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【特集】桂畑 誠治氏 【“最後の砦”米国景気は本当に盤石か?】 <相場観特集>

桂畑 誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
 世界的な株安連鎖が続いている。金融や商品市場でリスクオフの流れが加速するなか、頼みの綱の米国経済も先行き不透明感が意識されている。世界経済の減速が指摘されるなか、最後の砦ともいえる米国経済は果たして大丈夫か。海外の経済分析に定評のある第一生命経済研究所の桂畑 誠治氏に意見を求めた。


「米経済は緩やかに成長、株価も持ち直しへ」

桂畑 誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

●「個人消費、住宅投資の拡大基調は不変」

  FRB(米連邦準備理事会)による政策金利の正常化が開始され、16年も米国が世界経済を支えるとみられていたが、足元で米国の景気に対して懸念が強まっている。企業部門が停滞しても、家計部門が堅調さを維持する形で米景気は緩やかな経済成長を続けてきた。企業部門が一段と調整を強めるなかで、12月の小売売上高が前月比0.1%減と弱い数字になったことで米国経済への懸念が強まり始めた。

 だが、12月の小売売上高は、暖冬による衣料品販売の落ち込みに加えて、ガソリン価格下落の影響を受けており、一部が懸念するほど悪い内容ではない。また、小売の基調を示すコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設資材を除く)も、12月に前月比0.1%減とマイナスに転じたものの、前月に同0.6%増と高い伸びだった反動や暖冬による衣料品販売の減少による一時的な要因の影響が大きい。

 他方、住宅販売は回復基調を維持しており、在庫率の低さから、住宅建設投資の拡大基調も変化がないと判断される。

 家計を取り巻く環境をみると、雇用・所得の拡大基調に変化はみられないほか、借り入れ環境の改善、消費者マインドの安定等が続いており、個人消費・住宅投資が失速するような状況ではない。このような環境は16年中継続するとみられ、企業部門の調整が少なくとも年前半続くなかで、家計部門が支える形で、米経済は緩やかな成長経路を辿ると予想される。ただし、ファンダメンタルズとカイ離した株価の下落が続けば、実体経済を悪化させるリスクがある。

●FRBは無理な利上げはしない

 FRBは、現在リスクマネージメントを強化しており、世界経済の状況が一段と悪化したり、金融市場が混乱を続けたりするような状況で、無理な利上げを行うことはない。インフレの低位安定が続くなかで、米国経済への影響が限定的なものにとどまることを確認しながら、FRBは慎重に金融政策を運営していくだろう。年2、3回の利上げが行われると予想される。

●米株は目先軟調も徐々に持ち直し

 米国株は、不透明感の高まりを背景としたグローバルな株価下落の影響により目先もう一段の下落が予想され、NYダウは1万5340ドルが当面の下値メドだが、これを下抜けると1万4700ドルも。その後、FRBによる慎重な金融政策の確認、予想を上回る4Q業績、米経済指標の改善、日本や中国等による追加の景気刺激策の実施等を背景に下げ止まり、徐々に水準を切り上げると見込まれ、1万8351ドルが目標となる。


<プロフィール> (かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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