【特集】菊川弘之氏 【低迷か反転上昇か、原油相場を先読み!】 (2) <相場観特集>
菊川弘之氏(日本ユニコム・調査部主席アナリスト)
米国市場で原油先物の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物が12年ぶりに1バレル=30ドルを割り込むなど下落基調にある。原油価格の低迷は産油国の財政を圧迫しており、中東のSWF(政府系ファンド)が世界の株式市場などから資金を引き上げるとの懸念が高まっている。そこで、今後も株式市場の動向を大きく左右する原油相場の現状と見通しについてコモディティー専門家の見方を紹介する。
●「安値保ち合い長ければ、上値波乱の種は増加」
菊川弘之氏(日本ユニコム・調査部主席アナリスト)
NY原油価格が12年ぶりの30ドル割れまで下落している。米利上げに伴う新興国リスクや、地政学リスクが背景だ。年初にサウジアラビアとイランとの外交断絶から一時的に買われたものの、主要生産国の供給障害には至らず、北朝鮮の水爆実験・ジャカルタ爆破テロなどが、中国ショックと共に世界的な株価暴落を招き、地政学リスクが金融市場のリスク回避に繋がっている状況だ。一部でOPEC(石油輸出国機構)緊急総会開催期待もあったが、サウジに原油減産を受け入れる気配はないままだ。
現段階でのサウジにとっての優先順位は、シェールオイルなどの代替エネルギー開発を阻止・国際原油市場での主導権を維持することで、イラン対抗策という観点からも、6月OPEC総会前の減産には応じないと思われる。暖冬の中、米原油在庫は過去最高水準で、メキシコ湾岸の新プロジェクト始動など上値を抑える要因は多く、イラン輸出再開の遅れや、新たな生産国リスクがなければ、25~45ドルの安値低迷相場が続きそうだ。
ただし、IMF(国際通貨基金)が指摘するように、サウジは財政赤字問題を抱え、中期的には王制崩壊シナリオも想定され、米国との溝が深まるサウジがIS(イスラム国)よりも原油価格の波乱要因になりそうな点には注意だ。シェール企業への投資削減も始まっており、中国備蓄積み増しも観測されるなか、投機玉のショートが溜まっており、安値圏での保ち合いが長ければ長いほど、将来の上値波乱の種は増えていくことになるだろう。
<プロフィール>(きくかわ・ひろゆき)
NYU留学後、商品投資顧問・証券会社の調査部・ディーリング部長などを経て現職。日本経済新聞、時事通信などにマーケットコメント・解説を寄稿。テレビ・ラジオなど多数メディアに出演中。中国・台湾でも現地取引所主催セミナー講師として講演。
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