【特集】窪田朋一郎氏【日米株価急落で秋相場に異変?】(1) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
―迫る日米金融会合、市場はどう織り込む!―
週明け12日の東京株式市場では日経平均株価が一時300円を超える下げとなった。ここまで、為替の円高懸念はくすぶってはいたものの、日銀のETF買いに対する期待感を背景に下値に対しては安心感もあった。ところが、好事魔多し。前週末に米国市場でNYダウが400ドル近い急落をみせたことから、にわかに東京市場もリスクオフの波にさらされる格好となっている。これは一時的な狼狽売りにとどまるのか、それとも波乱相場の入り口か。第一線で活躍する市場関係者の声をまとめた。
●「割れる“総括的検証”難しい9月相場」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
前週末の米国株市場では、ハト派とみられていたボストン連銀のローゼングレン総裁が早期利上げを肯定する発言をしたことが、9月20~21日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを想起させ予想外のダウ急落となった。先週8日の欧州中央銀行(ECB)理事会で量的緩和延長の議論がなかったことも急落の伏線となったと思われる。
実際、緩和に積極的なスタンスをとっていたボストン連銀総裁が、このタイミングでその趣旨の発言をしたことは、利上げに向けた地ならしとも受け取れる。個人的には9月FOMCでFFレートの0.25%引き上げを予想している。
一方、同じ日程で開催される日銀の金融政策決定会合については、「総括的検証」を行っている段階で、足もとは「緩和推進派」「長期金利と超長期金利については元に戻す方向が妥当とする派」「追加緩和否定派」の3派に分かれている状況とみられており、まとまりがつきにくくなっている。したがって、今回は現状維持で通過するのではないかと予想する。
米利上げ実施でも日銀は緩和見送り。この見方が当たった場合、結果として、為替相場は円安傾向とはなってもドル買いが加速することはなく、1ドル=105円程度までの円安にとどまるとみている。株式市場に与えるプラス効果も限定的となり日経平均は上値1万7200円がボックス圏の上限ラインとなりそうだ。日銀のETF買い発動の思惑から下値に対しても底堅さを発揮し、仮にここから一段の下げに見舞われても1万6000円を割り込む可能性は低そうだ。
日銀は金融緩和に後ろ向きではないが、長期金利と超長期金利については元に戻す方向を示唆している現状にあって、株式市場にとってはそれほど有利な環境といえなくなっている部分もある。特にここまでディフェンシブ的側面がクローズアップされていた鉄道や情報通信などのセクターには逆風が意識されそうだ。半面、生保をはじめとする保険セクターは見直し買い余地につながる可能性がある。
ただ、いずれにしても9月相場は全体観としては方向感を見極めるのが難しい展開となりそう。日米の金融政策会合通過後も全体指数との連動性の高い主力株は手掛けにくさが残り、VR・AR関連やフィンテック関連など中小型のテーマ株物色が相対的優位性を発揮しよう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース