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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「悲観に片寄ってきた」

株式評論家 富田隆弥

◆波乱治まらぬ新春相場。日経平均株価は21日現在、1万6017円まで下げ、年初から3016円(▲15.8%)下げ、サイコロ2勝10敗、25日線カイ離▲11.6%、総合カイ離▲43.5%、騰落レシオ53%、RCI(25日)-88%などなど、テクニカルは異様な底値水準まできている。それでもなかなか底打ち感が出ないのは、原油や中国、為替、そして欧米株など海外市場に底打ち感が出ないからである。

◆日本株は外国人次第、NYダウ次第であって主体性などない。現代市場はグローバル化しており、未曾有に溢れ出たマネーの流れにより株式市場だけでなく商品や為替などあらゆるマーケットが地球規模で一方方向に動きやすくなっている。そこにはドル紙幣の存在が大きく係る訳だが、アメリカはリーマンショックからまる8年間の超過剰流動性を続け、世界の各市場で「バブル」を起こしていた。そのタイミングで昨年12月利上げに動いた。

◆利上げが確実視されたのは昨年の夏で、株式市場は夏場にチャイナショックを招く。そこで世界に渦巻くバクチマネーが逆流を始めた訳だが、投資家はまだ強気派が大勢を占めており、そこでは「押し目買い」が正解となった。だが、原油市況はピークアウトし、日米株価は夏場の下落で基調に亀裂を入れた。年終盤に向け株価が戻したことで市場の強気ムードは何も変わらなかったが、チャートは夏場の高値を抜けずに「アヤ戻り、頭打ち」となり、注意信号を発していた。そんな戻りの正念場のところでFRBが利上げに動いた。

◆バブルを戒めるために利上げは昨春に実施すべきだった。イエレン議長も早く動きたかったはずだが、各方面から“待った”をかけられ、ずるずる先延ばし。結果的に利上げは「遅きに失し」、各マーケットがピークアウトし、逆流を始めていたマネーの流れを加速させるキッカケを作ってしまった。だから、私は「新春要注意」と申し上げてきた。

◆チャートは日米欧とも夏場に頭を打ち、12月のアヤ戻りから下落二波に転じ、この新春にその二段下げが加速したということ。株も原油も商品も「マネー逆流」という「需給」が引き起こしていることだが、相場下落によりBRICsや中東、南欧など隠れていた懸念要因が再び表面化してくる。いわゆる「悪循環」というものにいま世界が陥っていることを認識しておかなければならないだろう。

◆貪欲マネー、バクチマネーの逆流は、何も今回が初めてのことではない。2007~2008年のサブプライムショックで経験していること。ならば、この後にくるであろうことはリーマンショック、金融危機である。安倍首相は国会答弁で「リーマン級の危機が来ない限り…」と言っていたが、何が起こるか分からないご時世だけに、先行きスタンスは慎重が望まれる。

◆さすがに多くの関係者が悲観に傾いてきた。こうなると、相場は一旦下げ止まるだろう。「節分天井」という言葉もあるので、2月に向け勢いよく上げる場面も想定される。そうなると関係者から「底打ちした」とか「日本は悪くない」「割安だ」など楽観論がまた出てくるに違いない。そうなったら私はまた警戒を強める。日本株は外国人次第、NY次第。そして、相場は需給が最大の要因で、キツネとタヌキの化かし合い。目先のトレンドや過去のチャートを注視しながら、我が道を行く。

(1月21日 記、毎週土曜日9時に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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