【特集】“パニック売り”東京株式市場、負の連鎖いつまで? (1) <株探トップ特集>
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
―バリュエーション異常ゾーン突入、待たれる対策―
12日の東京株式市場は売りが加速、日経平均は800円を超える急落で一昨年10月以来、1年4カ月ぶりに1万5000円の大台を割り込んだ。世界的なリスク回避の流れがここにきて一気に加速している。前日の欧米株市場は軒並み大きく値を崩し、外国為替市場では一時1ドル=110円台に入る急激な円高が進行、東京市場も企業実態を度外視したパニック的な売りにさらされている。
この負の連鎖による下げはどこまで続くのか。また、東京市場が立ち直るための条件は果たして何か。悲観ムード一色に染まる相場の今後ついて市場の第一線で活躍する証券関係者3人に意見を求めた。
●「日銀は徹底した緩和姿勢を貫け、戻りに転じれば早い」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
全体は売りが売りを呼ぶ展開で下値が見えにくくなっている。企業のファンダメンタルズ面からの切り口では今の下げは説明がつかない。確かに急激な円高による利益押し下げ効果は株価の先安懸念を募らせるに十分なインパクトがある。しかし、17年3月期は仮に1ドル=110円平均でみても、今期比4~5%程度の減益要因にとどまるとみられ、日経平均の雪崩を打つような下げを肯定化するような材料ではない。
また、PER比較で割安という論議は、既に業績下振れ懸念が浮上している中で意味をなさないという指摘もあるがこれも乱暴な意見であり、「だから問答無用に下値を売り叩く」という話にはならない。足もとの収益変化では変動しにくいPBRでみても、日経225ベースで1.05倍(10日終値現在)と解散価値に急接近しており、今の水準は個人的には明らかにイレギュラーに売り叩かれていると感じている。
とはいえ、自然体で底入れを待つというような悠長な局面でもない。東京市場が立ち直る条件としては、まずグローバル的観点では日欧の足並みを揃えた緩和的政策がひとつの条件。また、米国も利上げペースを遅らせることを明示することにより、世界的な過剰流動性を保つことが重要だ。
国内政策に焦点を絞れば、日銀の追加緩和への徹底した姿勢と行動が求められる。マイナス金利導入に対し、市場は拒絶反応を示した格好となったが、これは銀行株への収益圧迫懸念が元凶となっている。しかし、当座預金残高の10兆円程度に0.1%のマイナス金利を課すことがそれほど大きいダメージにつながるとは考えにくい。一方で、債券価格の急騰で銀行が保有する国債の評価益の拡大は、いかばかりであろうか。相場が悪くなると材料も“悪いとこ取り”となる。今は多分に売り方のポジショントークに乗せられている部分があると思っている。
日銀は必要なら躊躇なく追加緩和を行う準備があると公言している。その緩和についても、例えばETF3兆と言わず10兆円でも買うという徹底した姿勢を打ち出すべきだ。ドラスチックな買い入れ枠の拡大は市場に安心感をもたらす。
また、安倍政権は消費税10%への増税を中止すればそれは大きなプラス材料となる。今年の衆参ダブル選挙の思惑は、消費税見直しが底流している。アベノミクスが水泡に帰すことを避けるためにも消費増税中止のような強いメッセージが必要だと考える。
いずれにしても今は売り一辺倒の相場つきに見えるが、売り方にしても一歩間違えれば非常に怖い相場だ。いったん流れが反転すれば戻りも早い。マイナス金利で味噌をつけたかたちとなっている日銀も、アベノミクス効果消滅の危機にある安倍政権も、ここは胆力を発揮する場面であろうと思う。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。1988年~1998年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。 2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
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