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【特集】「訪日外国人3000万人へ、その施策は?」 観光庁に聞きました! <直撃Q&A>

左から齋藤喬氏、宮下彰氏、谷口和寛氏

 2015年の訪日外国人旅行者数は過去最多の1974万人に達した。16年の2000万人突破は、ほぼ射程圏内にあり、今後は3000万人達成への期待感が高まっている。これに伴い、規制緩和の議論が活発に行われ、宿泊施設の確保やインフラ整備などが急ピッチで進められている。訪日外国人の現状と観光立国実現に向けた施策や戦略、さらに話題の民泊について観光庁観光戦略課の齋藤喬氏、国際観光課の宮下彰氏、観光産業課の谷口和寛氏に聞いた。

●齋藤 喬氏(観光庁観光戦略課)
 宮下 彰氏(観光庁国際観光課)
 谷口和寛氏(観光庁観光産業課)

Q1 訪日外国人客数の推移と増加理由について教えてください。

【齋藤】2015年の訪日外国人旅行者数は12年に比べて2倍以上に増えました。中国、韓国、台湾、香港といったアジアからくる旅行者が全体の4分の3を占める割合となりました。

 経済成長の著しいアジア各国で海外旅行に行く余裕のある中産階級の人々が増えたことに加えて、政策的に推し進めてきたビザ発給要件の緩和や戦略的訪日プロモーションの効果があったと考えています。さらにLCC(ロー・コスト・キャリア)が台頭し、コスト面のハードルが低くなったことなどから旅行客が増加したと思います。

Q2 訪日客の中で国ごとの特徴はありますか?

【齋藤】中国、タイをはじめとするアジア圏からの旅行者の目的は買い物が中心です。特に中国からの旅行者の買い物額は1人当たり16万円と突出して高額となっています。中国からの旅行者数、旅行消費額の増加傾向は緩やかになりつつも継続しており、昨年夏からの中国市場の落ち込みによるインバウンド消費全体への影響が出ているとは考えていませんが、動向は注視していく必要があると思っています。

【宮下】欧米・オーストラリアの方は宿泊や飲食などの「質」にこだわりがあるようです。日本文化を感じられることにお金をかけています。観光庁では日本の地方の魅力を外国人にもっと伝えるべく「広域観光周遊ルート形成促進事業」として、北は北海道、南は九州地方の計7つの観光ルートのPRに努めています。事業を進めている段階ですが、名古屋~高山~金沢を経由する「昇龍道」ルートはグリーンツーリズムやエコツーリズムで楽しめるポイントがあり、欧米人には人気があるようです。東京や大阪以外にも足を運ぶ外国人が増えることで地域の活性化を狙っています。

Q3 次の目標とされる訪日外国人客数3000万人突破に向けた施策を教えてください。

【齋藤】想定を上回る早さで訪日外国人客数2000万人突破が現実的なものとなってきましたが、多くの旅行者を受け入れるに際しての新たな課題も見えてきました。受け入れ体制の整備のため、宿泊施設不足への対応、外国人旅行者の利便性を図るための無料公衆無線LAN環境の整備やSIMカードの利用促進、貸切バスの路上混雑解消、外国人旅行者の安全・安心の確保のための医療提供体制の強化などを同時進行で行っています。オリンピック・パラリンピックというイベントは世界中の多くの方々に日本を知っていただくまたとない機会であるため、プロモーション活動に力を入れて、リピーターの増加を図ります。

 また、観光産業全体の競争力強化、生産性の向上を目指しています。例えば、本年度は小樽商科大学と連携して旅館・ホテルの経営者を対象とした人材育成講座を開きましたが、こうした講座は来年度も拡充する予定となっています。人材の育成は、短期的にも中長期的にも観光産業を活性化させていく上で重要な取り組みと考えています。

Q4 民泊の現状について教えてください。

【谷口】「民泊」については、観光庁では、昨年11月、厚生労働省と共同で、「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」を立ち上げ、研究者や弁護士、宿泊業界や不動産業界の方々の参画のもと、民泊にかかるルールの整備に向けて検討を行っております。現時点では、旅館業法の枠内で、早急に対応できる施策として、簡易宿所の営業許可要件の緩和について検討している他、中期的な検討として、民泊についてどのような法的位置付けが適切かについても検討しているところです。観光庁としては、旅館などの既存宿泊施設の有効活用も含め、旅行者のニーズや、訪日客の増加により急増する宿泊需要に応えられる宿泊環境の整備に向け、引き続き検討していきます。

(聞き手・吉野さくら)


●観光庁
東京都千代田区霞が関2-1-3


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