【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─ マーケットは何に脅えているのか?
株式評論家 杉村富生
「マーケットは何に脅えているのか?」
●円高・原油安のダブル・ショック!
マーケットは何に脅えているのだろうか。大発会の日経平均株価の582円安が象徴しているように、2016年相場は波乱の幕開けとなっている。世界的に、株安が進行し、投資家はリスク・オフの姿勢が鮮明である。
FRBの利上げ(昨年12月)をきっかけに、新興国の資金が流出、ブラジルなど多くの国々では不況にもかかわらず、通貨防衛のために利上げを余儀なくされている。
その資金はどこに向かっているのか。基本的には利上げのアメリカだろうが、実際は日本(円)である。逃避先として円が選択されている。ヘッジファンドは円売りポジションを解消、円買いに走っている。おそらく、このままでは1ドル=110~113円の円高があろう。
日銀は4月に、追加の金融緩和に踏み切る見通しだが、これでは遅いのではないか。1月の金融政策決定会合での“決断”が求められる。
仮に、日銀が今年前半、何もしなかった場合、円は本当に100円前後の水準まで急伸する可能性がある。アベノミクス、異次元の金融緩和の3年間の“努力”は水泡に帰すだろう。
●テクニカル的には下値に届いているが…
日経平均は1月21日、1万6017円の瞬間安値を付けた。すでに、昨年9月29日のザラバ安値1万6901円を大きく下回っている。完全に底抜けの状態である。テクニカル(N字型の急落)的には昨年6月24日の高値2万0952円~同9月29日の安値までの下落幅(4050円)に並んでおり、ほぼ売られすぎゾーンと判断できる。
PER的には13.6倍と、ボックスゾーンの下限に到達、配当利回り(東証1部の加重平均)は2%台に乗せてきた。経験則的には下げ止まるタイミングだろう。
しかし、今回の下げは従来とは違う。原油価格は新しいステージ(1バレル=10ドル時代)に突入したと思われる。中国リスクは制御不能に陥りつつある。
日経平均が1万6000円の大台を割り込んだ場合、下値のメドはなくなる。最悪、1万5000円近辺を覚悟しておく必要があろう。ただ、とりあえず、踏み止まっているが…。
投資戦術としては嵐のときは動くな!が基本だが、ZMPと自動運転分野で協業のジグソー <3914> [東証M]、フィンテック関連の本命といわれるインフォテリ <3853> [東証M]、ドローンの主役のドーン <2303> [JQ]、材料豊富な日電産 <6594> などを一本釣り的に攻める作戦が有効と考える。
2016年1月21日 記
<プロフィール>
(すぎむら・とみお)1949年生まれ。常に、「個人投資家サイドに立つ」ことをモットーに掲げ、軽妙な語り口と分かりやすい経済・市場分析、鋭い株価分析には定評がある。兜町における有望株発掘の第一人者といわれる。ラジオ番組への出演のほか、株式講演会も好評を得ている。著書は100冊を超える。
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