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【特集】KDDI Research Memo(1):通信企業からライフデザイン企業への変革を目指す

KDDI <日足> 「株探」多機能チャートより

KDDI<9433>は、モバイル事業と固定事業を1社で提供する総合通信事業者。国内では個人、法人向けにモバイル通信(au携帯電話/高速データ通信)と固定通信(FTTH/ CATV/固定電話)サービスなどを提供するほか、海外ではデータセンター事業を中核としたグローバルICT※1事業のほか、主に新興国でのグローバルコンシューマ事業を展開する。主力の国内通信事業では、モバイルは3G/LTE※2やWiMAX※3ネットワーク、固定はFTTH※4やケーブルテレビなど、様々なアクセスラインのインフラ基盤を構築しており、2016年3月末時点でモバイル約6,300万回線(au + UQ、連結ベース)、約固定880万世帯数(FTTH + CATV、パーソナルセグメントベース)の顧客基盤を確立している。世界28地域63都市114拠点の海外拠点を有する。

※1 Information and Communication Technologies:ICTs(情報通信技術)の略。
※2 Long Term Evolutionの略で、無線通信技術の1つ。
※3 Worldwide Interoperability for Microwave Accessの略で、無線通信技術の1つ。
※4 Fiber to the Homeの略。通信事業者の設備からユーザー個人宅までを光ファイバーケーブルでつなぐアクセス方式。

前中期目標の最終年度である2016年3月期連結業績(国際財務報告基準:IFRS)は、売上高が前期比4.6%増の4兆4,661億円、営業利益は同12.3%増の8,326億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同15.7%増の4,949億円と、増収、2ケタ営業増益となり、営業利益は3期連続の2ケタ成長を達成した。主力のパーソナルセグメントが3M戦略の推進に伴うモバイル通信料収入と端末販売収入の増加を背景に堅調に推移したことが主要因。加えて、バリューセグメントにおけるauスマートパス※などの会員数の増加や、子会社の増益なども寄与した。

※アプリ(コンテンツ使い放題)、会員特典(会員限定クーポンなど)、あんしんサービス(iPhone・iPad故障時の修理代サポート、オンラインストレージ、ウイルス対策など)を月額372円で利用できるサービス。

2016年3月期決算発表と同時に2017年3月期から2019年3月期までの3ヶ年の「中期目標~19.3期に向けて~」を発表した。その内容は、端末、料金、ネットワークの同質化が進むなかで、「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を事業運営方針として、持続的な利益成長と株主還元のさらなる強化の両立を通じて、企業価値のさらなる向上を目指すというもの。財務目標として、連結営業利益年平均成長率(CAGR)7%、au経済圏流通総額2兆円超を掲げ、事業成長に向けたM&Aとして、3年間累計で5,000億円規模を実施する計画。一方、株主還元については、最低限のコミットメントとして配当性向を従来の30%超から35%超へ引き上げると同時に、成長投資とのバランスに応じた自己株式取得を実施する計画。なお、取得した自己株式については、発行済株式数の5%を目安として、超過分は消却する方針となっている。

新たな中期目標の初年度となる2017年3月期業績は、売上高が前期比5.2%増の4兆7,000億円、営業利益は同6.3%増の8,850億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同9.1%増の5,400億円と、増収及び16期連続の営業増益を見込む会社計画。弊社では、MVNO※1の台頭によるマイナス影響が主力のパーソナルセグメントで見られるものの、1)auスマートバリューによる顧客の囲い込み、販売手数料の抑制などにより、パーソナルセグメントの安定成長が続く、2)ジュピターショップチャンネル(株)やMobiCom Corporation LLC (以下、モビコム)の子会社化がプラス寄与するほか、新規M&Aの寄与を見込んでいないことなどから会社計画は保守的と予想する。なお、中期目標の達成には、au経済圏拡大に伴うバリューセグメントの高成長が不可欠であるため、達成可否を占う手掛かりとして今後の付加価値ARPA※2の動向に注目する。

※1 Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略。無線通信インフラを他携帯電話事業者から借り受けてサービスを提供する事業者のこと。
※2 Average Revenue Per Accountの略。モバイル契約者(プリペイド/MVNO除く)1人当たりの月間売上高であり、au通信ARPAは1人当たりの通信料収入を、付加価値ARPAは1人当たりの付加価値収入を示す。

株主還元については、持続的な成長への投資を勘案しながら、連結配当性向30%超を維持することを基本方針としてきた。前中期目標最終年度である2016年3月期は、株主の3年間の支援に感謝の意を表して、期末配当を期初予想から5円増配し、年間の1株当たり配当金70円(連結配当性向35.4%)を実施した。同時に自己株式1,000億円(上限)の取得(取得期間:5月13日から9月23日)を決定、実施中。2017年3月期は、新中期目標における連結配当性向35%超に基づき、15期連続増配且つ6期連続2ケタ増配となる年間の1株当たり配当金80円(連結配当性向36.9%)を計画している。

■Check Point
・ 2016年3月期は2000年のKDDI誕生以降、15期連続の営業増益を記録。売上高、営業利益ともに過去最高を更新
・2019年3月期までの中期目標として、連結営業利益年平均成長率(CAGR)7%、au経済圏流通総額2兆円超を目指す
・2017年3月期の配当金は、中期目標の連結配当性向35%超に基づいて、15期連続増配且つ6期連続2ケタ増配となる80円(配当性向36.9%)を計画

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )

《HN》

 提供:フィスコ

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