【通貨】佐藤正和【外国為替】秋の相場観特集_03 /徐々にドル安進行、米国の年内利上げは見送りか
佐藤正和氏
米国の利上げは、年内は見送られる可能性が出てきたとみている。
9月の米雇用統計は非農業部門雇用者数だけでなく賃金や労働参加率などは悪かった。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、2回の雇用統計があるが、その内容次第で、来年3月まで利上げは持ち越されることもあり得る。
足もとでは、利上げの先送り観測でNYダウなどは上昇している。しかし、ドル高の影響もあり米企業の業績に悪化の兆しが出ており、先行き株安に転じる可能性もある。利上げの先送りに加え企業業績悪化で株安となった場合、ドルは買いづらくなるだろう。
日銀の10月の追加緩和はないとみている。黒田日銀総裁は、2%物価目標に強気の姿勢を示している。年内の追加緩和の可能性は残るが、今月はないと思う。
もっとも、米利上げの先送り観測などはドル安要因だが、需給面ではM&Aや外債投資などによる本邦サイドのドル買い需要は強い。
こうしたなか、年末に向けた今後3カ月間のドル円相場のレンジは、1ドル=116~125円を想定している。基調としては、ジリジリとドル安方向を試す可能性がありそうだ。
ユーロも徐々に下値を探る展開が予想される。ユーロのレンジは対ドルでは、1ユーロ=1.06~1.15ドル、対円では1ユーロ=130~139円を想定している。欧州中央銀行(ECB)による追加緩和の可能性があり、ユーロは買いづらい。ユーロ圏の消費者物価の上昇率は鈍いうえにスペインのカタルーニャ州の独立問題なども懸念要因だ。
<プロフィール>
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。通算20年以上、為替の世界に携わっている。
編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ) 【秋の相場観】特集より