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【特集】窪田朋一郎氏【決算佳境、波乱相場の今後を読む!】 (1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 前週末1月29日に、市場が想定外だった“マイナス金利の導入”という新たな金融緩和策を日銀が発動。これを好感して日経平均株価は2日間で823円の急騰をみせた。ところが、2日からは一転して4日続落で逆に合計1045円もの下落に見舞われた。先行き不透明感の増すなか、16年3月期第3四半期累計の決算発表は既に峠を越えて、その内容が明らかになってきた。そこで、この決算結果を踏まえ、第一線の市場関係者に当面の相場見通しを聞いた。

●「3月末までに1万6000円割れ」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 東京株式市場は非常に厳しい環境にあるといわざるを得ない。まず、ここまでの企業の決算発表を総括すると、中国をはじめとする新興国経済減速の影響が重電や鉄鋼、あるいは電子部品といったセクターに映し出されており、収益実態面からも株価の先高期待が萎んでいる。

 加えて折からの円高が企業業績の先行きに対する重荷となる。日銀のマイナス金利導入決定がいったんは円安誘導を果たしたが、その後は、きびすを返して急速にドル売り円買いが進んだ。基本的に今の流れは円高ではなくドル安である。つまり、FRBによる当初コンセンサスの年4回の利上げが難しくなり、年1回、もしくはゼロ回、極端なところでは利下げの可能性すら指摘する声も出ているくらいで、金利下げ余地の小さい日本の追加緩和よりも、米国の利上げ余地の後退の方がよほど為替に対する影響力は大きい。

 私は当初から主張してきたが、この日銀のマイナス金利導入は銀行業界にとっては“逆噴射政策”以外の何ものでもなく、抜いてはいけない宝刀だった。それでも不動産株などの金利敏感株が買われていた時はまだ良かったが、足もとは不動産株も上昇分を吐き出す格好となっている。当座預金のマクロ加算残高を超える部分のマイナス金利導入により、銀行の貸し出しを促し、不動産のミニバブルを誘発するとの思惑が市場にはあった。ところが今は、マイナス金利は銀行の体力を奪い、むしろ融資の余力を減衰させるという見方に変わりつつある。

 マイナス金利導入は株式市場や日本経済にとって弊害が大きい。三菱東京UFJ銀行が大企業の普通預金への口座維持手数料導入を検討する動きが報じられるなど、脱デフレはおろか、デフレを深化させることにもなりかねない。株式市場が本格的に浮上するためには、この政策の見直しこそが必要であると思われる。

 とはいえ、実際はすぐに撤回というわけにもいかず、日経平均は3月末までに1万6000円台を割り込む公算が大きいとみている。期待が持てるとすれば、それはドル安を背景とした米国株市場の立ち直りで、米国株高が日本株を引き上げる構図だ。しかし「ツレ高」であって上値はおのずと限られそうだ。

(聞き手・中村潤一)


<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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