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【特集】日本企業は覇権を握るか、「スマート衣料」開発で先行 <株探トップ特集>

東洋紡の生体情報計測ウエアの電極・配線となる「COCOMI(心美)」(黄色の部分)

―ITと衣料融合、躍動する日の丸素材―

 「Apple Watch(アップルウオッチ)」やメガネ型のウエアラブル端末の普及が徐々に広がりつつある。米調査会社IDCが調べた2015年の世界ウエアラブル市場調査によると、15年通年で出荷されたウエアラブル端末は前年比2.7倍の7810万台となったもよう。腕時計型だけでなく、シャツやシューズなどバリエーションが増加したという。

 特に最近では、衣料とITを融合させてウエアラブル端末のように利用できるようにした「スマート衣料」と呼ばれる分野への関心が高まっているようだ。

●セーレンは今年中の商品化を目指す

 セーレン <3569> では、今年1月15日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたエレクトロニクス製造・実装技術展「インターネプコンジャパン」に導電性の糸を生地に織り込んだスマート衣料の試作品を出展した。同社では、糸の表面に金属をコーティングして導電性を持たせ、これを編んだ生地を開発。また、衣服に導電性塗料をプリントし、配線や電極として使える技術も開発した。「現在、用途提案などを行っている。また、(通信システムなどを使わない)スマート衣料については、自社で開発し今年中の商品化を目指している」(広報担当)という。

 また、グンゼ <3002> では、NEC <6701> と協力し、着るだけで姿勢や消費カロリー、心拍数などの生体情報を計測でき、肌着として日常的に着用できる衣料型ウエアラブルシステムを開発した。同社のニット(編み)技術で導電性繊維をインナーに加工し、姿勢センサーや配線として活用するというもので、肌着メーカーならではのフィット感や着用感を追求し、「日常的に着用できるようにしたのが特徴」(経営戦略室)だという。取得した各種情報はスマートフォンなどを経由してクラウド上で管理するようになっており、専用アプリなどで、自身の生体情報を分かりやすく確認できるようにするという。

●日本の繊維メーカーが開発で先行

 世界中で現在、「スマート衣料」の開発が進められているが、先行するのは前述のように日本の素材メーカーだ。

 東レ <3402> では、NTTグループと共同で、特殊素材「hitoe(ヒトエ)」を開発した。超極細のポリエステル繊維に導電性樹脂を特殊なコーティング加工技術で施すことで、生体信号を検出できる生地で、既にゴルドウイン <8111> がこれを組み込んだアンダーウエア「C3fit IN-pulse」として商品化。企業向けの健康管理サービスなどへの活用も計画中だという。

 また、東洋紡 <3101> では昨年8月、独自の導電材料を使ったフィルム状の機能性素材「COCOMI(心美)」を開発したと発表した。厚さ約0.3ミリで伸縮性に優れていることから、自然な着心地を実現したのが特徴だ。17年にもスポーツウエアなどで販売を開始するほか、「医療現場などでの採用も狙う」(コーポレートコミュニケーション室)という。

 さらに帝人 <3401> では、京都大学などと共同で胸に巻くだけで精密な心電計測を可能とするウエアラブル電極布を開発。16年度中にも緊急医療の現場で活用できるスマート衣料の開発を目指している。同社ではまた、関西大学と共同で曲げたりねじったりといった体の動きを検知する生地「圧電ファブリック」も開発しており、将来的には、医師の衣服や手袋の動きを検知し、遠隔地の患者をロボットが手術するなどの利用法を見込んでいる。

●スマホの操作ができるジーンズ

 一方、素材メーカー以外で注目されるのは、米グーグルの動きだ。昨年5月、米グーグルと米ジーンズ大手のリーバイ・ストラウスは共同で、スマートフォンなどの操作ができる次世代ジーンズの開発に乗り出すと発表した。リーバイスの日本法人リーバイス <9836> [JQ]によると、「現在、米本社とグーグルで開発している。どういった商品で、いつ発売するかの発表はもう少し時間がかかる」(広報担当)としているが、期待は高まる一方だ。


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