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【特集】日本株上昇の“起爆剤”なるか―日銀「総括的検証」の行方 <株探トップ特集>

ドル円 <週足> 「株探」多機能チャートより

―20・21日開催・日銀金融政策決定会合に集中する市場の視線―

 今月20日から21日に開催される日本銀行の金融政策決定会合では、同時に異次元緩和の「総括的な検証」が行われる。黒田日銀のこれまでの政策の検証を行い、今後の政策の方向性が打ち出されることになる。「国債購入量の柔軟化」や「期間の弾力化」などが打ち出されるとの見方があるが、日銀の金融政策に手詰まり感も指摘されるなか、その「総括検証」を市場が評価すれば、円安・株高要因になるとの期待が強まっている。

●異次元緩和に限界論も黒田総裁は否定

 日銀が「総括検証」を実施することは前回7月29日の日銀決定会合時に発表された。それ以降、異次元緩和に対し「どんな検証がなされるのか」に市場の視線は集中している。

 黒田氏が13年3月に日銀総裁に就任後、異次元緩和の推進で一時1ドル=120円台まで大幅な円安が進み日経平均株価も上昇した。しかし、就任時「2年で物価上昇率2%を達成する」という目標には、3年半たったいまも到達していない。また、大規模な国債の買い増しで発行額の3分の1以上を買い占め、「来年半ばには現行の買い入れ規模は続けられなくなる」との見方も出ている。

 それだけに、現状の異次元緩和の見直しは「自然なこと」との声がある。しかしその一方、「量的緩和の縮小(テーパリング)につながるのでは」との観測から、今夏の長期金利の急激な上昇も巻き起こしている。このなか、黒田総裁は講演で総括的検証は「緩和の縮小という方向の議論ではない」と発言し、金融緩和の限界論を否定している。市場からは「基本的にはこれまでの政策を肯定する内容となるだろう」(大手証券)との見方が多い。

●「買い入れ対象拡大」や「期間弾力化」などに思惑

 そんななか発表される今回の「検証」だが、これまでの基本路線をどう踏まえたうえで、今後に向けた姿勢が打ち出されるかが注目されている。例えば、外資系投信のエコノミストは「現行の年80兆円の国債買い入れ増額が柔軟化される可能性はあるのでは」と指摘する。具体的には、買い入れ対象として国債に加えて地方債や財投機関債、資産担保証券(ABS)なども含める。同時に国債買い入れ金額を70兆~90兆円前後にフレキシビリティ(柔軟性)を持たせ、国債の買い入れ金額は縮小も可能とすることで同市場の流動性を回復させる一方、他資産の買い入れを増やすことで量的緩和は維持するというものだ。買い入れ対象の拡大には「米国債など外債」を入れるという案も出ている。

 また、「17年度中までに消費者物価の2%上昇」という目標を「期間は明示しない方針とする」ことを予想する見方もある。さらに、2%の消費者物価上昇率の目標から「金利ターゲットに移行するべき」との意見もある。加えて、黒田総裁は講演でマイナス金利の副作用にも触れたことから、民間銀行に貸し出す「貸出支援基金」の金利をマイナスにする日本版「TLTRO」の導入を予想する声も少なくない。

 ただ、2%目標の時期の明示を外すことなどは、場合によっては追加緩和の規模縮小と受け止められかねないだけに、「市場の期待を持たせつつ方向転換する必要がある」(大手証券)。また、日銀政策委員の見方は分裂しており、「統一見解」ではなく、「意見併記」となる懸念も出ており、この場合、市場はネガティブ視する可能性がある。いずれにせよ、日銀は難しいかじ取りを迫られそうだ。

●合理的な姿勢示されれば株高・円安要因に

 こうした「総括検証」を背景に、9月の日銀決定会合では、買い入れ資産の拡大を含む「国債購入の弾力化」の実施を予想する見方が出ている。また、日本版TLTROを導入したうえでのマイナス金利の一段の深掘りを見込む声もある。

 ただ、9月の日銀決定会合では「総括検証を発表し次回会合への期待をつないだうえで、追加緩和は見送りの可能性もある」(生保系エコノミスト)との見方も少なくない。9月の日銀決定会合が失望に終われば、「為替は再度1ドル=100円割れも」(FXアナリスト)とも予想されているが、「総括検証できちんとした方針が示されていれば円安・株高は見込める」(外資系投信エコノミスト)という。いずれにせよ、今回の日銀による「総括検証」を経て、持続的な追加緩和への市場の期待をつなぎ留め続けることができるかどうかが最大の焦点となる。

●ETF買い入れ見直しなら個別株に波乱も

 また、前回の日銀決定会合ではETFの買い入れ額が6兆円へと拡大された。このETF買い入れに対しては、「日経平均型への比重が大きく、同構成銘柄の価格形成がいびつになっている」(ファンドマネジャー)ことが問題視されている。このため、日銀のETF買い入れは「TOPIX型を主体にするべき」(同)との声が出ている。ETF買い入れは当面、現状の政策が続くと見込まれているものの、もし日銀がTOPIX型ETFの買い入れ比率を増加させた場合、ファーストリテイリング <9983> やアドバンテスト <6857> 、ミツミ電機 <6767> などにはマイナス影響となるが、みずほフィナンシャルグループ <8411> 、りそなホールディングス <8308> など銀行株、NTTドコモ <9437> 、新日鉄住金 <5401> などにはプラスに働くとの見方も出ている。

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