【特集】窪田朋一郎氏【反転上昇なるか? 3月期末相場】(2) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
26日の東京株式市場は、前日の欧米株式市場が総じて大幅上昇したことや外国為替市場での円安・ドル高進行を好感。日経平均株価終値は、前日比48円高の1万6188円と小幅ながら続伸した。来週からはいよいよ3月期末相場に突入する。株式市場は果たして、反転上昇軌道が鮮明になるのか、第一線の専門家に見通しを聞いた。
●「全人代とECB理事会がカギを握る」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
目先は26~27日に中国・上海で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議の結果にマーケットの視線が集まることになるが、その後も3月初旬は重要な経済指標やイベントが目白押しである。株式市場もそれらのスケジュールを横にらみに上下に振られやすい展開が予想される。
G20ではシナリオとして主に3パターンが想定される。まず、各国口先だけの協調で政策実効性が伴わないケース。相対的に可能性は高いと思われるが、その場合、全体相場へのポジティブな影響は見込みにくい。一方、金融政策に偏重せず、財政出動を伴う政策協調路線が打ち出された場合は、相場に大きな浮揚効果が働くことは必然となる。ただし、その公算は小さいとみている。
最悪のシナリオとしては、通貨安競争を回避するとの文言のみが前面に押し出され、他に目ぼしいものがなかった場合だ。日本にとって得るものがないなかで、円高防止の動きを封じられるかたちとなり、円高進行とともに失望売りが誘発される懸念が高まる。
もっとも、3月相場の大勢を決めるのは、むしろG20ではなく、5日に開幕する中国の全国人民代表大会と10日のECB理事会であろう。中国の国会に相当する全人代では財政を伴う経済活性化策が出るかどうかがポイントとなる。また、ECB理事会は大規模な金融緩和政策への期待が強い。この2つの重要スケジュールがあるために当面はショートポジションが積み上がるような状態にはなりにくいといえる。
しかし、実際その要所で株式マーケットにフレンドリーな発表がある可能性は決して高いとはいえない。ここで3月期末から新年度入りに向けた相場の方向性が定まるとみているが、全人代、ECB理事会、いずれも吉と出た場合は、日経平均は1万8000円近辺を目指す展開が予想されるが、いずれも凶と出た場合は下値模索を余儀なくされ、再び1万5000円を割り込む水準に落ち込むことが想定される。個人的には、6対4の割合で下に振られる懸念が大きいとみている。
最後の砦は3月15日の日銀金融政策決定会合だ。ここでマイナス金利幅の拡大による追加緩和を読む向きもある。売り方への牽制にはなるが、仮にこれを実施して果たして相場に本当にプラスといえるのかどうか。銀行株へのダメージは、前回1月29日の決定会合後の波乱展開が既に証明するところであり、銀行の株価が負のパフォーマンスを強いられる劇薬には株式市場全体においてもリスクが伴う。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券シニアマーケットアナリスト。
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース