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【特集】近藤雅世氏 【低迷か反転上昇か、原油相場を先読み!】 (1) <相場観特集>

近藤雅世氏(コモディティー インテリジェンス・代表取締役社長)

 米国市場で原油先物の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物が12年ぶりに1バレル=30ドルを割り込むなど下落基調にある。原油価格の低迷は産油国の財政を圧迫しており、中東のSWF(政府系ファンド)が世界の株式市場などから資金を引き上げるとの懸念が高まっている。そこで、今後も株式市場の動向を大きく左右する原油相場の現状と見通しについてコモディティー専門家の見方を紹介する。

●「パラダイムは転換、市場は30ドル台に慣れ始めている」

近藤雅世氏(コモディティー インテリジェンス・代表取締役社長)

 NY原油価格は1月12日29.93ドルと、2003年12月以来12年ぶりの安値となっている。2015年の世界の需要量は日量9266万バレルに対し供給は日量9519万バレルで日量プラス253万バレルの供給過剰だったと思われる。世界の石油在庫は2年連続で増加している。

 OPEC(石油輸出国機構)諸国は減産を宣言することなく、イラクやサウジアラビアが増産しており、サウジアラビアはシェアの維持を優先して、米国のシェールオイル企業との我慢比べをしている。昨年新政権となった同国内には権力闘争があり、国家歳入の8割を占める原油収入を減らす政策はとれないでいる。しかし戦略は裏目となり国債を発行しなければ財政赤字を補えない状況となっている。イランのロウハニ大統領は12日「数日中」に経済封鎖は解除になると述べた。米エネルギー情報局(EIA)によれば、イランは年内にプラス30万バレル、2017年にプラス50万バレル増産すると予想している。

 一方、米国のシェールオイル生産は、稼働リグ数が減少しているにもかかわらず生産量は増加しており、生産性が上がって生産コストは下がっている。EIAによれば、米国の生産が減少するのは今年後半からであり、世界の石油在庫が増加から減少に転じるのは2017年第3四半期だという。

 NY原油に対するファンドの空売り残は26万枚に増え、昨年3月および12月に並んで過去最大水準にある。今後こうした空売りが買い閉じられて価格が反発することは十分考えられるが、すでに原油価格のパラダイムは転換しており、市場は30ドル台に慣れ始めているようである。詳細は毎週木曜日発行の株式会社 コモディティー インテリジェンスの週刊原油を御覧いただきたい。

<プロフィール>(こんどう・まさよ)
1972年早稲田大学政経学部卒業後三菱商事入社。主に非鉄金属、貴金属分野に従事。アルミ地金、航空 機材料、建築材料、鉛亜鉛錫地金、貴金属取引を行い、日本で最初の『商品ファンド』の設定に携わり、また、プラチナでは世界最大手のトレーダーだった。南アの鉱山に何度も訪問している。三菱商事退社後商品先物取引会社2社役員、株式会社フィスコ コモディティーを経て、株式会社コモディティー インテリジェンス設立。代表取締役社長就任。日経CNBCテレビ・ラジオNIKKEI出演・ビジネスブレークスルー大学院講師。

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