【特集】大塚竜太【日本株1】秋の相場観特集_03 /上期決算や政策期待が鍵握る
大塚竜太氏
ひところと比べれば、中国の景気減速に対する過度な不安心理は改善しているように見える。自動車分野での景気刺激策などをはじめ中国政府当局の対策が徐々に浸透してくると思われ、上海株の荒い値動きが収まれば、世界市場も次第に落ち着きを取り戻す方向となるだろう。
一方、世界の牽引役として重責を担う米国経済と株式市場については、9月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数の伸びがコンセンサスを大きく下回ったことで思惑が錯綜している。しかし、失業率は過去最低レベルで個人消費もしっかりしており、決して悪い状態ではないと思われる。一方、年内利上げがあるとしても12月が本線とみられるなか、流動性期待が足もと急速に縮小する懸念にも乏しい。日本の輸出企業にとって外国為替相場への影響など微妙な絡みはあるものの、総合的にみて今回の米雇用統計通過で世界株市場にとってポジティブな潮流が形成されている。VIX指数の動きからも市場心理の落ち着きが見て取れる状況になってきた。
国内では今月下旬から本格化する企業の4~9月期決算発表がカギを握る。急な調整を経た後だけに、個別ベースでサプライズがあれば相応に株価は反応し、全体相場にも浮揚効果を与える。また、安倍首相が掲げる「新3本の矢」について具体的な施策に対する期待、さらに日銀の追加緩和期待が全体相場の支えとなるだろう。今秋から年末にかけて日経平均株価の下値は1万7000円近辺、上値は2万円近辺のレンジを想定している。
銘柄についてはどちらかといえば内需株の方に安定性がある。銀行株が出遅れており狙い目だ。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>などのメガバンクのほか、地方創生のテーマを底流に地銀株にも物色の矛先が向かいそうだ。また、インバウンド関連では三越伊勢丹ホールディングス<3099>、J.フロント リテイリング<3086>など大手百貨店をマークしたい。このほか、都市再開発やリニア中央新幹線などのテーマ材料が豊富な大手ゼネコンも外せない。大成建設<1801>や鹿島<1812>などが要注目となろう。また、輸出セクターでは、TPPが合意に至ったことでトヨタ自動車<7203>など大手自動車株への追い風が強まり、見直し買い余地が膨らみそうだ。
<プロフィール>
1986年岡三証券に入社(株式部)。1988年~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。 2000年から東洋証券入社し現在に至る。
編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ) 【秋の相場観】特集より