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【特集】「海外発株安」は怖くない、人材関連“上昇中” <株探トップ特集>

ヒトコムの日足チャート 「株探」多機能チャートより

―バブル期並み有効求人倍率で高まる注目―

 株式市場全般は日銀によるマイナス金利導入というビッグサプライズで生気を取り戻したかに見えたが、依然として足もとは不安定。企業の決算発表にも中国景気減速の影響が映し出され、なかなか強気一辺倒では行きにくい相場環境だ。そのなか、為替動向や海外の経済・株式市場の影響を受けにくい勝ち組好業績株として人材関連株への注目度ががぜん高まっている。乱気流をものともせず株高旋風に乗る有望銘柄群に照準を合わせたい。

●バブル期並みの有効求人倍率で再脚光

 アベノミクスのこれまでの成果については賛否両論あるところだが、労働市場における需要喚起という点では実績をあげている。日銀が英断を下した前週末29日、厚生労働省は2015年12月の有効求人倍率(季節調整値)を発表した。結果は前月比0.02ポイント上昇の1.27倍と実に24年ぶりの高水準となった。24年前といえばバブルの余韻冷めやらぬ1991年(12月)であり、その水準に到達したことは、これも静かなサプライズであったといってよい。

 有効求人倍率とは、求職者1人に対し企業から何件の求人があったかを示すもので、1.27倍という水準は紛れもなく現在の労働市場の需給関係が逼迫している状態を意味している。これは日本企業の業績が拡大基調にあることに加え、少子高齢化で労働人口の減少という構造的な問題も背景にある。また国土強靭化など国策の恩恵がおよぶ建設業界の人手不足や、小売、サービス業界では近年の訪日外国人急増に伴うインバウンド対応の人員ニーズも影響しているとみられる。

 安倍政権は「一億総活躍社会」を掲げ、高齢者や女性の活用を後押ししている。また、慢性的な人材不足に対応し、外国人の活用に前向きに取り組める環境を整備する構えもみせている。しかし、現状は労働時間や労働規制などのハードルも高く、そのシナリオは進捗していない。こうした事情もあって、有効求人倍率は今後もバブル期並みの高値推移が予想されている。

 高水準の求人需要を背景に、人材関連ビジネスを手掛ける企業への追い風が強まっていることはいうまでもない。また、改正労働者派遣法の成立に伴い、派遣社員を同じ職場に3年以上派遣することが禁止される一方、これまで契約期間が有限だった派遣会社と派遣先企業の契約については働き手を代えれば無期限となった。これにより、企業の派遣社員に対する需要は一段と高まるとの見方が市場では強まっている。

●高額案件強みのジェイエイシ、テンプHDはM&Aで業容拡大

 ジェイエイシ <2124> は外資系向け中心に実績を持つ人材サービス関連企業で、特にIT・通信関連企業向けが好調で全体業績を押し上げている。紹介者の平均年収は同業他社の約2倍という高額案件での実績が最大の強み。16年12月期は営業利益段階で前期比15%増の40億5200万円と2ケタ増益が濃厚だ。ここ急速に上値を追い、株式市場での存在感を増している。

 ヒトコム <3654> は量販店での販促支援を行うが、スマートフォンやブロードバンド通信向けが業績を牽引している。M&Aにより旅行業の人材派遣に参入していることもポイントで、訪日外客急増を背景としたインバウンド需要の取り込みも収益に反映させている。16年8月期営業利益は前期比9%増の25億6500万円を見込む。また、同様にジェイコム <2462> も携帯電話販売店向けに急増する求人需要を捉えている。16年5月期営業利益11億3500万円予想は前期比2.4倍の高変化率、10倍程度の低PERも水準訂正妙味を内包する。

 テンプHD <2181> は業界大手の強みをいかんなく発揮、派遣・BPO事業でのM&A戦略を推進し業容拡大が続く。人材派遣だけでなく人材紹介事業も好調に収益を伸ばし、営業利益は前期の26%増益に続き16年3月期、17年3月期と連続2ケタ増益を達成する可能性が高い。

●「バイトル」躍進のディップ、パソナは子会社が貢献

 ディップ <2379> も注目度が高い銘柄だ。同社はネットに特化した求人広告サイトを手掛ける。アルバイト募集の「バイトル」がAKBグループのテレビCM採用が奏功して成長軌道に乗っている。高水準の人材ニーズを底流に、求人広告は無料求人誌からスマートフォンなどモバイル端末を中心とするネット広告に需要シフトの動きが鮮明となっており、同社にとって強い追い風となっている。16年2月期営業利益は前期比25%増の60億400万円を計画しているが増額余地が指摘され、17年2月期はさらに収益の伸びが加速する方向だ。

 パソナG <2168> も押し目は拾ってみたい。人材紹介を中心とするキャリアソリューション事業が収益に貢献、連結子会社で福利厚生代行を手掛けるベネ・ワン <2412> [東証2]の高成長も大きな手掛かり材料となる。16年5月期営業利益は前期比35%増の47億円予想と絶好調だ。

●製造業向けで実力発揮のアウトソシンなど、建設では夢真HD

 製造業の国内生産回帰の流れを味方につけるのはアウトソシン <2427> 。同社は製造請負や研究開発を受託。派遣法改正に合わせて立ち上げたメーカーの期間工を派遣社員として採用するPEO(習熟者派遣組織)が好調で、国内メーカーの人材需要を取り込んでいる。16年12月期は営業利益段階で39~41億円と前期推定比25~30%程度の連続大幅増益を見込む声が市場では強い。

 また、デジタル家電や自動車向けを強みとする技術者派遣ではアルプス技 <4641> の好業績が光る。16年12月期営業利益は、15%程度の増益を計画している15年12月期比で2ケタ増益となる22億円前後と、連続ピーク利益更新が有力視されている。研修など人材育成にも積極的でスキル改善に伴う単価上昇に取り組んでいる。

 国策の後押しや都市再開発の流れを背景に人手不足が慢性化する建設業界向けで需要を取り込む企業といえば、夢真HD <2362> [JQ]だ。同社は建築技術者派遣を手掛け、現場の技術者不足に喘ぐ建設業界のニーズを囲い込んでいる。高い需要に応じた派遣単価の引き上げも利益面で効果が見込まれる。16年9月期営業利益は前期比5割増の26億円前後が市場のコンセンサスだ。


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