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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆風雲急の北朝鮮情勢◆


〇北朝鮮情勢が大きな不透明要因になる可能性〇

20日の金融市場は、日米金融政策決定直前で膠着感の強い展開となった。単に金融政策の有無だけでなく、その先に大きな不透明要因が幾つもあり、方向感を得られない点も背景だ。一つは米大統領選の行方、二つは英国のEU離脱交渉の行方、さらに中国情勢もあるが、新たに具体的課題として北朝鮮情勢が急浮上している。いずれも二転三転するリスクがある。

内外のメディアは一斉に、中国の警察が遼寧省・丹東の貿易会社「丹東鴻祥実業発展」を捜査していると報じた。19日付米WSJ紙が米中共同で北朝鮮支援疑惑企業の摘発に動いていると報じたことを受けた流れだ。ウラン濃縮に使われる遠心分離機など必要資材の取引を行っていた疑いがあるとしている。捜索は15日から行われ、国連安保理の北朝鮮非難・制裁決議の駆け引きとつながっていると見られる。

ここに来て、北朝鮮がミサイル・核の実験を連発し、精度が急に向上している背景に二つの見方がある。一つは表面上核開発を放棄したイランが資金・技術を北朝鮮に渡し、代理開発を行っているとの見方。もう一つは、潤沢な開発資金を元に中国・東北部との交流が急活発になり、必要な資材や技術を入手しているのではないかと言う点。中国と北朝鮮の関係は、金正日体制では江沢民の庇護を仰ぎ、上海閥とのつながりが密接と見られてきたが、張成沢事件で切れ、伝統的な中国東北部とビジネスライクな関係が緊密化(不況に喘ぐ東北部にとっては金蔓)しているとの観測だ。北朝鮮の鉄鉱石や無煙炭取引の急増、密貿易の活発化などが指摘されている。

南シナ海問題などで孤立化する習近平体制にとって、米国と共同歩調を取れる課題と映り、最近の遼寧省腐敗摘発(全人代代表617人のうち454人を資格停止処分、45人を当選無効にした。幹部級の汚職摘発も相次ぎ、地盤とする李克強首相との権力闘争の一環と看做されてきた)も連動している可能性がある。20日付韓国・中央日報は台湾メディアが報じたとして、「中国は核施設を狙った米国の軍事作戦を黙認する方針を決めた」と伝えた。核施設の「外科手術」と金正恩委員長を除去する「斬首作戦」が含まれているとしている。米軍は今週中にも戦略爆撃機B52、B2を韓国に派遣する見通しで、否が応もなく朝鮮半島の緊迫感が高まると見られる。

問題は実際に排除行動が起こった場合、その後の展開が全く読めない点であろう。北朝鮮のミサイル・核の開発が放置できないレベルに来ている点は共通認識となりつつあるが、その後の体制で合意の動きは見当たらない。東アジア情勢の緊迫が一気に緩解するとの楽観視も出来ず、市場は消化難と見ていると思われる。リスク回避の動き、展開シナリオ模索の動きを注視することになろう。


以上

《TM》

 提供:フィスコ

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