済指標が続いていたこともあり、12月利上げの可能性が遠のく印象が強まっていた。ただ。今週末7日に発表される米9月の雇用統計をはじめ、予想に比べて強めの経済指標が続くと12月利上げの可能性が高まってくる。12月の米利上げが見送られれば、円高・ドル安を招くことにもなり、日本株にとってはマイナス要因となる。
このところ、外国人投資家による日本株の売り越し傾向が続いているのは、日銀の上場投資信託(ETF)買いが受け皿にされているという印象は否めない。今後10~11月にかけ、海外ファンドの決算時期の到来に伴って、しばらく売りが継続する懸念もある。ただ、手持ちのポジションがある程度軽くなった時点からは、年末にかけて買い転換してくる可能性もある。今後の日経平均株価は、上下動を繰り返しながらも年末には1万8000円に接近する推移を予想している。下限は1万6000円程度のレベルで踏みとどまるのではないか。
注目銘柄としては、ソニー <6758> を挙げたい。同社傘下のソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売する「プレイステーション4」(PS4)対応のVR(バーチャルリアリティー)システム「プレイステーション ヴィーアール(PS VR)に加え、関連するソフト各社にも関心が集まりそうだ。このほか、今後の景気対策で見直される大成建設 <1801> に代表される建設株、自動運転のセキュリティー関連で高い技術力を持つアドソル日進 <3837> にも注目したい。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース